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完結●歌詠みと言霊使いのラブ&バトル  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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穢れを祓う

蒼空の目線を追うと、そこは細い路地だった。


小さな飲み屋が何軒も並んでいる。

十三時にも関わらず、もう開いている店もいくつかあった。


その店の一つから、酔っぱらった男性がおぼつかない足取りで出てきた。


「湊、そこの店から出てきた二十代ぐらいの男性、見えるよね?」


「うん。見える」


「じゃあ歌詠みの印に神経を集中させてみて。印に集中しながら、あの男をもう一度見てご覧」


俺は頷き、歌詠みの印に全神経を集中させた。


印が青白く輝いた。


俺は再び、酔っ払いの男を見た。


……!


驚いた。


男の全身を覆うように、黒い靄のようなものがまとわりついていた。


「見えたようだね、湊。あれが、穢れだよ」


「……あんな姿なのか……」


「しかもあれは相当、時を経た穢れだ。あそこまでいくと、後はあの男自身が何か犯罪に手を染めて自滅するか、別の誰かに憑りつくことになる」


「じゃあ、すぐ祓わないと」


「うん。ではまず、あの穢れが他の人に憑りつけないように、人避けの結界を展開する」


蒼空はそう言うと、背筋を伸ばし、歌詠みの印のある左手を地面に平行に持ち上げた。


「人避け結界、展開」


空間がぶるぶると震えた。


「半径五キロ圏内、有機体を回避。レベル3。完成まで五、四、三、二、一」


空間の揺れが収まった。


だが空間転移結界のように空や太陽の色に変化はない。


「半径五キロ圏内にいるすべての有機体が今この空間に一時的に存在しない、という状態を作り出した。空間転移の結界と違い、空間への干渉はないから、見た目の変化はないよ」


蒼空はそう言うと、腕をおろした。


「ではあの穢れを祓おう」


蒼空は歌詠みの印がある左手を握りしめると右手で左手をつかみ、人差し指を立てた。


そしてその人差し指を口元に寄せると


「諸々の禍事まがごと 罪 けがれ 有らむをば はらへ給ひ清め給へと まをすことを 聞こし召せと かしこみ かしこみ もまをす」


蒼空の言葉が終わると、歌詠みの印が若竹色に輝いた。


蒼空が手をほどき、左手を酔っ払いの男の方に向けると、若竹色の光が穢れに向かって放たれた。


蒼空が放った若竹色の光に触れた穢れは、あっという間に消失した。


その瞬間、足元がおぼつかなかった酔っ払いが、しっかりとした足取りとなり、周囲をキョロキョロと見渡した。


「よし。完了だ」


蒼空はそう言うと続けて囁いた。


「人避け結界、解除」


空間がぶるぶると震え、それが収まると蒼空はゆっくり歩き出した。


「手順は分かったかい?」


「うん。呪文は……覚えきれなかったけど、手順は理解した。人避けの結界を展開して、呪文を唱え、手をこう組んで、歌詠みの印が輝いたら、光を穢れに向かって放つ」


「そう。それであっている。呪文……祓詞はらえことばはこれだよ」


蒼空が俺に渡した朝顔の絵がついた一筆箋には、さっき蒼空が口にした祓詞が書かれていた。


「これ、もらってもいいのか?」


「もちろん。その一筆箋が不要になるよう、覚えて欲しいけど」


「分かった」


「よし。公園へ移動して、結界をいくつか教えるよ。紫が今朝渡した結界の本は見た?」


「うん。円陣については全部覚えられたと思う」


「小町に記憶方法を習ったんだね」


「いや、違う。紫が来た時、小町はいなかった。そうしたら紫が、雷神と風神の守りを使った防御結界を展開する方法を教えてくれたんだ」


「紫が?」


「うん。その時に円陣を覚える方法……というか歌詠みの力なんだろう? 図形の模様を目で追うと、それがそのまま記憶されるというか、覚えることができた」


「そうか。それは良かった。もちろん、それは歌詠みの力だよ」


「でも展開できたのはそれだけで、他のは挑戦していない」


「うん。でもその結界を展開できたなら、他の結界は楽勝だろう」


「四神の守りの結界、あれはいつか俺でも展開できるかな」


「それは……かなり難易度が高いだろうね。僕でもまだ展開できない結界だ」


「そうなのか⁉ 紫が展開する様子は見ているし、なんて言っていたかも覚えている。それでも……」


「湊、結界の展開には歌詠みの力が使われていること、理解しているよね? 湊はまだ力をそこまで使っていない。でもいずれ分かるだろう。歌詠みの力を使いすぎると、全身が疲弊し、体を動かせなくなる。四神の守りの結界、これを展開するには相当な力を要する。仮に今、この結界を展開できても、それで力を使い切り何もできない状態になるだろうね」


「そうだったのか……。紫は四神の守りの結界を展開した上で、大将クラスの呪魂と戦っていた。これって……」


「うん。紫は僕の切り札と言っただろう。そんなことできる言霊使いはそうはいないよ」


そこで俺は歓楽街を抜けた先に蒼真の姿を見つけた。


あれ……?

蒼真は今朝、今日から部活が再開になったってスマホにメッセージを送ってきていなかったか?

当然まだ練習している時間なんじゃ……。


蒼真は他校の生徒らしき男子三人と話し、そして何かを受け取っているようだった。


何をしているんだ……?


「湊」


蒼空が細い路地に入っていこうとしていた。


蒼真のことが気になりながらも、俺は蒼空の後を追った。


本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


蒼空と蒼真の名前が似ていること気づきました。

蒼空は歌詠みで、蒼真は湊の同級生です。


それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう

良かったらブックマーク登録をよろしくお願いいたします。


それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう!

明日、また続きをお楽しみください!

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