褒めている? 呆れている?
紫のおかげで、俺はとても強力な防御結界を展開できるようになった。
小町によると、風神・雷神を召喚した防御結界は、言霊使いでさえ、相応の訓練をしないと展開できないという。この結界を俺が展開できたことに、小町はとても驚き、喜び、そして少し残念がった。
「主様が強くなりすぎると、小町が不要になってしまうのではないかと心配です」
「いや、それはないから。俺が展開できる結界って今のところこれ一つだし。小町は必要だよ」
「本当ですか~」
なんだか小町まで姫天皇のように甘えん坊になってきたのは気のせいか⁉
紫の言う通り、少しビシッと言わないといけないのだろうか……。
「というか、主様が防御結界を展開できるようになったのは嬉しいですが、紫と抱き合っていたことには納得できません」
姫天皇はさっきからご機嫌斜めだ。
「だからあれは、俺が無茶して屋根からジャンプして、落下していたのを紫が助けてくれたんだよ」
「だとしても、なんであんな情熱的に抱き合う必要があるんですか‼」
「情熱的って……。そんなわけないだろう。俺はつかまるものがないから必死に紫にしがみついていただけだ」
「むううう」
でも姫天皇はそこで怒るのをやめて俺を見た。
「主様。姫天皇のことも、紫のように抱きしめてくれたら、許してあげます!」
「‼ でしたら私も……」
「おい、二人とも、蒼空に会いに行くよ」
俺の言葉に二人は「むうー」と恨めしそうに俺を見た。
◇
蒼空との待ち合わせ場所は、歓楽街のそばにある駅前広場だった。
今日は天気も良く、俺のように待ち合わせしている人も多かった。
「待たせたかな、湊?」
振り返ると、綺麗な空がプリントされた白いTシャツにジーンズというラフな姿の蒼空が、笑顔で立っていた。
シンプルな装いだが、蒼空は身長もあるし、美形だった。
だからただそこに笑顔で立っているだけで、蒼空の姿をチラチラ見る女性が沢山いた。
「じゃあ行こうか、湊」
蒼空はそう言うと歓楽街に向かって歩き出した。
「蒼空、今日は結界と祓いについて教えてくれるんだよな?」
「そうだよ」
「それで歓楽街に向かうのか?」
「うん。ちゃんと教えるから安心して。それより、昨晩も大変だったね。まさか大将クラスの呪魂がいきなり送り込まれてくるとは思わなかったよ」
「そう、それ。本当に、紫が来てくれて助かったよ。蒼空が送ってくれたのか?」
「いや、違う。いつも通り、巡回に紫は出ていて、呪魂を見つけたんだ。それでその後を追ったら、湊のところだったんだよ」
「そうだったのか」
「大将クラスの呪魂と聞いたから、和泉たちも向かわせようと思った。でも白虎が援護に入り、湊の姫天皇のサポートもあるから大丈夫って言われて。無事倒すことができて良かったよ」
蒼空はそこで俺を見て微笑んだ。
「まさか紫の防御結界に現れた白虎を動かすなんて、湊、君は本当にすごいよ」
「え、そうなのか……? 蒼空もできるんじゃないのか?」
「まあ、やろうと思えばできなくはないけど……。相当力を使うし、僕なら他の方法を使うかな。何より防御のために呼んだ霊獣を攻撃に使うなんて、湊だから思いついたんだろうね」
「褒められているのか、呆れられているのか……」
「呆れつつ、でも褒めているよ」
「……今回の呪魂は誰だったんだ?」
「うん。紫に聞いたら、蘇我 入鹿だった」
「え、マジで⁉ 普通に授業で習った人物だけど」
「だろうね。ここまでの大物を出してくるってよっぽどだよ」
「ホント、信じられない……」
「湊、他人事だね。狙われたのは君なのに」
そうだった。
「でもなんで、俺、そんなに狙われるんだ? 新しい歌詠みってそんなに叩かれるものなのか⁉」
「まあ、若い芽を摘む、という言葉もあるから、その可能性も否定できないけど……」
そこで突然、蒼空が立ち止まった
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