40話
さて、あれからまた随分と時間が立ちました。
結果から言えば、元父親は処刑。元母親は、彼女に遊ばれた男達から賠償金の請求をされて、惨めに働いてるらしい。
元兄も似たようなものだが、こちらは子供もできてしまっているため、元母親よりも借金の額はひどいものだった。
ただ、普通に返すには彼の身に危険がつきものになってしまうため、とある国の女王の何番目かの旦那になることで借金返済と身の安全は守られる形になる。けど、そこでどういう扱いを受けるのかは、こちらの知るところではない。
元姉は、良かったというべきか、結果として修道院送りになった。ただまぁその場所が随分とひどいみたいで、国の最北端。吹雪が当たり前の古い修道院に送られた。逃げたくても逃げられない環境というところだ。
そして、元妹と元弟。この二人だけど……
「あ、お茶がなくなった。リム」
「は、はい!」
「クラウン、窓開けて」
「……わかり、ました」
今は私の専属の使用人になりました。
まぁ酷い仕打ちを受けたけど情けということで、私のそばに置いている。
社交デビューしていたとは言え、二人はまだ幼いし、更生の可能性もあったから、お父様とクルシュ様にお願いをした。
もちろん、ただそばに置くには私も、その周りも危ない。だから、二人には私特製の服従の首輪をつけている。
この首輪には、私の魔力をたっぷりと含まれていて、悪いことをするとそれはもう死にたいと思うレベルの痛みが体に走るわけよ。
悪いことの例を挙げるなら、暴力だったり毒を盛ったり、暴言だったりかな。二人の感情や認識に魔法が反応して発動するから、ある意味、常に首に爆弾抱えてるようなもの。
まぁ情けとして、二人が襲われそうになった時に守る魔法も付与している。
私って優しい姉だよねー。
「にゃんにゃん、二人の教育はどう?」
「はい!順調ですよ。首輪のこともあり、二人とも素直にいうこと聞くんですよね」
教育係は、もちろん私の専属メイドのにゃんにゃん。
掃除から作法。お茶の準備までしっかりと教えている。
リーリウムはともかく、クラウンは物覚えがいいみたいで、教えたことはすぐに覚えるらしい。ま、まだ私に反抗的みたいで、さっきみたいに命令すると不服そうな顔をしながら従ってくれる。
なんていうか……拾ってきたばかりの、警戒心マックスの子猫みたいで構いたくなっちゃうんだよね。
とまぁ、家族のその後はそん感じ。
あの屋敷に勤めていた使用人も、各々罰を受けている。最も重い罪を受けている者が今どうしてるかはしらない。死んじゃってるかもしれないし、生きてるけど早く死にたいと思ってるかもしれない。
私には関係ないけどね。
「んー!!やっぱり外は気持いなぁ」
あの後、にゃんにゃんは二人を連れて他の場所の掃除に向かった。
ウォルフだけが残ったけど、しばらく一人にしてほしいと頼み、剣の稽古に向かわせた。
「あまり一人で出歩くな」
ふわりと、風が通り抜けると同時に後ろから体を包み込まれた。
もうすっかり慣れてしまった温もりと香り。
「大丈夫ですよ、お父様」
「昔は自分に自信がなかったのに、変わったな」
「えぇ、みんなのおかげです」
そのままお父様と一緒に庭園内を歩き回る。時々すれ違う庭師に挨拶をして生き、10分くらい歩いたところで、近くのベンチに腰を下ろした。
「確か今日、あちらに行かれて今後のことお話しされたのですよね。どうですか?」
「あぁ。色々と興味深い話が聞けた。今までよりは、楽しい日々が過ごせそうだ」
「それは良かったです」
「お前の元叔父ともあった。確かに変わった人間だが、知識は本物だ」
「そうですか。領土の運営は難しいかもですが、その分息子さんに期待ですね」
穏やかな日々。何も不安のない毎日というのは幸せだ。
前世では、常に毎日呼び出されて暴言を吐かれて、いじめられて。結果的に殺されてと平穏なんてなかった。
こっちにきてからも、早々にとんでも体験して、家族がクソ野郎で私の人生最悪だなーって思ったけど……もしかしたら私の不幸はこの瞬間のためにあったのかもしれない。
「自惚れすぎかな……」
「どうかしたか?」
「いえ、なんでもないです。ただ、幸せだなーって」
お父様の肩に頭を乗せて、私はぼんやりと庭園を見つめる。
「お父様」
「なんだ」
「……娘にしてくれてありがとうございます」
もう嫌になるほどに口にした言葉。だというのに、お父様は嫌な顔一つせずにいつも繰り返し、かえしてくれる。
「こちらこそありがとう」




