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《真実》ーシュタルク視点ー

ヘルツが元妹と弟と部屋を出た後に、私たちは彼女が提案した内容を人間の王子に伝えた。

私たちや王子側からしたら当然メリットではある。だが、予想通り怒鳴り散らす人物はいた。


「ふざけるな!私ではなく、弟が当主だと!?あの狂人が!正気か!」


自分の地位が危ういと思うのは当然のことだ。怒鳴るのも、焦りの表れだ。だが、どう転んでもお前がいまの地位に居続けることはできない。家族全員な。


「別に問題ないだろう。500年前に私とお前の祖先が交わした契約だ。お前には何一つ関係ない。大体、こんな契約あってない様な者だ。私も、お前も、契約を何一つ守っていないのだからな」


こいつの前の男。ヘルツの元祖父だった男は、まだそれなりに契約を守って、物資や人間側で生まれた技術などを教えてはくれた。だが、我らよりも短命な種族だ。あっという間に老いてしまい、また契約は守られなくなった。


「それでも、まだ私たちは契約を守ってはいると思うがな。気まぐれとはいえ、魔獣を殺しているわけだからな」

「それは……」

「公爵、それはどういうことですか?」


向かい側の男。人間の王子が鋭い視線を向ける。ほぉ、そんな顔もできるのだな。

話を聞けば、公爵は国に嘘の報告を行なっている様だ。龍族としっかりと交流し、国からの金や物資を渡してると。

さて、そんな物を受け取った覚えはないな。

冷や汗を各公爵。だが、そんなことで焦ってもらっては困る。そんな横領という馬鹿みたいな理由だけで、お前の罪が裁かれることなど許さない。


「話しているところ申し訳ないが、公爵。一つお尋ねしたい」

「な、なんだ……なんでしょうか」

「貴殿には確か、もう一人娘がいたはずだが」


空気が変わる。まぁ、この場で口にしたくない話題ではあるな。なんせ、ここには王子がいるんだから。


「彼女は、亡くなりました」


公爵からの返答を待っていたが、答えたのは向かい側にいる人間の王子だった。

あぁ……確か、ヘルツが憑依した体に恋心を抱いていたのだったな。


「亡くなった……私はそのような話を聞いてはいないが?」

「こ、こちら側の問題でしたので……」


口ごもるように公爵はそう発言した。これ以上は下手に発言すればボロが出る。彼にとっては一刻も早くこの話を切り上げたいだろう。横領だけなら、まだ命の保証もある。

でも、私はそれを許さない。確か、人間の国では嘘の死の報告は重罪だったかな。


「ほぉ……確か、その娘の死は私がその娘に会いたいと手紙を出して、こちらにくる道中に魔獣に襲われて死んだと聞いたが?」

「なっ!」


なぜ私がそのことを知っているのかと、思っているようだな。

実際に本人から聞いたのだから、知っていて当然だ。


「父上、よろしいのですか?」

「構わん。ヘルツにはあとあと誤れば良い」


寧ろ、彼女は喜びそうだけどな。あぁでも、真実を知って絶望するこいつらの顔を見たかったと怒るかもしれないな。


「おかしいな。私はそんな手紙を送った覚えがない」

「……どういうことですか?」


反応したのは予想通り、王子だった。

驚きと、そして怒りに満ちた顔をしている。まぁ好きだった女の死が、聞いていたのと違っていたかもしれないと思えば、そういう反応をするだろう。


「そもそも公爵の子供に興味などない。だというのに、特定の娘をわざわざ呼びつけるはずがないだろ?」

「う、嘘をつかないでいただきたい!む、娘は確かに森の中に」

「あぁ、居たとも。まさに、魔獣に襲われる寸前だった」


私の発言に、また空気が変わった。

あぁ、面白いな。きっと、頭の中で、必死に答えを作り出そうとしている。いや、私が何を言いたいのかを必死に考えているのか。いいな。


「公爵、たとえ話をしよう。もし、貴殿の娘が生きて居たらどうする?」

「な、なにをおっしゃられて……」

「あぁすまない。例え話にするのは良くなかったな。事実なのだから、例えるのは良くない」

「……まさか……そんなありえない!!」


一番最初に察したのは、意外にも公爵の娘だった。

動揺する娘に、夫人が心配そうに側に行くが彼女はブツブツ己で気づいた事実を否定し続けた。

あただまぁ同一も鈍いな。あんな女でも気づいたというのに。


「どうして私が、わざわざ後継者であるフィエルテ以外に子を連れてきたと思う?」

「どうして……それは我々に紹介するためでは?」

「確かに紹介するために連れてきた。でも公爵はおかしいとは思わなかったのか?」


ずっと遅沙汰がなかった龍族が突然訪ねてくる。しかも、後継者だけならまだしも、合わせたこともない娘を連れて行くのだ。

それを嫁がせるためなんてどれだけ愚かな生き物だろうか。


「公爵、もう一度きく。殺したはずの娘が生きていたらどうする」

「アンジュ、なのですか……?」


驚き、慌てる公爵だが、おそらく私が発言した「殺したはずの娘」に反応したのだろう。

しかも、王子での目の前でだ。当然ただでは済まない。

だが、そんな王子はまるでそんなことどうでもいいという風に、俯いていた顔を上げ、私を見る。


「……彼女が、そうなのですか?」

「クルシュ様?」

「あなたの娘、ヘルツ・グナーデが……半年前のアンジュ・シュタッバーテンなのですか!?」


慌てる王子。よっぽど好いていた様だな。

私が肯定すれば、当たり前だが全員が理解した。

死んだと思っていたアンジュ・シュタッバーテンが実は生きていて、そして先ほどあった彼女がそうなのだと。

私は教えてやった。あの日の、彼女が私の娘になるまでの経緯を。そして、この馬鹿家族が呪いだと口にしたものがどういうものなのかを。


「契約を白紙にしたいと思ったのは、もちろん私が契約を結んだのが初代当主だからというのはある。だが、私の可愛い娘にむごたらしい仕打ちをしたお前たちとこれ以上契約を結びたくないというのが、今の一番の理由だ」


沸騰しそうなほどの怒り。自分の中から魔力が溢れ出ているのがわかる。

フィエルテ以外の人間たちは息苦しそうにしていて、いっその事そのまま死なないかと思ったが、隣にいる息子に止められてしまった。


「もうじき娘が戻る。その時改めて話をしよう」


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