37話
そして、今に戻ります。
国にとってはメリットでしかない提案だ。
魔獣は未知の存在だ。将来的なことを考えれば、研究は必要不可欠。
ただ、当然納得しない人物。というか一族はいるわけだ。
「あの狂人を当主だと……?ふざけるな!」
唯一デメリットを受けるのは現シュタッバーテン一族。そして、一応使用人も一掃する予定なので、現在勤めている使用人たち。
「そんなに怒らなくてもいいではないですか。クルシュ様が許可を出さなければいいだけです。しかしまぁ、たとえ許可を出さなくても貴方の極刑は変わりませんよ」
ニヤリと、不敵な笑みを浮かべてやれば、彼の顔が歪む。
私が生きている時点で、この一族は詰んでいる。
「まぁ、この一族……いや、使用人も含めてこの屋敷の人間は腐ってますから。早めの駆除をお勧めしますよ」
「駆除だと!無礼にもほどがあるぞ!」
「そうよ!だいたい貴女が本当にアンジュかもわからないじゃない!どうせ嘘を言ってるんでしょ!」
夫婦揃ってまぁ威勢がいいことで。娘息子も何か言いたそうだけど、まぁ腐敗部分はしっかりと自覚させる必要があるよね。
「公爵。貴方は国からの支援金を横領してますね。執務室の入って左側の、右から二番目の棚、三段目の左から5番目の本。それを押すと隠し通路が開いて、その先にある部屋にたくさんのお金を隠してますね」
「な、なぜそれを……」
「夫人。貴方は夫や子供がいながら、いまだにたくさんの男性と関係を持っていらっしゃいますね。まだまだ現役ってことですかね」
青ざめる元両親。兄姉妹弟についても口にする。
兄の女遊び。それによる複数人の子供。
姉の嫉妬による令嬢いじめ。
妹の同性愛と男嫌い。
弟の女性趣味。
弟に関しては、王子の護衛騎士二人がその非公開の舞踏会の常連だったようで、随分と驚かれていた。息抜きで行かれていたみたいだけど、そこは申し訳ないな。
そして、私……アンジュに行ってきた仕打ちの数々。家族も使用人も、全員が自分に何を行ってきたのか。そして、最終的に自分がどうなったか。全てを口にする。
「簡単には死なせません。苦しんで苦しんでもう死にたいと思うほどに苦しめて差し上げます」
「ふざけたことを……それが、家族に行うことか!」
「家族?寝言は寝てから言ってください。私の家族は、貴方たちじゃない」
「この!」
怒り狂った元父親が飛びかかってくる。クルシュ様と護衛騎士が止めに入ろうとするが、私も、お父様も兄様も動こうとしなかった。
彼が私に触れようとした瞬間誰かが口にする。
——— サワラナイデ
それと同時にバチりと彼の手が弾かれ、その勢いのまま地面に尻餅をついた。
何が起きたのかわからず、唖然としながら私のことを見上げてきた。
「何を驚かれているのですか?あなた方が散々呪いだと忌み嫌った力ですよ」
この半年で、祝福も寵愛の力もコントロールできるようになった。
私の意思で、伸びてくる手を受け入れることも拒むこともできるようになった。
「無知は罪です。私よりも知る環境があったにも関わらず、娘のためにと調べなかった貴方の責任です」
にっこりと笑みを浮かべ、私はほぼ置いてけぼりになっているクルシュ様に視線を向ける。
「では、改めてお聞きします。ご提案を受けていただけますか?」
「……あぁ。龍族側からの提案を、私の名の下に受け入れよう」




