34話
シュタッバーテン家次男、クラウン・シュタッバーテン。
幼い顔立ちではあるが、あまり表情を出さないそのクールさに年上のお姉様方にとても人気だった。
沢山の女性に甘い言葉を囁く兄に反し、まるで美しい絵画や美術品のように立っているだけで胸をときめかせる女性が多くいた。
だけど、そんな美しい美男子にとんでもない秘密があることを姉であるアンジュ以外は知らなかった。
彼は時々、家族にも使用人にもバレないように屋敷を抜け出す。
長い金髪のウィッグをかぶり、姉たちが着ているドレスや装飾品を身にま纏い、非公式の舞踏会に参加している。
そう、彼には女装癖があった。
「あぁマリア嬢。今夜もいらっしゃったのですね」
「相変わらずお美しい」
非公式の舞踏会で彼は有名だった。声を出せば男だとバレてしまうため、決して声を出さず、表情で相手に感情を示す。笑みひとつで男たちはころっと騙され、彼の周りに群がる。
沢山の男が自分に詰め寄るとき、すぐに手にした扇で口元を隠す。ニヤつく口元を隠すためだ。
ドレスや装飾品が好きなのかといえば、彼はNOと答える。彼が好きなのは、着飾った自分自身。
彼が女装をするのは優越感に浸るためだ。
きっかけは幼い頃だった。
双子の姉であるリーリウムと服の交換をする遊びが流行っていた頃、屋敷で開かれたお茶会に入れ替わった状態で参加し、そこに参加していた男児が自分を女だと思って求愛してきたことだった。
他にも女性はいたのに、男だと気が付かずに告白してきたことにちょっとだけ優越感を感じた。それから、何度も隠れて女装をしているうちに自分が女よりも魅力的であることに気づき、非公式の舞踏会に出向くようになった。
自分が女だと思って媚びへつらう男に。男を取られて悔しがる女に。ただただ彼は優越感と、激しい快感に襲われた。
今では、レヴィやリーリウム、身だしなみを整えたアンジュよりも、いや……この世で自分が一番美しいと思うほどに自分に陶酔しきっていた。
だけど、クラウンは今日絶句した。
まさに人ならざる存在。自分以上に美しい存在が目の前に現れた。
青みがかった白髪に、赤い瞳。美しいドレスや装飾品に身を包んだ、龍族の女性。かつて散々兄姉と一緒に殺す勢いでいじめた元姉の姿に。




