31話
どうしようどうしようどうしようどうしよう。
笑いをこらえるのに必死だ。
だって今、目の前にいる元家族たちの驚きようったらありゃしない。
そうよね。今の私の見た目最高にいいものね。つい見てしまうよね。でも、それにしてもあからさますぎでわ?
「あの、いかがなさいましたか?」
「あ、あぁいや。申し訳ない。あまりにも美しくてつい。いやはや、お父様によく似ていらっしゃる」
「ありがとうございます。お父様と同じ見た目なので、少し不安だったのです」
白髪は虹色順位の中でも赤以上だ。魔力量を考えれば、相手が自分よりも上だとわかる。
まぁそれを抜きにしても、見ないわけにはいかないだろう。
両親は当たり前だけど、元兄の猫かぶりの笑顔。内心絶対下品なことを考えている。そしてその隣の姉の表情ときたら必死に抑えてはいるけどすごく嫉妬してる。そうよ。お父様や兄様に惚けてる場合ではないわよ。あなたの目の前にいるのがどういう相手かしっかりわからないと。
妹と弟も、私のことに見とれている。まぁ、それぞれ理由は違うだろうけど。
「では公爵、案内の方をお願いしようか。王子はもうきているのだろう?」
「あ、はい。すぐにご案内いたします」
というか今更だけど、王子置いて家族全員でこっちにきたの?
それって大丈夫なの?
王子がそうするように言ったのならいいけど、違ってたら極刑ものでは?
「そういえば、ご令嬢にはお相手が?」
顔色を伺うように、シュタッバーテン公爵はそう尋ねて来た。
こういう時に尋ねることだろうか。しかも、本人がいるというのに。
「いや、まだそのような相手はいない。なぜだ」
「いえ、これだけお美しければ、多くの男性が結婚相手にとお誘いするでしょうから」
この男のことだ。どうせ息子の結婚相手にとか考えてるんだろう。お父様だってばかじゃない。そんなことはわかっているだろう。
「そうだな。だが、娘の結婚相手はなるべく同じ種族と考えている」
「そ、それはなぜですか!」
「私たちは長命だ。短命の種族と結婚すればあっという間に別れることになるからな」
それ以前に、私は人間と結婚するつもりはない。たとえ王子が、この姿の私に求婚して来たとしてもだ。
あーあ、悔しそうな顔。まぁ、お父様の言葉はもっともだからな。反論して機嫌を損ねるのもあれだろうし、諦めてくれるといいな。
「お待たせして申し訳ありません、クルシュ様。龍族の皆様をお連れいたしました」
通されたのは大広間。まぁこの屋敷の家族に国の王子。そして龍族が集まるとなると当然か。
「お初にお目にかかります。龍族の王である、シュタルク・グナーデさま。私は、この国の第一王子であるクルシュ・ケニスアと申します。
久しぶりに聞く曇りのない綺麗な声。
この半年間、以前よりも声に強みを感じる。継承式を終え、次期後継者としての責任感を改めて自身のみに抱いたのだろう。
代表の挨拶を終えた後、兄様が紹介され、次に私が紹介された。
「ヘルツ・グナーデと申します。お会いできて光栄です」
私が挨拶を知れば、護衛騎士も含め、王子が私を見つめる。惚れたか?アンジュのことが好きだったくせに、ほかの女性に目移りするなんて、そこはちょっと残念だ。
「話を進める前に、一つシュタッバーテン公爵に頼みがある」
「な、なんでしょうか」
「娘は国から出たことがない。可能であれば、屋敷内を公爵の子……そちらに案内させていただきたい」
お父様が視線を向ける方には、元妹と弟であるリーリウムとクラウンの姿がある。
指定されたことに二人は驚いており、二人はすぐさま公爵の方に視線を向ける。
まぁ結果はわかっているけど。
「構いません。リーリウム、クラウン。失礼がないようにな」
「は、はい!」
「わかりました」
「ヘルツ、一応にゃんにゃんとウォルフを側につかせる。何かあればいいなさい」
「はい、お父様」
私はそのまま足を二人の方に進め、笑みを浮かべる。
「よろしくお願いします」
二人の反応は、それぞれ異なった。
妹、リーリウムは緊張はしているみたいだけどほんのり頬を赤く染めて恥じらっている。
弟、クラウンは紳士的に、貴族の令息らしい対応をした。
「それでは皆様、しばし席を外させていただきます」
さて、後は任せましたよ、お父様、兄様。
ニッコリと笑みを浮かべ、私は応接室を後にした。




