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30話

「お似合いですよお嬢様」


ついにこの日が来た。

今日、私はあの忌まわしいシュタッバーテン家にお父様と兄様と共に行く。

正直、顔を見た瞬間に殺さないか不安になる。でも、それ以上に私のことを考えてお父様や兄様。事情を知っている護衛騎士たちが手を出さないかも心配だ。


「こういう服は、本当になれないな」


まるで舞踏会に行くかのような綺麗なドレス。

赤と白を基調として、他の装飾品や小物もそれに合わせている。


「なんて神秘的なんでしょうか……まさに女神です」

「大げさよにゃんにゃん。見た目の良さはお父様のおかげだもの」

「そんなことありません。たとえ見た目が良くても、作法が悪ければ下品に見えます。しかし、お嬢様の作法は完璧。どんな殿方も目を奪われます」


本当に、呆れるほどに素直だ。祝福の力がなくても、自分に好意を向けてくれているのがわかる。


「ヘルツ様。お二人はすでにお待ちです」

「……えぇ、すぐに行きます」


屋敷へは森を抜ければすぐ。距離は1日としてかからない。

今頃、王子はすでに到着しているだろう。そこも、レイモンドにリークしてもらっている。

再開した時、彼はどんな反応するだろうか。

色々と片付いたら、彼には彼にふさわしい場所で働いてほしい。


「お待たせしてすみません、お二人とも」


今回使用する馬車の前、すでに護衛騎士とお父様、兄様の姿がある。

うん、二人ともすごく素敵。崇めたくなるほどの神々しさ。顔の良さは相変わらずだし、下手したら元姉が惚けてしまうだろう。

さて、クルシュ様とこの二人。あの姉は誰を選ぶのやら。


「よく似合っている」

「お父様のおかげです。この容姿に恵まれたのは」

「まったくお前は、見た目に関してだけはいつも父上のおかげだというな。もう少し自信を持ったらどうだ」

「フィル兄様、とてもお似合いですよ。これなら、きっといいお相手が見つかるかと」

「話をそらすな」


こんなやりとりができるほどに、兄様との仲もよくなった。

もう少しやりとりをしたいところだけど、そろそろ時間だ。

私たちは馬車に乗り込み、魔物の森を通り、シュタッバーテン家へと向かう。

魔物は襲ってこなかった。当然だ、護衛騎士も含めて全員が実力者。襲えば自分が殺されると、知能のない魔物でも本能でわかってしまう。

邪魔もなく、私たちは何事もなく無事にシュタッバーテン家にたどり着いた。


「ようこそおいでになりました、シュタルク・グナーデ様」


馬車の外。あの男の声が聞こえる。

憑依してから、あの男とはほとんど会話してない。でも、残り続けているアンジュの記憶の中のあの男は、憎まずにはいられないほどの相手だ。

家族全員で出迎えているのか、元母親、元兄の声。そして、胸焼けしそうなほどの甘い声を出す元姉。予想通り惚けたみたいだ。見た目と権力さえ良ければ誰でもいいのか。


「手紙にも書いていた通り、今日は娘も連れてきている。ヘルツ」

「……はい」


手を伸ばしながら、お父様が視線で言われている。「大丈夫か」と。最初から最後まで、やっぱり心配されているみたいだ。声だけでもあの家族に対しての憎悪は激しいものだ。でも、考えてみれば相手は下等な人間。私は一般的に神聖種と呼ばれている龍族だ。見下す要素はあっても、恐る要素はない。

お父様に優しい笑みを浮かべながらその手を取り、私は馬車から降りて挨拶をする。


「お初にお目にかかります。シュタッバーテン家の皆様。シュタルク・グナーデの娘、ヘルツ・グナーデと申します」


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