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27話

「は?なんだそれは」


話の流れで、私はフィエルテ様にことの経緯というか、叛龍になったきっかけを話した。

元は別世界の住人で、アンジュ・シュタッバーテンに憑依し、そこでのアンジュがどんな扱いを受けていて、憑依してから何があったのか。そして、どうやってシュタルク様とで出会ったのか。

ラフィー姉様と同じく、彼も私のような存在をみたことが、というよりも次期後継者として紹介されたことがあったらしく、すんなりと受け入れてくださった。ただ、シュタッバーテン家の人間について随分お怒りになっていた。


「なんで人間だ!実の娘に対して……しかも、祝福と寵愛を呪いだと!」


書物で、龍族が祝福と寵愛を神聖視している事を知った。まぁここの説明についてはまた後日話すとする。

とりあえず、彼が話を聞いて怒ってくれた事はとても嬉しかった。まぁ家族を大事にしている彼からしたらあり得ない行動をしてるからな、あの家族は。


「怒ってくださってありがとうございます」

「……冷静だな。恨んでないのか?」

「……ふふっ。そんな事ありませんよ。ただ、何事も準備というのは大事でしょ?」


頭の中で想像する。馬鹿騒ぎしているあの家の人間たちが、途端に地獄に落ちる姿が。

そう、それは前世の時にいつも頭の中で想像する、あまり抱いてはいけない感情。


「タダで済ますつもりはありません。あそこの人間には、死ぬよりも苦しいことを味合わせるつもりです」


私をいじめ、殺そうとした騎士もメイドも家族も、全員許すつもりはない。

アンジュが苦しんだ分、彼ら彼女らには苦しんでもらわないと。昔から、やられっぱなしは嫌いなの。痛みを苦しみを与えられた分、倍でお返ししないと。


「そのためには知識と力をつけないと。って、あ……そろそろラフィー姉様との約束の時間ですね」

「約束?」

「週に何度か午前中に勉強を、午後に魔法の練習を見てもらう約束をしたんです。今日は昼食後にお姉様が用事があるらしく、今はそれが終わるのを待ってる状態です」


姉様は、まさかフィエルテ様の部屋に私がいるとは思ってもないだろうから、部屋か書庫に移動した方がいいかもしれない。


「毎日、ではないのだな」

「え?」

「ラフィーとの、勉強や訓練だ」

「あ、はい」


元々勉強と訓練を行う理由は、姉様の原祖返りの本能を抑制するためのもの。私は姉様に知識と力を学ぶ代わりに、その対価として食事を準備するといった感じ。つまり、お互いの為に行なっていることだった。


「そうか……」


何かを考えるそぶりを見せるフィエルテ様に私は首を傾げた。

すると、彼は「ならば」と言って私に視線を向ける。


「私も時間がある時にお前の勉強や魔法を見てやろう!」

「え!」

「まぁ次期後継者として色々とやる事はあるが、私としても知識や魔法の復習になる」


どこか誇らしげな表情を浮かべるフィエルテ様にポカンとする。

とてもありがたい事だが、まさかこんなことを言われるとは思いもしなかった。


「迷惑だったか?」

「いえ!そんな事はありません。とても嬉しいです」


嬉しいのだが、彼にメリットはない。確かに復習にはなるかもしれないが、私の方がもらうものが大きすぎる気がする。

だけど、そんなことを言えば、今のフィエルテ様は「気にするな!」と仰られるだろう。そう思うと、断ることなんてできなかった。


「うむ。では夕食の時間にでも父上に許可をいただこう」

「それ以前に、フィエルテ様がそう言われるのに驚かれるとは思います」


あはは、と少し苦笑いを浮かべる。まさか義理の姉と兄に勉強と訓練に付き合ってもらえるとは思いもしなかった。

これは、気合を入れないとだなと、少し重く感じた。


「それと……」


先ほどまでの表情から一変し、どこかそわそわしたような表情を浮かべるフィエルテ様。何かを言いたそうにしていた。


「えっと、なんだ……フィエルテ様は他人行儀だ……できれば、その……私のことを兄と、呼んでほしい……」


あぁなるほど。これはしっかり読み取れなくて申し訳ない。うむ、あんな一面を見てしまっておきながら「そんな、まだ言えません!」なんて事は言えなかった。

フィエルテ様の愛称は……確か、フィルだったかな?アンがフィルにー様って呼んでた気がする。


「では、フィル兄様と呼ばせていただきます」


どこか恥ずかしそうに、でも嬉しそうな表情をしながら「あぁ」と短く返事をされた。

その後は、兄様に部屋まで送っていただき、それからしばらくして姉様が迎えに来てくださり、魔法の訓練を行った。


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