《報告》-王子-
それはあまりにも当然で、あまりにも衝撃的すぎる報告だった。
「今、なんと……」
「シュタッバーテン家令嬢、アンジュ・シュタッバーテン様がお亡くなられたそうです」
近々行われる継承式により、月一のシュタッバーテン家への報告訪問が遅れていた。また、彼女に会えると思っていたのに、アンジュが……死んだ?
「どういうことだ!」
「……シュタッバーテン家当主の話によると、龍族側からアンジュ様を会わせるように連絡が来たようで、護衛を数名つけて向かったそうです」
「龍族……つまり魔物の森を通ったということだな。なぜアンジュが死んだことがわかった」
「命からがら森から逃げでた兵士の話しでは、突然多くのワードウルフに襲われたようで、助け出そうにもアンジュ様は森の崖に落ちてしまって助けられなかったと」
その後、屋敷の護衛と再び森に入ったが、アンジュが落ちた崖には死体がなかったらしい。
魔物の森での出来事だ。食い荒らされ、死体が残っていなくても当然だ。
この国の法律に、貴族は必ず死の報告をしないといけない決まりだった。同時に、どんな無残な姿でも死体があれば必ず持ってこないといけない。死の偽造は重罪。もっともな理由がない限りは、これを守る必要がある。だが、今回は例外だ。普通の森とは違う。人を襲う魔物の森。そんなところで死んでしまえば、死んでもなお魔物に食い荒らされて死体だって残らない……
なんてことだ……もう、アンジュの姿を目にすることが、できない……。
「クルシュ様……」
「……報告ご苦労だった、下がれ」
「……はい」
龍族……森の外に魔物を出さない代わりに、人間側の作った物資や食料を求めた、神の使者と呼ばれる存在。その者たちが、なぜ今更アンジュを呼ぶ必要があるのだろうか……調べるか……しかし、もし下手に動いて龍族との関係が壊れてしまえば、魔物がこちらへとやって来てしまう恐れがある。
彼らがいるから、我々は平穏におくれている。
「しばらくは、様子を見る必要があるな」
敵に回せば厄介だ……人と龍では差がありすぎる。でも……
「アンジュ」
一目見た瞬間、ひどく心を奪われた。気弱で、臆病だけど、とても心優しくて愛しい子……。
式典が終わった後、再び屋敷を訪れる際に、君に伝えたかった……。
「私は君を、妃に迎えたかった……」




