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13話

魔物の森は人の治める国と神の使者と呼ばれる龍族が治める国の間に存在する大きな森。かつて、この地を魔王が治めていた頃に、彼が動物や植物。あらゆるモノに自身の力を与えたことで生まれたのが魔物だった。

魔王が存在したのは、もう随分と昔で、勇者によって討伐された。

魔王が死んでも、魔物が消滅することはなく、その時の人々は、この森に追いやり、しばらく出られないように封印するので精一杯だった。

だけどそんな力が永遠に続くはずもなく、約500年前に封印が解けて、また魔物が人々を襲おうとした。

そして、魔物を森から出さないようにしたのが龍族で、この森の外、現シュタッバーテン家がおさめる領土で魔物に襲われていたところを助けられたのが初代シュタッバーテン家当主。


この話は、かつてアンジュがレイモンドから教わった内容。

その後、当時の二人が手を取合い、龍族は魔物から人々を守る役割、シュタッバーテン家は龍族と人間の間に立つ仲介役になったということ。

当時の当主がしっかりとやれていたかは知らないけど、今でもその役割が続いているということは、ちゃんと役割を果たしているのか、やっていないけどごまかせているということだろう。

まぁ今はそんなことどうでもいい。それよりも、まさか龍族に会えるなんて。

ずっと、本の中、空想上の生物だと思っていたけど、魔法が存在するこの世界に、ずっと憧れていた生き物がいてもおかしくない。


「お嬢様、お気をつけてお進みください。いつ魔物が現れてもおかしくないので」


護衛の一人がそう声をかけて着て、私はハッと我に帰る。

確かに龍族に会えるのは嬉しい。だけど、彼らに会うには、この森を抜けないといけない。

昼間なのに、日の光が差し込まないほどに密集している木々。どこからか聞こえる魔物の唸り声。当然人の手が入っていないから足場も悪い。段差があったり、木の根がむき出しになっていたり、とても危険だ。


「そうね、ありがとう」

「はい。突然魔物が現れ、驚いて足を踏み外して崖から落ちてしまうかもしれません。……このように」

「え?」


突然、右からを勢いよく押された。倒れないように左足に力を込めたけど、地面が崩れてそのまま勢いよく転げ落ちた。

何が起きたのかわからない。私は今、何をされた?

だけど、思考を巡らせる前に、背筋がゾッとした、振り返った先には大量の狼がいる。いや、普通の狼がこんなところにいるはずもない。


「魔物が……こんなに……」

「お嬢様ー」

「っ!たすっ……」


護衛騎士に助けてもらおうとしたけど、私は彼らの顔を見て悟ったのだ。ニヤニヤと私を見下ろす護衛は、私を全く心配していない。


「いやー、流石にその数の魔物を俺たちで倒すことはできません」

「すぐに助けを呼ぶので、なんとか生き延びてください」


ゲラゲラと笑う男たち。そうだ……あの屋敷で、私の味方でいてくれる人は片手で数えるほどだ。家族はもちろん、使用人も騎士も、みんなアンジュをあざ笑い、見下した。

助けを呼ぶ?そんな見え見えの嘘、私が信じると思うの?どんだけ私のことをバカにしてるのよあいつら。


「そう、ならがんばって生き延びるわ。安心して……あなたたちの顔はしっかり覚えたわ」


覚えた。私をバカにした人間。その顔……お前らを絶対に許したりしないわ。

男たちはゲラゲラと笑いながら、その場を去った。

きっと、最近家族がおとなしかったのはこのためなんだろう。反抗したのがいけなかったのかな……でも、やられっぱなしなんて絶対にいや。

背後から聞こえる魔物の唸り声。

振り向いた先にいる数は、10……いや、20ぐらいかな。そんな大人数で来ても、全員で私を食べることなんてできないだろうに。


「あーあ。生まれ変わっても、また早死にか……」


前回は、友人がまさかのヤンデレちゃんで、そんな子に殺されて、夢にまでみた世異世界では、家族がクズで、結果的に魔物に食い殺されて死ぬ。

どうして、普通に生きてるだけなのに、私はこんなにも不幸なんだろう。

別にお金持ちになりたいとかそんなことはない。ただ幸せで、平穏な暮らしをしたいだけなのに……


「人間だから叶わないのかな……」


昔、テレビで止むことのない報道を見て、どうして人間はこんなにも愚かなんだろうと思った。どうして、欲を抑えられないんだろう……そんなもの、知能のない獣と同じじゃないか。

私は、こんなのと同じ種族だなんて、嫌だ。

変われるわけでもないの、私は自身の存在を否定した。


鳥になって、自由に空を飛びたい。

猫になって、自由に街中を駆け回りたい。

魚のように、自由に海を泳ぎたい。


「私はただ……自由でいたいだけなのに……」


魔物たちが顔を上げ、一斉に私に襲いかかる。

私は逃げなかった。だって、逃げられるところなんてないんだ。前はま魔物。後ろは登ることのできない土の壁。死ぬ以外の選択肢は、私にはないのだから。


「あぁ、来世は……人じゃない何かに生まれたいな……」


きっと魔物に食われるのは痛いだろう。前よりも痛くて苦しくて辛いだろう。それならいっそ、一思いに殺して……。


「騒がしいと思えば……何故こんなところに人の子が?」


一向に痛みを感じなかった。固く閉じた目を開ければ、数多くの魔物が倒れていて、とても澄んだ綺麗な声が聞こえた。


「人の子、こんなところで何をしている」


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