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第13話 適性

 魔法師が魔法を使う際に考えるべき要素は主に三つである。


 まずは魔法の根源ともいえる魔力量、次に魔力を現出させるための魔法陣、最後に魔法の属性だ。現代魔法では様々な属性が誕生しているが、ベースとなる属性は火、水、風、光の四属性である。


 魔法師は自らの適性に合った属性を選ぶことで最大限の力を発揮することができる。この適性は先天的な要素であって両親から遺伝で決まる。


 しかし世界には魔法を扱えない非魔法師も存在しており、たとえ両親が魔法師であっても適性を持たずに生まれてくる者は少なからずいた。この場合は祖父母の世代に非魔法師がいることがほとんどであり、魔法師は一族を絶やさないために魔法師同士の婚姻を望む傾向が強い。


 レイリア皇国の人口に占める魔法師の割合はおよそ三割ほどである。


 そのため元を辿れば一族が親戚関係にあることも珍しくはない。魔法師の世界は閉鎖的であった。しかしレイリア皇国には昔から都市伝説として根強く語られる話がある。


 先天的であるはずの魔法適性を増やせるという話だ。


 しばしば語られる有名な童話がある。高名な魔法師一家に生まれた一人の不運な少女の話だ。魔法の才を持たずに生まれた少女は家族から存在しない子供として扱われた。魔力を持たない人間は魔法を使うことができないため、少女は家名を名乗ることも許されなかった。


 しかし、少女は魔力を手に入れて魔法師となったのだ。


 先天的に魔力の才を持たない少女が魔法師になったのだ。そして少女が魔力を手に入れることができた理由こそが精霊であった。少女は精霊と契約することで魔力を手にしたのである。


 この話は遥か昔から伝わる童話であり、真偽は分かっていない。


 魔法理論の世界では精霊と契約することで新たな適性を獲得することができるという学説は存在する。魔法を説明する際に魔力を無色透明な液体として表現することがある。


 魔法師の体内には魔力の入った器があり、その魔力を魔法陣に通すことで世界に影響を及ぼす。魔法陣を構築する詠唱は長い年月をかけて各属性に最適化されたものであり、一致した属性の魔力は魔法陣を通ることで大きな効果を発揮する。


 しかし無色透明な魔力では十分な効果を発揮しない。


 そこで魔法師は予め体内で魔力を錬成する。イメージとしては無色透明の魔力に色のついたインクを溶かして色を付ける。これによって無色透明の魔力は任意の属性に変化する。


 そして、この溶質となるインクこそが適性である。


 例えばセイヤは光属性の適性しかないためインクは黄色だけだ。いくら魔力を黄色に染めたところで火属性に最適化された魔法陣を通しても効果は期待出来ない。


 火属性や風属性など複数の適性を持つユアは複数のインクを持っており、好きな色に魔力を染めることができる。逆に適性を持たない非魔法師は体内に魔力を持っていても、魔力を染めるインクを持たないために魔法が使えないのだ。


 これが適正についての説明である。


 しかし魔法理論の世界では精霊と契約することによって本来は持つことのできなかった異なる色のインクを手に入れることができるとされている。これによって魔法師は後天的に新しい魔法適性を入手できるという主張は少なくないが、そもそも長年にわたって精霊の存在を確認できていない。


 そのため、これらの学説は机上の空論とも言われている。


 けれども精霊の存在については昔から数多く報告はされている。


 今回ザックが口にしたダリス大峡谷の水の妖精もその一例である。レイリア皇国は国中を壁で囲まれた大国であり、壁の外には暗黒領と呼ばれる地域が広がっている。


 暗黒領とは人が住むことのできない凶暴な魔獣たちが住まう荒野であり、普通の人が立ち入ることはできない。依頼を受けた魔法師が壁の近辺に出没した魔獣の討伐を行うことはあるものの、魔獣は一般的な魔法師では太刀打ちできない怪物であり、ほとんどが上級魔法師以上に依頼される。


 そしてダリス大峡谷は暗黒領の先にある人類が確認した最東端だ。そこにはレイリア近辺で確認される魔獣とは一線を画す凶悪な魔獣たちが住み着いており、特級魔法師でも手を焼くとされている。


 凶悪な魔獣の巣窟として知られるダリス大峡谷は子供の躾に使われるほど人々の恐怖の対象となっていた。


「セイヤ……」

 

 そんな場所にユアは立っていた。


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