隣の席のエルフはテレパシーが使える(僕も使える)
僕の在席しているクラスは文学クラスで、魔人は珍しい。(魔人やエルフってのは文章を書くのが嫌いなのだ。)
僕は魔人なので、珍しくもなく、テレパシーが使える。
隣の席のエルフは、エルフとしては珍しいことにテレパシーが使える。つまり、思念を他人に飛ばすことが出来る。
教師含め、テレパシーを使えるのは僕達2人だけだから、授業中にテレパシーを交わすようになるのは自然なことだった。
その日の午後も、隣の席のエルフ(僕はエイちゃんと呼んでいる)から念波が飛んできた。
『ねぇ…………エム…………』
エイちゃんは僕をエムと呼ぶ。一般的なエルフの例にならい、エイちゃんは高飛車な性格で僕のことを呼び捨てにする。
『なに?』
『今日の朝ごはん、なんだったの。言ってごらんなさい。』
エムちゃんが振ってくる話題は、わりとどうでも良い話が多い。
『コーンフレークだよ。今日もとても美味しかった。』
僕はコーンフレークが好きだ。
『またそれ?あんな物ばっか食べて、よく飽きないものね』
エルフのエイちゃんは、コーンフレークがあまり好きではないらしい。砂糖が多くて甘すぎるし、大量栽培されたコーンだけなのが気に入らないらしい。
『それがね、新しいコーンフレークに変えたんだよ。前のも好きだったけどね、コーンフレーク専門店で、木の実たっぷりのコーンフレークを見つけたんだよ。』
エイちゃんが気に入りそうなコーンフレークを見つけたので、思わず買ってしまったのだが、味も美味しかったので大満足だ。
『へぇ……』
『……人気な木の実はだいたい入ってるんだよ。』
エイちゃんは木の実が好きだ。
『アーモンドは?』
『入ってる。』
『クルミは?』
『入ってる。』
『カシューナッツ。』
面白くなってきた。少し、エイちゃんの方を盗み見る。
『それも入ってる。』
『ヘーゼルナッツは?』
ヘーゼルナッツは……入ってただろうか。
『…………どうだったかな。…………他にも、スイカの種とか入ってたよ。』
『ふーん…………そうなのよね。結構美味しいのよね、あれ』
エイちゃんはどことなく満足気な表情だ。この表情が見れただけでも、コーンフレークを木の実たっぷりにした甲斐があったというものだ。
『ちなみに、エイちゃんの朝ごはんは何だったの?』
『私は…………』
エイちゃんがちらっとこっちを見た。
『……何と、私もコーンフレークなのよ。…………別に、あんたが美味しい美味しいって言うから買った訳じゃないのよ。偶然安くて、甘いものを食べたい気分だったの。』
エイちゃんからの念波はちょっと速かった。
『まぁ、甘いものを食べたい気分の時には悪くない食べ物だったわ。』
『それは良かった。』
僕が美味しいと感じたものを、エイちゃんも美味しいと感じてくれたのは何となく嬉しい。
その気持ちが伝わったのか、エイちゃんは少し恥ずかしそうな表情になった。
気づけば、お互いの顔を見ながら会話をしていた。
『かわいい』
と思わず僕から念波が飛び出したのと「じゃあそういうことで。授業を終わります」と教師が言ったのは同時だったので、多分エイちゃんには伝わっていないと思う。
勉強しろっ