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プロローグ
「あの人は絶対渡さない。幸せにできるのは自分しかいない」
目の前にいる相手も自らと同じく長期に渡り、年齢差のある異性を愛し続けて来た。それ故邪魔なのだ。
このままでは、どう考えてもあの人の心が満たされると思えない。
二人の進む先に、明るい未来など全く見えなかったからだ。苦しく悲しい生活が待っているとしか、想像できなかった。
自分より間違いなく幸福に出来る相手なら、諦めもついただろう。最も大切なのは、あの人の気持ちとその将来だ。別の相手と一緒になる事が運命ならば、応援することも厭わない。
しかしそうでない限り、諦める事など出来なかった。絶対あの人にとって相応しいパートナーになる。これまで様々な努力を積み重ねて来たのは、その為なのだ。
その行為を無にしようと立ちはだかるなら、決して許しはしない。目と鼻の先にいる相手が自分より優っているなんて、間違っても認められなかった。
その為覚悟を決めた。手を伸ばせば、届く距離にいる。そこでじっと見つめた。やがてタイミングを見計らい、拳を振り上げたのだ。