1人になるまで武器を使ってがんばるタイプのデスゲーム
これで何回目か。今日も僕たちは薬で眠らされる。
僕は横になったままゆっくりと目を開ける。知らない場所だ。広い部屋の中央には、何かが置かれているのが見える。後ろに人の気配があるのは、おそらく僕以外に連れてこられた子たちだろう。僕はもう一度そっと目を閉じた。
10分もすると、側でゴソゴソと音がし、動く気配がする。そして、困惑する声が聞こえてきた。
「え?ここは、どこ?」
「おい!なんだここは!」
「た、たすけて……」
「夢?なんなのこれ」
僕も今起きたフリをして怯えて声が出せない様子を演じてみる。
〈ガガガガガガガ〉
部屋に設置されていたスピーカーからノイズが聞こえてきた。
〈やぁ!おはよう諸君。目覚めはどうだい?ようこそゲーム会場へ!〉
「おい!なんなんだよここは!」
1人体格の良い男子が叫ぶ。他の3人は怯えているのか黙ったままだ。
〈威勢がいいね。でもここからは静かに聞いてくれ?そうじゃないと出してはあげないよ。とは言ってもルールは簡単。部屋の真ん中にある武器を使って、殺し合いをしてもらう。最後に残った1人をここから出してあげるよ!〉
「殺し合い……?」
「なによそれ…」
明らかに全員の表情が変わった。きっと怖いんだろう。一応僕もさっきより怯えた表情をしておいてみる。
〈さぁ、ゲームの始まりだよ。じゃあね〉
ブチッという放送が切れた後とともにノイズもなくなり困惑と恐怖という感情だけが辺りに残った。
しかしそんな空気は僕が壊そう。
「とりあえず自己紹介だ!僕はケイ。よろしくな。」
とびっきりの笑顔を見せてやった。
空気を壊しすぎたのか、全員さらに困惑の顔を見せて口を開こうとしない。1人の女を除いて…。
「おい、お前はいつまでそっち側でいるつもりだ。僕の笑顔で笑いすぎだ!さっさと自己紹介しろ」
「はーい!私はアイでーす!アイちゃんってよんでね!」
みんな険しい顔になってきてしまったな。
「まぁいい、とりあえず説明しよう。君たちはデスゲームに巻き込まれている。」
「デスゲーム?!」
「何言ってるの?」
「まぁまぁまぁまぁまぁ、一回落ち着こう!君たちだって殺し合いしたくないだろ?だからここは僕たちに任せてくれないか?少し手伝ってくれたらすぐにここから出してあげるよ」
「何言ってるのよ!さっきのも本当かわからないのに!」
「あ、あなたたちは敵なんですか……?」
「そうだ!お前ら何者なんだ!」
お前ら急に喋るやん。ちょっと煩くなってきたぞ…面倒くさいな。
「僕たちはデスゲーム撲滅委員会のメンバーなんだ。」
「デスゲーム撲滅委員会?」
「そうだ。実は世の中ではデスゲームが結構行われている。それを潰そうとしている委員会だ。」
「なんでそんな人たちがここにいるんだよ」
「それはデスゲーム参加条件を満たしたからだ」
「条件?」
「そんなのはいいんだよ!とりあえずここから出ようね!」
「アイは強引すぎだ。まぁいい。とりあえずお前らなにか持ってるものとかはあるか?ポケットの中とかな」
「え…あ、ない!カバンがない!」
「本当だ。カバンがなくなってる…。ポケットの中はハンカチくらいだよ…」
「俺なんも持ってないぞ」
まぁ当たり前である。僕とアイも一見何も持っていない。主催者が奪ったのだろう。……と思ったら大間違いだ!!
「とりあえず部屋に何があるか、部屋の構造だけ調べよう」
とは言っても、部屋は学校の体育館ほどの大きさだが、壁も床もコンクリート。扉は一つだけで、内側にドアノブがないため開けることができない。そして部屋の中央に、バール、ペンチ、包丁、ノコギリが置いてあるだけだった。
普通の人ならこの程度の情報しか得られないだろうが、僕らは違う。
まず監視カメラを探す。こんな一面コンクリートの部屋では隠すこともできないため見つけやすい。
「計4つだな。さて、君。体格いいね。僕を肩車してくれ。流石に手が届かない。あぁ、あと女の子二人は上着を脱いで貸してくれ」
少し渋ってはいたが、しぶしぶ男の子は肩車をしてくれる。女の子たちも、顔を合わせて上側僕に渡してきた。肩車をする男の子は体格もいいし、僕の体重はそれほど重くないので、あまり苦ではないだろう。僕とアイは上着を脱ぎ、監視カメラを覆い、袖を結んで固定する。…のだが、一つ目が終わった時点でスピーカーが鳴り出した。
〈ガガガガガガ〉
〈何をしているんだい?なぜ監視カメラを隠す?〉
ごもっともだ。普通そんなことしないだろうからな。
「それはこれから見られたくないことをするからに決まってるだろ?」
〈隠していいわけないだろ。今すぐ外さない限りもうその部屋からお前たちが一生出られることはない。〉
「うるさい。そんなことはいいから、早くあっちの監視カメラも塞ごう」
〈無視をするんだな……。なんなんだお前らは。もういい、そこの扉はもうなどと開くとはない!そこで仲良く死ぬんだな!〉
ブチッという音とノイズが切れた。
「まぁいい、ほっとこう。今は監視カメラだ。」
僕と肩車役の男の子が作業する中、女の子の一人が不安そうに聞いてきた。
「あの…大丈夫ですか?私たち出してもらえないんですよね……」
「大丈夫だよー!さっきのを聞く限り、あいつらの目的は私たちが死ぬこと。多分殺し合いさせるのは楽しいからじゃない?もしかしたら金もらって誰かに見せてるのかもね。私たちが死ぬことが目的なら、この部屋に閉じ込めてさえおけば、餓死だの水がないだので確実に死ぬ。空気もなくなるかもだし。」
「その通りだアイ。今ここでドアを開けて主催者側が入ってきたとしても、ここには武器がある。出た先がどうなってるかは知らないが、反撃されて出られた方が困るんだろう。もしかしたら、僕らが弱っている2日目ぐらいには押し掛けてくるかもしれないがな」
さて、奴らには見えなくなった。ここからが本題だ。
「これで奴らからは僕たちの姿は見えない。」
「アイ、指紋採取だ」
「はーい。」
アイは呑気な返事と共にに服の中から何かを取り出した。僕たちの服は特殊でいろんなものがしまってある。ポケットの中身も確認しないやつらがこの服の構造に気付くはずもない。
テキパキと武器から指紋を採取していくアイ。
「あー。一個しか指紋出ませんね。」
「前回のゲームが終わってからそれ洗ったんじゃないか?そして使いまわされた。その時に他の指紋が洗われて、最後に触った…つまり主催者側の指紋だけが残ったんだろうな。」
「あー。馬鹿ですねー。きっと指紋採取されるなんて思わなかったんでしょうね。」
さぁ、ここからが本題だ。ここではケータイを開いて外部と連絡を取ろうとしても、おそらく電波が入らないだろう。
「ひとまずその指紋を持ち帰れるようにしてくれ」
アイはテープを、武器の指紋がついていたところに押し当て、指紋を取った。ここから出た時に主催者を見つけ、撲滅するためだ。
「本当はもっと証拠が欲しいんだがな。ここには物がなさすぎる。とりあえずここからでるか」
「そーね。壁の指紋採取は広すぎてダルいし」
「でも、出るってどうするんだよ」
「いい質問だ肩車君。正規ルートでここから出ようじゃないか。ひとまず監視カメラの布を外そう。アイは指紋採取の道具をしまえ」
「はーい」