いつもの
じりじり。みーんみんみん…
ブンッッ!!!!ジジッ……ポトリ。
…大丈夫?すごい音鳴っていたけれど。
あ、落ちた…。
今年もきたわね、初夏。暑くてむしむしして嫌いなのよ。
私はご丁寧に備え付けられたソファの上で横になりながら天井を見上げていた。
…授業をしているだろう学校は静かで、この部屋からは先生の話声が、時々空いた窓から聴こえるくらいだ。
こんにちは。自己紹介が遅れてしまってごめんなさい。
私の名は鹿草茜。かぐさあかねと読むの。
年は先日18になったばかり。身長はそこそこ高いほうなのでは?
黒い髪を左でお団子にしているのよ。暑いじゃない最近。
チャームポイントは右目の涙ボクロかしら。
えっ、授業も受けずに何してるか?話すと長くなるわ。
でも、ちゃんと黒板の板書はしてるのよ?
ほら、板書しとけっていう汚い字を添えてびっしり。
私の先生が書いてくれているのだけれど、字が汚すぎて解読しながら書くのが日課になってるな。
なぜここにいるかを簡潔に纏めると、授業に出られない体の上、どうやら世間様に知られてはならない身だからこうして隔離されている、らしい。
…授業に出られない。
何故ならばそれは仕方ない。素晴らしく重い睡眠障害というものを抱え、小、中と養護学級に入れられてきたから。その継続でということ。
なんせ私自身不安定化でいつ寝落ちするか分からない、とのこと。
…世間様に知られてはならない。
これが謎で、何度も考えてはいるのだけれどあまりピンとこない。
恥ずかしながら、私はそこそこ大きなお家の娘だとされている。だから隔離して守る?学校側からして、これは許してもいい事なのかしら…と、少し疑うべきところはある。
……あんまり考えても時間の無駄ね。
やめておこう。
私は手探りで赤色の風車を取り、ふうっと息を吹きかけてそれを回す。
カラカラと音を立てて、また止まったら吹きかける。……ああ、飽きた。
そうだ、歩きに行こう。ちょっとは普通の生徒が何をしているのか分かるかもしれない。
そうと決まればまずは倒れないように眠らなきゃ。
次はきっと、5時には起きるはずだから。
……おやすみなさい、私。