表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説家になれない小説書きは一体どうしたらいいのか?

作者: 篠渕暗渠

 俺はこれまでブログ運営をして、その中で自作小説や考えたことを書き綴ってみたり、あるいは作家の卵を目指すサイトに小説を投稿して、感想を貰ったりしてきた。

 そして、基本的にはライトノベルの小説賞への投稿を目指してきた。

 なろうへの投稿を本格的に始めたのは数日前のことである。

 カゲロウプロジェクトに関する解釈や二次創作やグループ運営が盛り上がりを見せ、百万ヒットくらい稼いだこともあった。しかし、やがて人も集まらなくなったブログの運営が面倒になり跡地化させた後は、とにかく好きな小説を書き写してみたり、その合間になんとかかんとか自作小説を書くことを頑張ってみた。

 小説を書くということが得意で、好きで、楽しくて仕方がないという人も中にはいるだろう。だが、俺にとって、小説を書くのは難しいことだった。

 二、三ヶ月かけて長編小説を書き上げるのがやっとで、まったく書かないでいる時期もある。

 自分が自作小説において、そこまで評価を受けたこともない。

 小説賞の投稿で言えば、一次を通過したことがそもそもないようなお察しなレベルだ。

 フリーター生活で凌ぎつつ、なんとか自作小説を完成させるような日々を送ってきた俺だが、恥ずかしいことにもう二十代後半に入りつつあり、そろそろ身の振り方を考えないといけなくなってきた。

 俺にとって、公募用の小説を書き上げることはなかなかの難題で、休日に十二時間くらい『書くこと』になるべく集中する時間を取り、そしてちまちま自作も進めるという手段を取るより方法がない。

 もうそろそろフリーター生活に決着をつけるべき時かもしれないし、そうなれば公募に出すのは一旦取り止める必要も出てくるかもしれない。


 本題に入る前に自分語りをダラダラと続けてしまったけれど、とにかく俺が言いたいのは小説家になるのが難しい人もいるということである。そもそも長編レベルの文章を書き上げることができる人とできない人がいるのももちろんだけれど、きちんとした出版社で賞を取り、一冊でも本を出せる人というのは、小説を書いている人全体と比べればかなり少ないだろう。

 更に言えば商業作家の中でも、ヒットするなり作品数を重ねるなりで、作家業で『食っていける』というレベルの人にまでなるともっと限られるだろうが、出版業界そのものが縮小傾向にある今の時代、小説というのは基本的に『副業』だと俺は考えている。

 ともあれ、ライトノベルレーベルで一番大手なのは電撃文庫だ。

 電撃小説大賞には毎年5000作品くらいの応募があるのだという。

 昨年の応募作品数が4878作品、その内、受賞して小説化されたのはわずか8作品である。

 およそ1/600くらいの確率。

 4878作品を書いた作者の内、4870作品を書いた作者は、少なくともその年は小説家にはなれなかったわけだ。

 この比率というのは最大手の電撃だから最も厳しいというのは言うまでもないことだけれど、他のどのレーベルでも基本的な事情は変わらない。つまり、昔は懸賞小説と呼ばれていたから言い得て妙だと思うけれど、『小説賞に投稿するほとんどの人間は、小説家にはなれない』のだ。これは厳然たる事実だと思う。

 人間には生まれつき差がある。これは真理だと思う。

 生まれた環境にも差があるし、持って生まれた才能や性格にも差がある。

 俺はコミュニケーション能力において、劣等感を感じることが多いが、改善はできても、根本的にそういう性質的部分が変わることはないと思っている。

 そして、小説を書く才能についても同じことで、電撃小説大賞で言う1/600に到達できる人と到達できない人はどうしてもいる。もちろん、たとえどんな才能を持っている人間でも、小説を書かなければ、そして書き続けなければ小説家になることも、小説家でい続けることもできないのは前提だ。けれど、一生小説に固執して努力を続けたとしても、やはり小説家になれる人と、小説家になれない人はどうしてもいるのではないか、と俺は思う。やはり、商業作品になるような小説はなんだかんだで読めるものになっているし、読者を惹きつける何かがあったり、小説業界内的な基本がちゃんとできていたりするのだろう。少なくとも落選する作品よりは。

 それでは1/600になれない残りの599/600、つまり圧倒的大多数派の人間はどうすればいいのだろうか。

 それが俺がなろうに作品を投稿し始めた理由とも重なっている。

 そもそも俺がなろうに作品を投稿しなかったのは、異世界転生が主流と聞いていたからだ。そういったテンプレ系の作品(あるいはアニメ化されることが多いハーレム系ラノベも含めて)を、俺はどうしても書くことができない(書きたい書きたくないというより能力的にそういう話が書けない)という事情があった。

 しかし、これまで作品を投稿してきた批評系のサイトでは、作品がやがて消えてしまうということもあり、ネット上に自分の作品のアーカイブを作りたいと思うようになった。

 数年分の公募落選作、あるいは尺が足りなくて投稿すらできなかった作品を毎日続くだけ投稿してみようと思っている。


 結局のところ、人類の大半は特別なポジションを得られない凡人なのだと思う。

 商業化された作品も、読者に散々に言われたりはするけれど、しかし一創作者として見てみれば、商業化まで行ける時点で凄いとしか言いようがない。もちろん色々なケースはあるだろうけれど、それなりに努力と才能がなければ、きっとそこまでは辿り着けないのだろう。

 そして、そこまで辿り着けない凡人は、結局、自分に見合った評価を受け取れるだけで別にいいのではないだろうか。

 どう頑張っても広く評価を受ける人気作者のような立場にはなれそうもない。

 それでも自分なりに苦心して書き上げた小説は、自分にとっては特別なものだ。

 それが人気作者と比べれば圧倒的に少ない回数だとしても、人に少しでも読んでもらえれば、それはそれでいいのではなかろうか。

 俺はなろうに投稿し始めた作品の、けして多くはないヒット数を眺めながら、そんなことを思う。


 小説を書くことによって何を成し遂げたいかは、人によって違うだろう。

 お金が欲しいのか、人気なポジションが欲しいのか、作品を好いてくれるファンが欲しいのか。

 様々な理由があると思う。

 俺の場合は自分の頭の中の作品を、それが他人にとって面白く感じられるものだろうがどうだろうが、なるべく作品の形にしてやろうと思っている。

 評価は後からついてくるもので、しかもそれは自分で都合よく変えられる類のものではない以上、致し方がない。

 もちろん、なるべく読者に楽しんでもらえる工夫も必要だろうが、それでも結局、面白い作品を書けるヤツと書けないヤツはどうしようもなく存在してしまうのだから。

 俺にできるのはやたら疲れながら一つ一つ小説を書き上げることを目指す、それだけだと思っている。

 書いて書いて、やがてできることが増えて、自分の考えた通りに段々と作品を書けるようになってきて、そして、投稿すれば人気は掴めなくとも、ネットの片隅で読んでくれる人がちょっとはいる。小説を書く理由なんて、そんなもんで十分ではないだろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。読ませていただきましたが色々と悩まれているようですね。ただあなた様自身が自覚しているように答えはでているように思います。『書き続けるしかない』と。  これは言ってみれば『業』のよ…
[一言] 正直、このエッセイを読んで色々と残念だな、とは思う。 別に、何が目的で小説を書こうが、どういうスタイルで小説を書こうがそれぞれの自由なんだけど、『あなたが楽しみながら書けばええやんか』と、そ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ