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小さな私の冬の出来事

作者: たっぱ



 長い長い坂の上。

 空から降り注ぐ銀色の雪。

 しんしんと、儚く、美しく。

 柔らかい風にふわりと舞い上がり、また重力に引かれていく。

 一つ一つが自分がいることを示すように、景色を染めていく。

 そんな小さな粒たちを私はコートのポケットに手をつっこみ、眺めていた。

 いつもとは違う光景の中、たった一人で。



 それは、私の冬の小さな出来事。



 坂の上でチャイムが鳴り響いた。

 静まり返っていた辺りに、妙に大きくその音が広がっていく。

 待ち焦がれていた、その音。

 私は小さく息をもらして、ポケットの中の手をそっと握りしめた。

 外にもれた白い息はゆっくりと広がっていく。

 そして私の頬はほんのりと温かかった。



 一つの流れのように次々と降りてくる学生たち。

 さっきまでの静けさはもうなく、私は少し遠い話し声を聞いていた。

 誰もが同じ鞄を手にもち、同じようなコートを羽織っている。

 それがこの坂の先では当たり前だとわかっていても、私にはまだ不思議なものに思えた。


 みんな違う格好ならもっと簡単にあの人を見つけられるのに……


 と、思ってしまう。


 でも実際は、すぐにわかった。

 あの笑顔のおかげで。

 あの人は楽しそうにお友達と歩いていた。

 胸がとくんと脈打つ。

 他の人よりも少し長く伸びた髪。

 身長は他の人と大きく変わらないけど、私の場合は近くで見ると見上げてしまうだろう。

 そして何よりも私の目を引いてしまうのは、見るとこっちまで優しくなってしまう、あの優しい笑顔だ。


 あれが、私の恋した笑顔。



 初めて会ったのは坂の上の学校の学園祭だった。

 あの人は私が買った直後に落としてしまったクレープの代わりに、いいよいいよ、と新しいクレープを作ってくれた。

 もちろん、あの笑顔で。

 ちょっぴり大きくて、トッピングが増えていた。

 作ってもらったクレープは甘かったはずだ。

 でもわからなかった。

 だって私の心はもっともっと甘くなっていたのだから。



 あの人は近づいてきていた。

 私も深呼吸して、ゆっくりと足を進めた。

 大丈夫、もう決心はついている。

 今日までゆっくり時間をかけて、考えてきた。

 だから、これがいいとはっきりと言える。

 だから胸をはって、しっかりと行こう。

 一歩、また一歩。

 あの笑顔がはっきり見えてくる。

 無意識のうちに少し駆け足になっていた。

 距離が縮まっていく。

 五メートル、四メートル、三メートル、二メートル……

 そして、


「突然すみません! あの、先輩っ、ずっと好きでした! 私とお付き合いしてください!」


 私は言った。

 突然のことで、あの人は驚いていた。

 驚ろかせてしまうってことは、わかっていた。

 でも、それでも伝えたかった。

 短い言葉だけど、ありったけの気持ちを込めて、それだけを。

 冬の風が吹いた。


「あっ…」


 私はあの人を見た。

 でも、あの人は私ではなく自分の隣を見た。


 それまで、気づかなかった。


 あの人の隣にいる、女の人に。


 私の口からもれた白い息は、ゆっくりと広がっていき、消えていった。

恋をしている女の子っていいですよね。

普段とは違う反応を見せてくれたり、ちょっと恥ずかしそうに話をしてくれたり…

話をしていて楽しいです。飽きませんね、はい。


さて内容についてですが、まず題名の“小さな私の冬の出来事”と文中の“私の冬の小さな出来事”が違うのは仕様です。

最後までどちらがいいか悩んだのですが、どちらも意味があるフレーズなので両手採用してしまいました。優柔不断な自分がにくいです。


年上の先輩に恋をする女の子ってことですが、多分ここに来るまでに色んな苦労をしたんでしょうね。なんとかして名前を調べたり、なんとかして住所を調べたり、なんとかしてその人の性格を調べたり…

(なんとかしての部分は乙女の秘密なのでしょう)

実際の女の子はどうなのかな? 少し気になったりします。


最後になりましたが、この未熟な私の文章を読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。

お暇でしたら、感想、批判なり書いてくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言]  また読ませて頂きました。  「甘いじゃないか、バカヤロー。」 ……茅原実里が憑依したようです(笑)  さて、本題です。前にも言ったように、恋愛物を読まないので、そういった面で優れている…
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