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~記憶とこれから~

本日連続投稿です。

何を言っているかわからないと思うが、目が覚めたら犬になっていた。


もう一度言おう、目が覚めたら犬になっていた、俺。


大事なことなので2回言いました!


しかも、生まれて間もない仔犬のようだ。


体が思うように動かないし、目が開ききっていないのだろう。


視界も常時不鮮明だ。


犬になる前は人間だった筈だ。


アレ?俺、ソ○トバンクのお父さん?


んな訳あるか!


普通に人間だったよ!


人間だった頃の最後の記憶を思い出してみよう。


そこにヒントがあるかもしれない。



人間だった頃の俺は獣医をしていた。


獣医とは言ってもDr.ド○トルとかWI○D LIFEみたいな小動物臨床獣医師ではない。


牧場で家畜の健康診断とか治療とか種付けとか安楽死とかを行う産業動物臨床獣医師というヤツだ。


その頃の俺は、白峰(しらみね) 雪次(ゆきじ)という名前で36歳、一応付き合っている女性はいた。


腐女子で重度のヲタクだったが(笑)


閑話休題(それはさておき)


覚えている最後の記憶は……


その日の俺は久し振りに仕事が休みだったが、彼女は仕事。


しかも、休めない状況らしく暇だったので、朝からパチンコに行った。


そうだ、あの日はバカみたいに大当たりが連発し60万程稼いだのだ。


開店から閉店間際まで台を回して座っていたので、ケツと右肩が痛かったがそれはご愛嬌というものだ。


バカ勝ちして気を良くした俺は、近くの居酒屋で酒盛りして梯子して……


気分最高潮で酔っ払った俺は帰路に電車に乗るために駅に向かったのだ。


うん、ここまでは完璧に覚えている。


そこからどうなったんだっけか……


駅の改札に目指して階段を上っていた。


それも覚えている。


(あっ……!)


そこまで思い出して全部思い出した。


その後酔っ払っていて足取りが不安定だった俺は、最後の最後で階段を踏み外しバランスを崩して後ろ向きに倒れて階段から落ちたのだ。


モロに後頭部を階段の角にぶつけて一番上から一番下まで転がり落ちた。


視界が一瞬真っ白になり、目がチカチカした記憶がある。


そのときは痛みを感じていなかった。


本当に強い衝撃を受けると痛覚を一時的に遮断するというのは本当だったらしいと身を以て体験した。


少しずつ、真っ白から色を取り戻した視界に映ったのはゆっくりと広がる鮮やかな赤。


俺の血だ。


獣医をしている以上血は見慣れている。


だが血を見てから、じわじわと全身が熱くなり思い出したかのように痛みがあらゆる箇所で駆け巡る。


本来なら絶叫しのたうちまわっているところだろうが、そのときの俺はその余力すらなかった。


しばらくして、血が足りなくなってきたのか視界が暗くなり意識と痛みがぼやけていくのを感じた。


そしてそのまま俺は意識を失ったのだ……



「………………………………」


全てを思い出した俺は意図せず前足で自分の両目を抑えて悶絶した。


(うわ!恥ずかしい!!彼女が好きだった転生物みたいに誰か庇って死んだとか、病気で青春を送れずに死んだとかストーリー性のある死に方じゃなくて、ホントしょうもない死因だった!!)


調子に乗って飲みすぎたので俺の自業自得としか言えない。


(ホント恥ずかしい!死にたい!!あっ……もう死んだんだった)


そこで一度俺の意識は落ち着きを取り戻す。


(死んだとなれば、変顔で死んでなかっただろうか気になるところだ)


死因も死に様も無様とか笑い話にしかならない。


(あとPC(パソコン)のお宝映像の処分もしていない。まあ、透流(とおる)なら見つけてもゲラゲラ笑って『こんなのが良いのぉ~?変態、サイテー、引くわぁー』とか言いながらノリノリでコスプレHしてくれるヤツだったから心配はないが……妹に見られたら死ねる)


ちなみに透流はフルネームで清澄(きよずみ) 透流(とおる)という名前で生前の俺の彼女だ。


結構年下で24歳の工場の管理職員。


名前と違って清くも無ければ、透き通ってもいない。


むしろ、腐ったドドメ色の沼だと言える。


まあ、変に隠し事をする間柄じゃなかったので、心地良い関係ではあった。


ただ、男の俺にオススメのCP(カップリング)(♂×♂)を勧められても困るというのはあったが。


(まあ、俺のPCは透流が始末してくれるだろう!そうでないと非常に困る。俺の尊厳はお前にかかってるぞ!)


本当にしょうもない死に方したので尊厳もクソも今更だとは思うが、死体蹴りだけは勘弁して欲しいのだ(切実)


(状況は理解した。取り敢えず、俺は死んだ。そんでもって記憶を持ったまま犬に生まれ変わったと……どないせーちゅうねん)


俺は冷静に混乱していた。


エセ関西弁が頭を駆け巡る程度には。


(犬として生まれたからには犬として一生を遂げるしかないか。何にしても記憶があるのは有り難い。以前の職業柄犬の健康管理の知識は豊富にあるし)


動物として生まれ変わるなら欲を言えばオウムとか声を発することの出来る鳥が良かった。


最低限人間と意思疎通できるもの。


犬の声帯では人語は不可能だ。


完全にボディランゲージしかないというorz


何はともあれ俺はこれから犬として畜生道まっしぐらで生きなければならないのだ。


俺は犬として天寿を遂げる覚悟を決めたのだった。

仔犬に生まれ変わった白峰 雪次(36)の苦難の日々が幕を開ける!

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