プロローグ
自転車で登校中に車に轢かれて死んだところまでは覚えている。そこまではごくごくありふれた日常の風景だった。が、この状況はなんだ?
非日常その1(因みにその2はない)目の前に女神がいる。……いや、ふざけてないよ。真面目だよ。なんかいるんだよ。もしかしたら女神じゃないかもしれないけどものっそい女神っぽい人が。
彼女は白いドレスみたいな服に、いかにもって感じの透明な羽衣をまとっている。……たっく、なんなんだ?いま話題の異世界なんちゃらかよ。
「初めまして、私は女神です」
「へっ?あ、はい」
ほらもう確定じゃん。自分で言っちゃったよ。
「若くしてお亡くなりになったこと、誠にお悔やみ申し上げます。ところであなた、異世界に興味ありますか?」
女神は定形文のようなものを口にした後、そうのたまった。
あぁ、やっぱり異世界か。最近飽和してない?こういうの。まぁいい。丁度試したかったこともある。
「あ、その嬉しそうな顔は興味がおありだということですね」
やべぇ、俺無意識にそんな顔してたのか?慌てて口元を拭う。
「では、あなたには異世界に行ってもらうことにします。その際にボーナスとして何か好きなものを持って行っても構わない。ということになっています。何を持って行きますか?」
女神に問われ、俺は軽く深呼吸をしてこう言った。
「じゃあ、『スキルを作るスキル』をお願いします」
俺は昔からこれが最強なんじゃないかって思っていた。だってどんなスキルだって作れるんだぜ。必死こいて習得しなくても『瞬間移動』だとか『時間停止』だとかの超便利スキルを使えるんだ。
「……はい。手続きが完了しました。では、琴吹淳平さん。行ってらっしゃい」
目の前にゲートが現れる。これで、これで俺も最強になれる。
俺は元気に「行ってきまーす!」と言いながらゲートをくぐった。