仕事終わりに
「俺たちは強い奴にしかしたがわねぇ! 従えてぇなら力を見せやがれ!」
獣人族が指示に従ってくれない:三日間に及ぶ獣人族との連戦により解決。何あいつらタフなうえに数多いしねる。
「なに? 俺たちの代表になりたいだぁ? いいだろう、酒を持って来い! 一緒に酒飲めば俺たちはもう仲間。だったら代表にしても文句はねぇ。てかぶっちゃけ管理とかめんどい!」
ドワーフとの交流の足掛かりに:三日三晩酒を飲む大宴会の後、友好関係を結ぶ。スピリタスレベルの奴を飲むとか何あの酒乱。酒を抜ける魔法無かったら死んでた。
「我らが手にありし財は手のひらの砂のようなもの。儚き存在は、すぐに消え去ってしまう。ならばこそ、新たな場を設けたい」
「えっと、要約すると『食料がありません、あたらしく開拓していいですか?』だって」
吸血鬼族はそろって厨二病のため言葉が通じない:俺が通訳して問題解決。え? なんで言葉がわかるか? 俺にも似たような時期がげふんげふん……魔法の力です。
以降も数々の難題(?)が俺を襲う。そのことごとくを、俺は解決していった。もう俺は疲れた。だから……。
「もう、ゴールしてもいいよね?」
「ダメです。まだ書類が残っています」
「おぅふ」
シェリアからの慈悲のない言葉にとどめを刺され、机に突っ伏す。
「だらしないわねー。それでも獣人全員に勝った男?」
呆れたようにミカナはソファに座りお菓子を食べている。おい俺にもよこせ。
「にゃははー。シュウは大変だねぇ。いやー他人の不幸で酒がうまい!」
「黙れ酔っ払い」
部屋の窓際に座って酒を飲んでいるのはドワーフのエリン。ドワーフと飲み交わしたらなんか友好のあかしとか橋渡し役とかでついてきた飲んだくれである。
「くっくっく、受け取れ。我が作りし漆黒の物質よ。これを用い、しばしの安息を楽しむがいいわ」
「ありがとう、ほんとうにありがとう!」
要約すると『コーヒー入れたよ。これ飲んで休んで』という慈悲深いお言葉をくれたのは、吸血鬼のユー。ゴスロリの容姿から言動すべてが癒し役の子である。吸血鬼の翻訳をやっていたらいつの間にかついてくるようになっていた。
なんか見た感じハーレムになってるけど、それは気のせいだ。ユー以外は悪魔だ。書類を運んでくる悪魔だ。俺はこんなにも頑張っているというのに、こいつらはねぎらいの言葉をたまにしか言わない。ゆるせーー
「ーー手が止まっていますよ」
「あっはいすいません」
もう反論もせずに受け入れているあたり、ひょっとすれば俺の召喚の生贄にも奴隷がいたのかもしれん。……そういえばいまクラスの奴らは何してっかなー。こっちも落ち着いてきたし、そろそろあいつらもーー
「ーーシュウ! 勇者共がこちらの島にやってくるぞ」
……噂をすればなんとやらってやつか。
「よし行くか」
「帰ったら残りの書類ですよ」
「そこはふつう激励の言葉出しませんか!?」
ヴェルストに言われた場所へ転移してみれば、ちょうど勇者ーークラスの奴らが上陸しているところだった。突然現れた俺に驚いている様子。さて、第一声が大事だ。なんて言おう。
「よっすお前ら、久しぶーー」
「ーーくたばれ魔族!」
「ーーおっと」
「ぐふぉぁ!?」
「あっ」
いかん、いきなり殴りかかってきたからクロスカウンター気味に殴り飛ばしてしまった。……ま、いいか。
「おまえ! よくも幸助を!」
「いやいや、正当防衛ってやつだって」
それを見た奴らは、一部を除いて戦闘態勢をとる。
「まぁ待て落ち着け、俺はお前らのクラスメイトだぞ」
「お前みたいなやつ知らねぇよ!」
おっふ。俺そんな影薄かったかな? しかたない、証人を連れてこよう。いつもの三人組はどこじゃろなっと……お、いたいた。
「おーいお前ら、説明してやってーー」
「ーーだまされるな皆! そいつは魔族だ!」
「そうだ! 御園洲みたいな顔してるけどきっと変装だ!」
「あいつは向こうの世界で置いてけぼりにされてるんだ!」
ようしわかった。とりあえずこいつら倒して落ち着かせよう。あの三人組は特にぶち殺してゲフンゲフン、痛めつけてやる。
・・・しばらくお待ちください・・・
「……よっわ」
なにこいつら、倒すのに20分もかからなかったぞ。しかもそのうちの10分は3人組を執拗にねらってたのに。……召喚の生贄の差かね? さてと、
「落ち着いたか?」
「ぐ、ぐ……魔族め」
ダメだこりゃ……もう強制的にやっちまうかね? そうだそれがいい。そしたら手間が省ける。
「……えっと、御園洲君?」
「ん?」
さっそく実行しようと思ったら、戦闘の意思のなかったクラスメイト達の中から、話しかけてくる奴がいた。だれだ?
「えっと、本当に御園洲君なんだよね?」
「そういうお前は……八重樫か」
話しかけてきたのはクラスのアイドルこと八重樫さんだった。彼女の問いに答えれば、彼女は感極まったように涙を流し、俺に抱き着いてきた。ファッ!?
「ちょ、どうしたんだ八重樫?」
「御園洲君、御園洲君だ……」
そうつぶやきながら、抱き着く力を強める八重樫……心細かったのかね?
「御園洲君御園洲君御園洲君御園洲君……」
なんかぶつぶつ言ってるけど……もごもご言うだけでよく聞こえねーな。まぁ、聞いたらいけない気がするし、しばらくそのままにしておいてやるか。
「……落ち着いたか」
「うん、ごめんね取り乱しちゃって」
「いや、それじゃちょっと手伝ってくれ。お前らも」
少したって、やけにすっきりした顔の八重樫と、傍観していた無事なクラスメイト達に、俺が伸した奴らを一か所に集めてもらうように頼む。集まったな、それじゃやるか。
「解放」
そうつぶやき、解放という魔法を使う。これの効果は、まぁ簡単に言うと召喚でえた力をなくせる魔法だ。書類からの現実逃避の時に俺が作った魔法だ。自分で言っててもかなりのチートである。
解放の魔法を受けたクラスのやつらから、ふわっと光が出てくる。もしかして魂抜けちゃった? ……寝息立ててるし大丈夫だろ。
「御園洲君、なにしたの?」
「え? あぁ、お前らの力をなかったことにしたんだ。ついでに記憶云々も消えてるはず」
「記憶?」
あぁしらないのか。説明しとくか。かくかくしかじかまるまるうまうま。
「生贄にされた奴隷の記憶……それでみんながおかしかったんだ」
「そういうこと。んじゃ、八重樫たちも……いや、八重樫はあとでいいか」
「え?」
そう伝えて、八重樫以外の残ったクラスメイトに解放の魔法をかける。
「よし、それじゃお前ら先帰れ」
そういって、有無を言わせず転移の魔法で地球に送り返す。事後処理? しらんな。
「それじゃ八重樫……」
「え、なんで私だけ残したの? もしかして二人でこの世界で生きようってこと? うそ、そんなのって……」
「……八重樫?」
「大歓迎です!」
「え?」
「あ、ごめん。えっと、なにかな御園洲君」
なんかぶつぶつ言ってたけど、大丈夫かね? まぁ、話を進めよう。
「ちょっと、俺と一緒にお前ら召喚した奴らのとこ行こうぜ」
・・・しばらくお待ちください・・・
「うっし、これでいいだろ」
「……御園洲君、悪役(?)似合ってたね」
「魔王ですから」
さて、俺たちが何をしてきたかというと、簡単に言うと人間側を脅してきた。八重樫を証拠として、要約すると『こちらの戦闘の意思はない、しかし、今後お前らが同じことを続けるなら、滅ぼすのもやむなし』ということを言ってきた。お偉いさん方も勇者全員があっさりやられるとは思わず、見事に脅されてくれた。これで当面は問題はないだろう。
「よっし、悪かったな八重樫、それじゃお前も返すから……」
「え?」
「解放」
そのまま八重樫に対して解放の魔法を使う。そしてその発動が終われば、今度は転移の魔法をつかい、彼女を送り返す。
「ちょっとまって御園洲君、私との生活はっ」
八重樫は何かを言いながら転移していった。お礼か何かか? 別にいいのに。……さて、これで俺もお役御免だろ。屋敷に帰って報告しよ。いやーやっとこの仕事からおさらば出来る。
「終われるわけがないでしょう。まだまだ仕事はあるんですよ」
「嫌です辞めます」
「ダメです辞めさせません」
俺が魔王をやめてただの学生の戻るのはもう少し先の話らしい。
今回で「あぶれたので魔王やります」は最終話となります。これまで読んでくれたから、どうもありがとうございました。




