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龍が鳴く砂漠  作者: 鮒井春樹
蒼い狼ゆらめく
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一、騎馬

 華北から戦火を離れて河西へ移住したとはいえ、安穏とはしていられない。


 尚武は必然であった。


 馬を駆り、羊一頭を多数の騎馬が奪い合う競技があった。

 二十㎏近くの重さがあるため、馬上から地面から拾い上げるにも膂力がいる。

 奪い合う際に身体は鞍に安定していない。

 次々と伸びる手を交わしながらの絶妙な均衡は身体で覚えるしかなかった。 

 空を舞う羊は瞬く間にぼろぼろになり土に汚れる。

 ぐたぐたの毛皮を追って更に騎馬はのしかかり合う。

 馬同士も歯を剥き、ぶつかり、がつ、がつんと鈍い音がする。

 壮絶の一言であった。

 珠安はこれに酔いしれた。

 勇壮の中に獲物を奪う快に、女も、男も、子どもすら仕事も放りだして駆けつけ、熱狂して声援を送った。


「これほど、心騒ぎ打ち震えるものはあるだろうか」


 古参の珠参は周囲からひときわ大きい感嘆の叫びがあがる。


(あのような体勢から横取りできるなど、さすがだ)


 珠安は舌を巻かざるを得ない。

 鞍に脚を引っかけ、乗り出して隣から奪う。

 人馬一体がのしかかり、馬も噛み合って、ただ一つの獲物を奪い合う。


 ……現在、同じ競技が残る。

 アフガニスタンでは国技で、「ブズカシ」という。

 中国では「刁羊」といい、 キルギスタンでは「キョク・ボリ」という。意味はあおい狼である。

 あおい狼。

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