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プロローグ

アームルス暦3802年。全世界は渾沌の中に沈んでいた。


ミルトン王国がセレウス王国より遣わされた2人の使者を人質として身代金を要求したことにより、世界の均衡は崩れる。セレウスは人質の解放を求めたが、これを拒んだため、宣戦布告と見なした。使者まだ成人に満たない少女達だった。彼女らは後の精霊候補として精霊界の王より選らばれた宝樹と呼ばれる存在。自国から生まれた待望の宝を奪われたセレウスの怒りは甚だしく、ドラゴンスレイヤーの活躍によりミルトンは制圧されたかのように見えたが、攻撃を逃れた人間たちは天上界へ昇り、少女達の強大な魔力を天上兵器ドゥオ・グラディルクに注ぐと、セレウスを攻撃した。


一撃であらゆる命が蒸発した。森も、世界一の建築技術を自負した大聖堂や美しい街も、人も。この時セレウス人達は自国の勝利を確信し、殆ど普段と変わらない生活を送っていたため、それが被害を甚大にした。

この壊滅的な被害を受けた同国を悼み、エラル・ラフォリィ・魔界の連合軍はミルトンへ進軍した。魔界総統より天上兵器の第二波の阻止を命じられたジオ、シェール、ビランは浮遊城に侵入するが、連絡が途絶えてしまう。


一方、大量の魔力を奪われたインリディラは暴走し、世界を漆黒の闇で閉ざしてしまう。それどころか、世界各地に降り注ぐ彼女の攻撃はあらゆる生命を吸い付くし、大地を汚していく。事態の深刻さを重く見た総統はラカリー二とアシューとともに天上界へと降り立つ。天上兵器の中枢に辿り着いた彼らが見たのは、この世のものとは思えない悲惨な光景だった。


地上ではミルトン軍とラフォリィ軍の全面衝突が勃発、前線をを率いるジーク・マクラウドはアラン、ローラ、フェザー、シロと共にいた。インリディラの攻撃で次々に命を落としていく兵士達の姿に胸を痛めたジークは、天上界に向かった弟へ祈るような視線を送る。厚い雲で覆われた空の果て、降り注ぐ雨によってその巨岩は確認できない。


稲妻が走るエラル上空を一頭のホワイトドラゴンが羽ばたく。


「レヴァンゲノ、もっと早く!」


「マスター、これ以上は無理です。視界が悪いうえに雨で匂いも消えました」


歯軋りする主の顔を想像しながら、打ちつける雨に負けじと力を振り絞って羽ばたく。時間が経つごとに激しさを増す雷雨と、インリディラの攻撃を避けながら二人は少女を――シャルティアを探していた。彼女はかろうじて天上界から脱出し、エラルにいることをレヴィンに伝えると、連絡を絶った。レヴィンはいつもと違う彼女の様子に違和感を感じ、嫌な予感があった。その予感が焦燥感となり、一刻も早く彼女を見つけ出さねばと感じていた。


 シャルティアは降りしきる雨の中、ある人物を待っていた。かすかに聞こえた足音で顔を上げた彼女の前にいたのは、連絡が途絶え行方不明となっていたジオ。思いが溢れた少女は胸に顔を埋めると、肩を震わせた。


「ジオ、もうあなたしかいないの・・・」


ジオはアンブレカを強く抱きしめて、ゆっくりと口角を上げ笑みを浮かべる。上空では激しさを増した稲妻が轟き、一筋の光が天上界の外壁に直撃、巨大な落石が地上界に降り注いだ。シャルティアは両耳のピアスを静かに外す。空中に浮かんだピアスは桜色に輝き、彼女の周りを周回しながら光の粉へ形を変え、地面に魔方陣を描く。円の中心で呪文を唱える少女が差し出した手をジオは握りしめた。


 眩い光が天を貫き、暗黒の闇で覆われていた世界を照らす。彼女を探していたレヴィンは目を見開いて光源を見つめた。全世界がその神々しい光に目を奪われている。


「まさか!シャル!やめろ――!」


「アンブレカ様――――!」


レヴィンは光に向かって進路を変更する。大地から突き上げた光は次第に集まって球体となった。激しい光線の中で、少女は両手を突き上げて天を仰ぎながら涙を零している。


「アレ…ス、ごめんなさい…私、あなたを…」


「やめろ――――!!」


彼女の瞳から最後の一粒が流れ出ると、球体は神々しい翼を生やした女神を象り、巨翼を翻してインリディラと対峙した。たった一度の羽ばたきで電光石火のごとく突撃したワルキューレは、インリディラの力と激突して激しい光に飲み込まれ、粉々に砕け散った。

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