補給
あー、あれだ……デスノートの見すぎか? こいつはマジで頭がおいかれなさっている。
「まあ、ちょっとしたメタファーみたいなものだから気にしないでよ」
何がメタファーだ? ファンシーな脳みそもほどほどにしとけよ!!
「言いたいことはわかるけど……とりあえず腹に物を入れなさいな。朝は金、昼は銀ってイギリスのことわざにもあるだろう? 朝は人間の元気の源、頭に栄養が回って考えやすくなるよ〜」
胡坐を掻いて、私と目を合わせながら肌色のちゃぶ台で自分が作ったものをはしで掴む『クソ野郎』。あまりにも冷静すぎる、アメリカンに言えば『サイコパス』ってやつなのかな?
「それじゃあ逆に聞くけど、他人が出した飯を食えるか? それにあなたは死神って言ったわよね? 私をデスサイズで『処刑』しにきたんじゃないの?」
一体こいつは何がしたいんだ? 早く核心を着かねばならないのはあちらも同じことなのでは? メタファーつってることはやはり私を『殺し』に来た、もしくは……
「『処刑』しに来たってのは半分あってるかも」
まあ、こいつを一目見たときから考えていたけど、逃げなきゃっって思っても足が動けない。こいつの異常な雰囲気ともいえる領域、絶対に逃れられはしない。ああ、オシッコちびりそう……
「まあ、安心してよ。やることやったら『処刑』しないから」
でも、こっちにとっては決してプラスな話ではない。そう断言できる。
「ファッキューですか?」
わざと身を守るために、自然と右手中指を立ててアメリカンフィンガー『クソ食らえ』をかましてやった。
「ははは! んなわけないじゃん!」
寝込みを襲ってるはな、普通は。でも……
「僕は『異常』性癖は持ち合わせておりませんよ」
こいつの読心術ってエスパーじゃないのか?
「心配なら毒見するよ?」
「いや、いいよ」
『異常』性癖じゃなくてこいつ自体『異常』なんだろうな、うん。
まずは卵焼きから、黄金色に焼けていい色だな。
………美味い
「卵焼きは会心のできです」
確かに、普通に焼いたものよりも、少なくともあたしのよりは断然にうまい。
「寿司でも洋食でも卵を以下にうまく焼くかが料理人の腕の見せ所っていうけど……美味すぎる」
「お褒めの言葉ありがたう」
つい、栄養計算を忘れてもしゃもしゃ食ってしまったところを、私ではなくあいつに「ソロソロやめとけ」と止められてしまった。
「ご馳走サマー」
「オソマツデシター」
朝飯を食べてダラーとしている間に水道が流れる音、スポンジのしなる音が聞こえてくる。
「掃除までしてくれてほんとありがとうね」
「いやいや、家事が好きだからいいよ」
あの男はこんなことをしてくれ『た』かな?
いや、してくれなかっ『た』。
私に何か手料理を振舞っ『た』か?
いや、米も洗わなかっ『た』。
部屋の掃除をしてくれ『た』か?
いや、読んだ雑誌を一度たりとも片付けなかっ『た』。
『た』?
そういやあいつは?
「ねえ、夢じゃないのならあなたはあいつを殺し『た』んだよね?」
「風呂場で寝てるよ。置き場所がなくてさ、つい風呂場の湯船に、ごめんね」