矢島清子
あなたはどうしてもブッ「殺し」たい人間がいればどうする?
あなたはスーパーで買った刃物を持ってそいつをギッタギタに恨みの数だけ刃を刻む?
あなたはそいつに何重にも重なった輪で首を絞めて鼻から口から耳から血が垂れ出すのを見届ける?
あなたは階段からそいつを落として体の節々の骨が折れていく音を堪能する?
あなたはどこかで仕入れた薬物でそいつに桃のにおいを嗅がせながら顔を間抜けな面へと歪ませさせる?
あなたは安い中国製の拳銃でそいつの頭に鳥がすめそうな大きい穴を拵えてあげる?
あなたは……
あなたは家に帰って自分の手枕で泣き寝入りをする。
去年の11月22日午前0時35分日下町駅周辺にて。
ども、コンニチは。矢島清子と言う者です。3年前からしがない薬品会社のOLをやっております。
今日は忙しい中、私のつまらない話を聞きに下さって本当にありがとうございます。狭くて暗い部屋ですので、明かりが当たっている私の近くでお話を聞いてくれると助かります。まあ、耳を使うだけなので私の容貌を見る意味はないのかもしれませんが。
堅苦しい挨拶はやめましょうか。
単刀直入に言います。
…………私は3ヶ月前に人を殺しました。
いきなり引かせてしまって申し訳ないと思うけど、『これ』を話さなければ全てが始まりません。
今でも……多分彼の詳細について事前に調べたこと、殺したときの時間、風景、殺傷方法、天候をすらすらと何も見ずに言える自信があります………
(株)ミマサカ製薬丸野支部長吉田重治(51)
彼はとんでもないことをでかしたのです。
何で過去形で言うかって? 決まってるじゃないですか、私が殺した人ですから。