表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

奇談

ポケット

作者: たぷ

 こういう経験はないだろうか。

 上着でも、ズボンでもいい。

 ポケットに手を突っ込むと何かが触れる。

 鋭く尖ったものだったり。何かザラザラした欠片だったり。

 あるいは何も触れなかったり……。そういう時は注意しなければならない。

 穴が開いているだけじゃない。ポケットの中は未知数だ。


 先日、散歩をしていたら妙な男に会った。

 この暑いのにコートを着て、両手をポケットに突っ込んでいる。

 不躾な僕の視線に気づくと、男は顔をニヤッとさせた。

「離してくれなくてね」

 その時はよく分からないまま会釈をして通り過ぎた。

 翌日、再び男に会った。やはりポケットに手を入れている。

 僕が遠まわしに尋ねると、男はこっそりポケットの中を見せてくれた。

 空洞のような闇があった。

 そこから突き出した枯れ枝のような指が、男の手をしっかり抑えている。

 もう長いことこのままなのだと男は言った。

「最近は引っ張って痛いんだ」

 それきり男とは会わなかったが、古着屋で男の着ていたコートを見つけた。

 なぜ男のものだと分かったか?

 ポケットを覗いてみると、あの疲れたような目がニヤッと笑い返したのだ。次の獲物を求めて、ギラギラと輝いているように見えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 楽しく読ませていただきました。 奇談の三作を読んで一番気に入ったこの作品に感想を書く事にしました。 僕日常と悩んだのですが、こちらのほうがより奇談というシリーズにあっている気がしたのでこっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ