第五話 溢れ出す想い~カスピア視点・12月11日~
今日はお父様の誕生日パーティーが行われる。ミーナはとびっきりのプレゼントをお客様に贈るらしい。
「あなたもこれ、食事にいれて」
「スパイスか? 」
「ええ」
ミーナはリーアと似てとても美人。出会ってすぐ付き合いだした。
「結婚はいつするかい? 」
彼女は手を止め、ニヤリと笑った。簡単には無理なのか?
「そうね、あなたが立派になったら」
「お兄さまたちを退けて? 」
「そうよ。ほら、早くいれないとメイドが来るわ」
入れ終わり、パーティー会場へ。カスティーナも着飾っていてとても綺麗だ。まあ、興味はないが。
「またあの女がいるわ」
「あの女? 」
「あなたの姉よ」
ミーナが囁いてきたことが信じられず、あたりを見渡す。しかし、あの目立つ髪は見あたらない。
「いないじゃないか」
「リー=フィンヂ。彼女がトスカーナよ」
「え?」
「すごいわね、化けてしまえば分からないとでも思っているのかしら」
「……」
ミーナの目が鋭く光る。何か企んでいるのか?
「あ、そろそろ始まるわ」
長たらしい挨拶の後、お父様やお母様、妹、姉、兄、リーア以外が食事に手をつける。いわゆる第二毒見を客がするのだ。幼い頃は可哀想と感じたが、今はどうってことはない。
「げぶっ」
次々と人が倒れていく。ほほう。
「コック! どういうことだ! コックを呼べ! 」
「はい、国王様、私です! 私が味見したときは無事でした! 作り終えたあとに……」
俺は横のミーナを見る。彼女はニヤリと笑っている。
「大成功、ね」
「なるほどな」
こんなに上手くいくとは。兄たちは目を丸くしている。いい気味だ。
「ウェルズ伯爵! 」
特に重症なのがウェルズ伯爵。彼はスパイス入りのスープをマグカップ一杯飲んでしまったのだ。愚かだ。
「わ、私が……こんなのにも気付かないとは……」
もがき苦しむ彼を見ていると、幼き日のことを思い出す。
『カスピアには期待せん方がいいだろう。上に2人も兄がいるのだから』
『そうですね』
ウェルズ伯爵に言われた最悪の言葉。それぞれ10歳と8歳だった兄たちに無能だと伝えられてしまった。トスカーナは当時1歳ということもあり、兄たちに洗脳されていった。
「ウェルズ伯爵を運び出しましょう! 」
あえて率先して言い、ミーナと共に運ぶ。
「お前たちか……」
ミーナがウェルズ伯爵を乱暴に客間のベッドに落とす。
「お前たち? あんたのせいでこっちは迷惑がかかってんのよ! 私なんて姉だけ世話されて放置されたのよ? お食事にも連れていってくれなかったんだから! 」
「や、やめ……」
ミーナがウェルズ伯爵の腹にナイフをつきたてる。
「今すぐ謝れば許してやってもいい、とでも言ってほしそうだな」
俺はウェルズ伯爵の心臓部分にナイフをつきたてる。
「あがっ……」
完璧に死んだのを確認し、俺たちは演技を始める。
「キャー! 」
「何事ですか!? 」
「さっき、変な人が・・・ウェルズ伯爵を! 」
駆けつけた人が唖然とする。上手くいったな。
「魔法で消えたか……。とりあえず、部屋を出なさい」
部屋から離れて誰もいないところで高笑いを浮かべた。
「アハハハハハハハハハハ! 」
こんなに笑ったのははじめてかもしれない。
冗談を言いすぎるのも身を滅ぼす原因に。




