第三話 本当の気持ち~ダニエル視点・10月27日~
何もかもが決められていく。私は王子だというのに、わがまますら言えない。
自室に向かうべく、長い長い廊下を歩く。
「はあ、疲れる」
妹のカスティーナと結婚というのはお母様があの伯爵と共同で決めた話だ。カスティーナは私と違い、素直で優しい。素直じゃなくて意地悪な私との婚約を大喜びしてくれた。
「どうしたの、ダニエルらしくないわよ」
「お母様……」
「まあ、あなたでも悩みはあるのかしらね」
「お母様、あのですね」
「いけない! ミハエルとお話があるんだったわ! またね」
お母様はミハエルが隊長になり、余計ミハエルとの時間を作った。理由としてはいつ死ぬか分からない息子と一緒にいたいと表面上言っているのだろう。しかし、私を避けたいのは見え見えだ。
そこにカスティーナが笑顔で現れた。心からの笑顔だ。
「お兄さま、昼食ですわ」
「ああ」
少し早めの昼食。食卓がある1階に戻る。
食卓には私とカスティーナだけ。弟妹は別のところか。
「カスピアお兄さまは今日もミーナ様のところですわ」
「全く呆れる」
「ミハエルお兄さまは、お母様やお父様と昼食を食べるそうですわ」
「あいつ……! 」
立ち上がる私をカスティーナはきょとんと見て、悲しそうに俯いた。私はそんなカスティーナを見て気を鎮めて座る。
「お母様は、私と会ってくれないのです。ミハエルお兄さまはお母様と楽しそうにしていますけれども」
「そうか……」
私はミハエルが嫌い。本当にそう思うのだ。
昼食後、ミハエルの部屋に行くことにした。
「ミハエル! 」
「よう、ダニエル兄さん」
「よう、じゃない!!! 」
座っていたイスを蹴るとミハエルは驚いた顔をし、わけがわからない、と立ち上がる。
「何怒っているんだ? 結婚前に傷ついたら怒られちまう」
「私やカスティーナがどれだけお母様が恋しいのかわからないのか!? 」
「……」
「お前だけ、ズルいぞ! 」
ミハエルはため息をつく。言い訳なんて……!
「勘違いをしないでくださいよ。お母様は結婚が失敗しないように、と気遣ってくれているんですよ、ダニエル兄さん」
「はあ? 」
ミハエル曰く、ウェルズ伯爵の結婚は失敗したらしい。その経験からだとか。
「そうか、よかった……」
なぜか安心してしまった。ミハエルへの怒りもおさまった。
気持ちを吐露して正解だった例。




