1 セント・デイ
戴冠式があり、落ち着いた頃。久しぶりのセント・デイパーティー。俺の周りの親しい人はリーアや息子のセイ、大臣だけ。
「久しぶり」
「ミ、ミーナ!? 」
「まあ綺麗ね」
「お母さんとも会ったわ。私、隣国の王妃なの。驚いた? 」
「ああ」
サイドテールにしていた髪はおろしており、大人の女性という雰囲気を醸し出していた。
「ミルフィを育てながらたまにここに戻ってきているの。リュメヒ公爵にもたまに会うわ」
「大変だろう? 」
「まあ、そうね。でもここに仕えるダージャが最高の馬車を提供してくれるから」
「ミルフィちゃん、可愛いわね」
「ありがと、姉さん」
「ミーナ、そろそろいいか? 」
「あ、はあい」
幸せそうなミーナを見ていると全てを許す気になった。彼女はきっと償ってくれる。きっと。
パーティー後、今日は泊まりたいということで余りまくっているプライベートルームを提供した。
「ここは、トスカーナ王女のお部屋かしら」
「流石に3年前に亡くなったトスカーナの部屋は片付けたんだ。そうしないと、苦しくて」
「借りるわね」
「王~! 」
慌てて兵が走ってきた。ダージャもいる。
「あたし、塔でこの仮面見つけたの。元王妃様の遺体と共に」
「……お母様が」
「きっとカスピアの犯行ですよ、王! 」
「違うわよ、カスピアは王都からは離れなかったわ」
「ミーナ……」
「なぜ、知っているのですか? 」
「カスピアとは仲良かったの。カスピアは王妃を監禁し、餓死させる気だったみたいだけれども私は反対したわ。食事も届けたし話し相手にもなった。でも、ミルフィの世話が忙しくなるとあまり行けなかったけれどダージャが途中まで」
「あたし、61年の12月あたりにカスピアに見つかりました」
「そのあたりでその仮面の持ち主に……」
その仮面は恐らくカスティーナの持ち物だろう。舞踏会用の仮面に同じ様な物が倉庫にある。
「仮面の持ち主はもう分かっているし、持ち主は依頼されたから殺しただけだ。本当は殺したくなかった」
「え? 」
「カスティーナだ」
「カスティーナ王女が? 」
涙ぐんでいると、リーアが説明しだした。
「カスピアがカスティーナを追放したあと、トスカーナの夫がカスティーナに黒魔術を教えたらしいのです」
「……よ、よくわかりませんな」
「元王妃様までお亡くなりになられたということは…」
「明日にでも出かける」
「あ、はい」
お母様が亡くなり、俺はどうすればよいのだろうか。
翌日。一人で出かけた先は黒魔術協会。カスティーナに会いに来たのだ。
「カスティーナに会いたい」
「ミハエルさん、少しお待ちください」
「あら、ミハエルお兄様」
カスティーナは仮面を付けていない。あの笑顔で迎えてくれた。
「仮面、落としたんだろ? ダージャが拾ったらしい」
「あ、塔にあったんだ」
カスティーナはこの黒魔術協会副会長に就任して以来、明るさが戻った。ダニエル兄さんがいないのは残念だが。
「ミハエルお兄様、リーナがもうすぐ生まれるんでしょ? 」
「あれ、名前知っていたのか」
「リーアさんが自慢してくるの。今度は女の子だって」
「そうか」
「じゃあね」
「ああ」
こうして何度も会う内に仲良くなれた。進歩しているのか?




