第二話 騎士の悩み~ミハエル視点・10月15日~
お父様に呼ばれた。厳粛なお父様は俺らが小さい頃から政治について語っていた。しかし、俺はそれを無駄にし、騎士になった。お父様は怒らなかった。むしろ喜んでさえいた。
少し緊張する。意を決してノックする。
「お父様、失礼します」
「うむ、入れ」
すぐに返事があり、あまり怒っていない声音なので安心した。扉を開けて入る。
お父様の横にはお母様はいなかった。秘密の話か。
「お前をトルワード国第一遠征隊隊長に任命する」
「ありがとうございます! 」
「あと、トスカーナは放置するように」
「はい? 」
バン! 、と力強く机を叩く。これは怒っている。
「愚かな女は死ぬ運命だ。ウェルズ伯爵は正しいことをした」
「……分かりました」
すると突然笑顔になった。ころころ感情が変わるのは昔からだ。
「リーアが待っておるぞ」
「! 」
下級貴族ながらもとても礼儀正しい娘。俺の恋人。というか知ってたのかよ! 本当にびっくりだ。どうやって知ったのだろうか。
「お主らは結婚すべきだ。来月にも式を挙げようではないか」
「あ、ありがとうございます……」
礼をしてさっとでると、リーアが待っていた。彼女も笑顔だった。
「お帰りなさい、ミハエル様! 」
「リーア……」
「先程、女王様が私たちを認めてくださいましたわ」
「お母様が!? 」
お父様でさえ恐れるお母様はウェルズ伯爵の姉。お母様が認めたら自然とウェルズ伯爵も認めることになっている。
「嬉しいわ」
「俺もだ」
するとカスピアがやってきた。ぎょっとしている。顔面蒼白になっている。
「リーア……」
「来ないでください! バカ男! 」
「バカ男!? 」
俺の悩み、それはカスピアがリーアにべったりなこと。気持ち悪い。
「お願いですから幸せを邪魔しないでください。私の妹でもいいので結婚してください」
「妹がいたのか。よし、会ってくる」
リーアがはあっ、とため息をつく。ストーカーされるとは大変だ。
「ミハエル様、カスティーナ様やダニエル様に会いに行きましょう? 」
「トスカーナが病気なのは知っているのか」
「当たり前ですよ。今朝、女王様に言われたんです」
カスティーナとは話したことがないが……まあなんとかなるか。
カスティーナは広間でダニエル兄さんと楽しそうに話をしていた。
「よう、2人とも。今日は俺の奥さんの紹介だ」
「わあ、結婚なさるのですか、おめでとうございます! 」
「おめでとう」
リーアはゆっくりお辞儀をする。
「初めまして、リーア=ドルアナンと申します。来月結婚しますわ」
「いい子だなあ」
「私も素敵だと思いますわ」
認めてくれて安心、安心。
幸せの絶頂にいる2人。




