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トルワード内乱~憎しみの果てに~  作者: 神崎美柚
第三章 怒りと憎しみと悲しみと権力
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第十四話 疑念~ミハエル視点・7月1日~

 お父様が亡くなったことを悲しむ者はいたが、誰もその死に関して疑問を抱くものはいなかった。確かにお父様は素晴らしい建国者だっただろうが、税のことについて不満もあったはずなのに。


 そこである考えにたどり着いた。


「お前か、ミーナ」


 目の前に静かに現れたミーナはゲス顔で話し始めた。ポケットからナイフを取り出している。


「ええ。王族に関わるからねえ。感謝というかリーアを世話してくれてありがとう、みたいなぁ?」

「確かに助かるが…」

「文句でもあるわけぇ? 」

「…」


 ミーナは笑い声をあげている。狂っている。とても、危険だ。


「文句ないのね? さあて、情報圧制してこようかなぁ? 」


 一刻も早く立ち去りたい。この王宮から。


 リーアがやってくると、早速提案した。


「どうしたの? ミハエル」

「フォルツェに逃げよう」

「え? 」


 リーアは驚いた顔をしていたが、ミーナの笑い声が聞こえたようでゆっくりと頷いた。


「フォルツェならミーナの義父…というか戸籍上父の家から遠いから安全だわ」

「つまり、両親が縁を…」

「違うわ。ミーナがあの人達に懐いたの」

「ミーナの性格が違いすぎるのも処刑されたあの領主のせいか」

「そうよ」


 フォルツェに行くことをお母様に伝えると笑顔でただ頷いた。


「お母様はいいのですか? 」

「ええ。ダニエルを支えるのが私の役目だから」

「そうですか…」


 フォルツェは王都の西にあり、自然豊かなところ。フォルツェ公爵はカスピアを嫌っており、仲良くする気はないので数少ない味方である。


「御者、フォルツェまで行くぞ」

「はい」


 不安そうなリーアの手を握り、安心させることにした。



…2時間ほどだろうか。フォルツェ公爵の屋敷に着いた。


「これはこれは」


 趣味であるガーデニングを楽しんでいたらしく、公爵にしては随分ボロボロの格好をしていた。


「突然申し訳ありません。実は」

「私も聞いてるよ。伯爵、トスカーナ王女、国王が殺されていてカスティーナ王女は理不尽な追放処分を受けた、と」

「誰からそのようなことを…」

「ミーナがいるだろう?彼女に勝る諜報員を王宮と王都に…な」

「…なるほど」


 昔から張り合うフォルツェ公爵とリュメヒ公爵。諜報員のことでも張り合うのか。


「まあとりあえず応接間に行きたまえ。ユイ、お茶を出しなさい」

「はい」


 応接間はリュメヒ公爵の屋敷と違い、庶民的な部屋でとても落ち着ける。


「どうぞ」

「おっ、これは」

「まあ」

「フォルツェ公爵のお庭で育てられた最高級のものです」


 公爵は着替えてやってきたらしいが、どこからどう見ても公爵というより下級貴族のような…。


「すまないな。本来なら娘がいるはずだがまた出かけたようだ」

「そうですか…」

「しかし、あの男め、まるで鏡写しのような人を残すとはな」

「ミーナですか……」


 ミーナについてはリーアが一番詳しい。しかし、リーアは黙っていた。


「貴族としてよりも、暗殺者として生きたい気持ちが私には理解できないな」

「俺もです」


 カスピアがこれ以上何もしないことを祈った。

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