第九話 狂気の夜~ミハエル視点・2月16日~
「さて、帰るか」
連日の大雪から夜中にしか帰れないと俺は判断し、夜中に王宮に戻ることにした。お父様はトスカーナとカスピアとリーアを残しておくという風にいってくれた。
「隊長だけそこに向かうわけには行かないんスか?」
「確かにここから近いが、隊長だからな」
「なるほど」
トルワード北部が特に大雪がふるということからこの時期になると、南部にあるト・モルという都市に多くの人は移る。残る人は数少ない。サバイバル好きなバカ(の4割は凍死、2割は餓死する)と王宮を警備する兵士たち。(遠征隊は国王についていく人が多い)
「今、銃声が!」
「え?」
こんなに寒いのになぜだ?
急いで王宮に戻ると、リーアが走ってきた。
「トスカーナ様とカスピア様が撃たれたみたいなの!」
「それは大変だ」
「・・・トスカーナ様はもう死んでるわ」
「なっ・・・!」
トスカーナに駆け寄ると、穏やかな顔をしていた。心臓のあたりから血が溢れている。
「いてて・・・」
むくりとカスピアが起き上がった。ちょっと殴られただけか。
「寒いが、俺が行く。それまでにトスカーナを運んでおいてくれ。とりあえず医務室に」
馬にのり、お父様たちがいるト・モルに向かう。既に吹雪がひどい。これはキツいな。
「お父様!」
「どうされましたか?ミハエル様」
遠征隊の隊員がいた。事情を説明する。
「トスカーナ様が・・・そんな」
「トスカーナがどうした」
「お父様、起きられましたか」
お父様は眠そうにしている。横ではお母様も。
「あんなに叫べば聞こえる」
「ええ、そうね」
「トスカーナとカスピアが何者かに襲われ、トスカーナが亡くなりました」
「葬式は形式上行わないといけないな。馬車を出せ」
「あ、はい」
カスティーナたちも起きてきた。ダニエルお兄様は眠そうだ。
馬車で30分ほど。王宮のプライベートスペースに着くと、医務室へ駆け出す。
「トスカーナお姉様・・・」
頭に包帯を巻いたカスピアがリーアと一緒にやってきた。ミーナもいる。(警備担当)
「申し訳ございません。私としたことが、遠征隊を迎いれるために暖かくすることに気をとられてしまい・・・」
「気にしなくてよい」
簡単に葬式を済ませ、棺にいれ、焼いて土に埋める。
「トスカーナもバカだな・・・」
お父様は少し泣いていた。
死人に口無し。




