4.告白から一週間後
いつも読んで下さりありがとうございます。すごくうれしいです。
有坂大我という男から告白を受けて一週間が経った。
その間は、本当に何も起こらなくて。4人の男の人から告白されたのは、何かの間違いなんだと思うようになった。
例えば、罰ゲームか何かで告白してきたんだ。そうだ。そうに違いない。
あっ。でも。よかった。それなら何も考えなくてすむ。もう悩まなくていいんだ。そう思った。
そう思うと気が楽になってスキップしたくなるくらい気分が上がってた。学校も終わり、いつものようにとぼとぼと歩いていた。
顔は、すっきりしたようなニコやかな表情になっていた。その時だ。一瞬にしてテンションの下がるようなことが起こったのは。
「すごくいい表情をしていますね。とてもかわいらしい。
何か良いことでもあったのですか?」
その声に、私はびっくりしてしまった。まさか私に声をかけてくる人がいたなんてという思いと。
誰だと思って振り返ったらとても美しい顔が微笑みながら近づいてくるのだから。しかもその人は、私が人生で初めて告白を受けてその場から逃げ出した人だったから。さらに驚いてしまった。
なぜあなたがここにいるんですか。
「どうしました?」
「いえ、何でもないです。」
「私の質問には答えてくれないんですか?」
「えっ?」
「だからとてもいい表情だったので、何かあったのかと」
「いえ、特に何も。」
「そうですか。では一緒に帰りましょう。」
「えっ!」
むしろ何でそういう話になるんだ。今までの会話と全然繋がらないじゃないか。
彼は、あたり前のように私の隣に来ていた。
「あのなんで。」
「何でって。あなたと一緒に帰りたいからですよ。ダメですか?」
少し悲しそうな表情をして、少し頭を傾けてそう尋ねられた。私は、あまりの出来事に声を出すことができなかった。
すると彼は、もっと悲しそうで寂しそうな表情になった。
それは、まるで捨てられた子犬を見ているような気分になった。母性本能をくすぐるような表情に思わず、「いえ、いいですよ」と答えていた。すると犬の耳としっぽが現れ、しっぽを振って喜んでいるように見えた。私は、自分の目が、どこか悪いのかなぁと思えてならなかった。
私は疲れているんだと思うことにして歩き出した。
すると彼は、嬉しそうな表情を変えず、隣にピッタリと寄り添うようにしてきた。
私はあえて何も言わず、受け入れるしかなかった。
「あの。そういえばこの前、自己紹介もできずに終わって
しまったのでしてもいいでしょうか。」
「あっ、はい」
そういえばそうだった。彼の話を最後まで聞かずに飛び出してしまったから
自己紹介もしてなかったんだった。
「私の名前は、田端飛鳥といいます。宜しくお願い
しますね。はるみさん」
「はぁ、よろしくお願いします。って何で名前を知ってるんですか?」
何を当たり前のことを聞くんだという顔をしながら彼はこう言った。
「知っているに決まってるじゃないですか。好きな人の名前くらい。
あっ、そうだ。私のことは飛鳥と呼んで下さいね」
有無を言わせないような発言だったが私は、いきなり、名前で
しかも呼び捨てにするなんてできる訳ないと頭を横に振った。
「だめですか。どうしてもあなたには、飛鳥と呼んでほしいの
ですが…。」
「無理です。無理無理無理。本当に無理です。勘弁してください。」
「何で無理なんですか?」
「だって恥ずかしいじゃないですか」
そう言って私は顔を見られないように下を向いた。すると彼の方から
クスと上品に笑う声が聞こえた。
「あなたは、本当にかわいい。可愛過ぎていじめたくなりますね」
「えっ?」
私は驚いて顔を上に向けると、彼の顔が思っていた以上に近くて一歩
後ろに引いてしまった。いじめたくなるってなんだよ。怖いよ。この人。
熱を持っていた顔から急に血の気が引いていくのを感じた。
「クス、冗談ですよ。冗談を本気に捉えるなんて、本当にあなたは、
かわいらしい。」
「はぁ…」
「お喋りするのもいいですが、あまり遅くなってもいけませんので
帰りますよ。」
そういって彼は歩き出した。私はそれに慌てて、歩き始めると、
「気をつけて下さい。慌てて動くとこけてしまいますよ。」
「はい。」
そういってくる彼の一歩後ろを歩いていた私に。彼は。
「その後ろについてくる姿も何だか健気な感じで可愛らしい
のですが。これでは、あなたと話づらいので隣に来て下さい。」
「いや、私はこのままで…」
「ダメです。言うこと聞かないといたずらしてしまいますよ」
「えええ!わかりました。すぐいきます」
「クス、良い子ですね」
彼の言葉に慌てて隣に行った私に。彼はいい表情で私を見るのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。