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《パラド=スフィア物語(リメイク版)》 -カルロス-  作者: みゃも
第四章 【輝かしくも楽しい思い出と……別れ】
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《第四章 【輝かしくも楽しい思い出と……別れ】》 -5-


 一箇所だけ開いていない部屋の扉があり、

他の部屋は家捜しをされたあとらしく。もうメチャクチャに荒らされている。


 そういえば最初の男も、次の男も、金銀細工を手にしていた。



 フォスター将軍を逆賊呼ばわりして自分達の正当性を先の男は訴えていたが。

どうやらこれが、端から彼らの狙いだったと思われる。


 そう悟り、改めてその事に対する怒りが、アヴァインの中から生まれていた。



 幸い、それらのどの部屋にもシャリル様の姿は見当たらなかった。

が、火の手がこの閉まっている部屋の入り口にも迫り、

そうゆっくりもしていられそうにない。


「シャリル様!!」


 声を掛けると、小さな声がこの扉の向こうから聞こえた。

間違いない、この部屋の向こうにシャリル様は居る。


「シャリル様! 

この扉から離れていてくださいよ!!」


 アヴァインは剣を抜き、扉を数度ガツガツと突き刺し。

戸の辺りに穴を開け、

その中へ腕を突っ込み、鍵を強引に開けた。


 それから部屋の中へと入る。

が、しかしシャリルの姿はどこにも見当たらなかった。



「シャリル様! どこですか?!」


「ア……アヴァイン?」


「───!!」



 大きな衣装ダンスの中から、その声は聞こえて来た。


 その衣装ダンスを開けて見ると、その中にある沢山の服の間にシャリルは体を震わせながら隠れていたのだ。



 どうやら、怪我などはなさそうだ。安心した。



「シャリル様……」


 手を伸ばすが、何故かシャリルは怯えた顔を見せ。

更に奥へと、少しだけ退がっていた。


そこで初めてアヴァインは、

その自分の手や腕、それから全身が返り血で真っ赤に染まっていた事に気づく。



 これでは、怯えるのも無理のないことだな……。



「アヴァイン、後ろ!」


「───!?」


 シャリルの声で、背後の気配に気づき。

アヴァインは横へ身を転がし避け、剣を素早く抜き、

衣装ダンスに突き刺さる剣を引き抜こうとする相手の隙を見逃さず。

空かさず、相手の腕を先ずは切り落とし。

そのまま相手の首へと、返す刃で斜めに振り上げ、切る!


 すると、その男の首から前方へ血しぶきが飛び散り、

そのまま後ろへ目を上に口からは血泡を吹きながらドタッと大の字で目を見開いたまま倒れた。


 アヴァインはその相手が絶命したのを確かめると、剣を収め。

再び衣装ダンスへと行き、シャリルを見る。


 シャリルの全身は、さっきの男の血で真っ赤に染まり。

ガタガタと身を震わせ、涙を溜めていた。



 まだ幼いというのに、嫌な記憶を残させてしまったかもしれない。


「大丈夫……大丈夫だから!」


 アヴァインはそう言い、気持ちだけでも安心させようとする。

それから、それでも未だに放心状態のシャリルを抱き抱え、この部屋を後にした。


 屋敷内は既に、かなりの火の手が回り。

通路から中央の階段へ行くのも簡単ではない。


それに、この煙だ。

目を開くのも辛い。肌も焼けそうに熱い。


 アヴァインは自分の服を引き裂いて破り、シャリルの口に当てて渡す。



「これで、口を塞いでいて! 

あと、私の体にしがみ付いてて!! 

それから目は閉じて、周りは絶対に、見ないで! 

いいね?」


「うん。うん!」


 シャリルは何度も頷く。


アヴァインはそれを確認し、微笑むと。中央階段を目指す。


 途中、途中に血の跡や、死体が転がっているのだ。

シャリルがこれを見て、パニックを起こす可能性もある。


アヴァインはシャリルの頭を、自分の胸に強く押し当て、それらを見せない様にした。



 それに、中央階段には……。



 火は、中央階段にも及んでいた。

これは急がなければならなかった。


 途中で、近くにあった花瓶の水を頭から被り、

アヴァインは改めてシャリルを抱き抱え走ってその中央階段へと向かった。


 中央階段から下を見下ろすと、

踊り場のルナ様の遺体近くにも火の手が上がっていた。



 その様子に、アヴァインは思わず目を背けてしまう……。

 シャリル様には、これだけは絶対に見せない様に細心の注意をし、静かに通過する。

 


 そのルナ様の遺体傍を通過しながら……心の中で、

アヴァインは泣き出しそうな気持ちを胸に抑え、こう告げていた。




       ───ごめんね……ルナ様。

         そして、これまで本当に、本当にありがとう……




 振り返り見上げてみると、火はルナ様に燃え移っていた。

アヴァインはその様子に思わず目を背け、

シャリル様をそこで強く抱きしめて、屋敷から飛び出す。




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