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《パラド=スフィア物語(リメイク版)》 -カルロス-  作者: みゃも
第四章 【輝かしくも楽しい思い出と……別れ】
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《第四章 【輝かしくも楽しい思い出と……別れ】》 -3-

 ルナ様の邸宅を出て、夕焼けに染まり出すパレスハレス近くにある貴族用の邸宅へと馬車で向かっていると。5騎程の騎兵が、ルナ様の邸宅方へ向かい走り抜けていった。


 一人は正規兵の様だが、残りの4人は今回招集された傭兵の様だった。



「ああいうのにも、そろそろ見慣れて来ちゃったわね。

人ってさ……驚くほど、何にでも慣れちゃうものだな、って最近つくづく思えて来たわ」


「……そう、だね」



 確かに、人って何にでも慣れてしまう。良くも、悪くもだ。



「また、戦争に……ならなきゃいいんだけど」


 ケイリングが心配気にふっと、そう零した。自分もそれに頷く。


「うん……。

今は兎に角、評議会が最悪の評決を出してないことを祈るのみだよ」



 それから15分程で、パレスハレスの市内に入る。

と、そこに間もなくベンゼル衛兵長官とガストンが騎乗したまま30数名の衛兵を相手に何やら指示を出している様子だった。



「何か、どうも様子が変だ。ちょっと何があったのか聞いてくるから、馬車をそこで止めて貰える?」


「うん、分かったわ。

ハインツ、そこで止めて!」



 ケイリングの指示で、直ぐに馬車は止まり。アヴァインは即座に馬車から降り、衛兵長官とガストンの方へ足を向けた。


が、思い出した様にケイリングの方を振り返り言った。



「ケイリングはこのまま、先に帰ってていいよ」


「え? いいわよ。

だって、私も気になるし。どうせなら、一緒について行く───」


 そう言い、ケイリングも馬車を降りようとした。が、



「いや、待って!」


 周りを見ると、周囲の雰囲気が尋常ではないことに気づき。

馬車を出ようとするケイリングを押し戻し、言った。



「なんだか、本当に様子が変だ。

少なくとも、馬車の中からは絶対に出ないで!

あと、扉も閉めて。鍵も掛けといて! 

いいね?」


「ン……うん。分かった」


 ケイリングも片足だけ降り掛けた所で、少しだけ周りの雰囲気から感じるものがあったのか?

 それには直ぐに従ってくれた。


 アヴァインはそれを確認すると、再び、衛兵長官とガストンの方へ足を向ける。



「アヴァイン!」


「ん?」


 振り返り見ると、ケイリングが心配気な表情を見せていた。

それから少し、戸惑いを見せ、再びこちらを正視すると口を開く。


「兎に角、気をつけてよ!!」


「ああ、分かってる♪」


 アヴァインは、そんな心配気な表情のままのケイリングを安心させるように、精一杯の笑顔でそう返した。





「ディステランテ評議員には、君が直接警護に着いてくれ。

あとは、だ。君が信頼出来る部下を二人ほど着けて。

それから、ンー……何かあれば、そうだな……私に直接、直ぐに報告を頼む」


「はい、分かりました。長官」


「他の者は、各自に手渡した通りで。同じく、何かあれば私へ報告をしてくれ」


「ハッ」



 それでバラバラと衛兵達は別れ、散っていった。


 アヴァインはそのタイミングを見て、衛兵長官に近づいてゆく。



 ベンゼル衛兵長官は、そんなアヴァインを遠目にして間もなく気づく。


が、まるで気づかなかったとばかりに白々しくも馬の首をアヴァインとは逆方向に向け、澄まし顔で行こうとしていた。



「長官!」


「──うぐっ!?」

 ベンゼル衛兵長官はそれで肩を竦ませ、仕方な気にこちらを向いた。


「あぁ……誰かと思えば、アヴァインか。すまないが、今は忙しいのだ。だから、あとにしてはくれないか?」


「ええ、どうやらその様ですね……。

でも、どうして今、私を避けようとしたんです?」



 『これは痛いところを突かれたな』

って顔をして、長官は吐息をついている。


 それから馬を降り、近くの衛兵にその馬を預けると、こちらへ近付いて来た。

その表情は実に、思案しながら、って感じだ。



 どうやら余程のことがあったらしい……。



「まあ、お前のことだから。私がここで白状しないと、誰かに聞き回るのだろうからなぁ……。

私の方から誤解が無い様に、キチンと話して置くことにするか……


但し、いいかアヴァイン。兎に角、落ち着いて聞いていてくれよ!」


「はぁ……分かりましたよ。落ち着きますから、どうぞ」


 『落ち着け』と言われても、その内容も聞かない内からそんな約束なんて出来るものではないけど。そうとでも言って置かないと、教えて貰えそうにないから、取り敢えずはそう言っておいた。



 だけどそこは流石に、お互い付き合いも長いので、衛兵長官は直ぐに勘付いたらしく。自分の方を怪しんだ瞳で一度見つめてくる。


が、自分の方はそれとなく空を仰ぎ見て、目を合せない。



 そんなアヴァインを見て、ベンゼル衛兵長官はため息をつき。仕方な気に口を開いた。



「まあ、いい。

実はな、今回行われた最高評議会で、フォスター将軍に対する追討が可決されたのだ」


「──!!」


「まあまあ、落ち着いてくれ。話はそれで終わりではない」



 まだ他に、これ以上の何かがある、というのか?!



「まあ、よく聞け。

ここからが重要なんだ、お前の身の為でもあるのだからな」


 自分の……身の為? 


「今回の件では、フォスター将軍ばかりではない。

それ以外の、フォスター将軍と親密に関わった者までもが対象とされている。


もしも仮に、フォスター将軍と繋がる何かしらが出てくれば、だ……。その者も重罰が加えられる事になった。

だからな、アヴァイン。

悪い事は言わん。今後一切、フォスター将軍とは関わりを持つな。


もちろん、その家族であるルナ様ともだ。いいな?」



 ベンゼル衛兵長官は、淡々とそれだけの話をアヴァインに聞かせていた。

それはまるで、説得する様に、丁寧なものだった。


 しかし、アヴァインからして見れば、つい今し方までルナ様とは語り合っていたばかりだ。そんな事を言われても困ってしまうし、それでは当のルナ様はそれこそどうなるというのか?



「あの……ルナ様は?」


「ン? なんだ?」


「ルナ様は、どうなるのですか?」


「……」


 衛兵長官は困り顔を見せ、吐息をつくと。仕方な気に口を開いた。



「ルナ様については、ディステランテ評議員の者が早々と手を回していてな。

今晩中にも、パレスハレスで真偽を確かめるつもりらしい……。


私が知っているのは、そこまでだよ」


「では……もう既に?」


「ああ。もう今頃は、その迎えの者が屋敷に着いた頃だろうな。

ヤレヤレ……まあ、そう手荒な事はしないと思うが……って……おい。アヴァイン! 


あぁ……全く」



 アヴァインはケイリングが待つ馬車まで急いで戻った。


「悪いけど、ケイ。この馬車の馬を、1頭だけ貸して!」


「え? それは別に構わないけどさ……急に、どうしたのよ?」


「ルナ様の屋敷へ戻る!」


「ルナ様の? でも、なんで??」


「フォスター将軍の追討が可決されて。ルナ様が今回の件で、尋問される事になった。


多分、さっき行き違いになった5人の騎兵がそうだったんだと思う」



 ハッキリとはしないが、あの5人の騎兵の内。3人は、何か殺気立っていた。


 これまで何度かフォスター将軍の副官として戦場へ行った事があるアヴァインの勘と経験が、その事をアヴァインに感じさせていたのだ。



「アヴァイン、待って!!」


 馬車から1頭を外していると、ケイリングがアヴァインのその手を真剣な表情で止めて来たのだ。


「悪いけど……ケイ。こればかりは、譲れないよ!」


「違うわ。私もアヴァインと一緒に行く! だからこのまま、一緒に行きましょう!!」


「……」



 それは不味い。下手をすれば、メルキメデス家を巻き込んでしまうかもしれない。


 アヴァインは刹那的に、そう感じた。

が、そう思うアヴァインの腕や手を、ケイリングは掴んで決して離そうとはしなかった。



「私は、ルナ様と約束をしたの! だから、私も行く!!」


「……」


 アヴァインは、その時のケイリングの表情と目を見て吐息をつき、頷く。


「分かったよ、ケイ。一緒に行こう!」


 それでアヴァインは馬車の中へと入り。騎手に再び、ルナ様の屋敷へ行く様に告げた。



 大丈夫だ。

 屋敷へは、自分だけが入れば良い。


 そして騎手に、そこで『帰るように』と告げるのだ。

 それならば、問題はない筈だ。



 アヴァインは密かにそう決めていた。




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