《第三章【キルバレスの大地より育まれ出でし……イモたち】》 -1-
貴族員オルブライト・メルキメデス候が首都キルバレスを離れてから、2週間も経った頃。評議会議員ディステランテの元へ、1つの重大な、国を揺るがし兼ねない報告が入った。
「何? ワイゼルとフォスター将軍が!?」
「はい。戦地パーラースワートローム内にて、対峙している、との報告です」
「理由はなんだ? 理由もなく、その様なことにはならないだろう!」
「ハ、それが……両者から書状は参っているのですが、その両者とも意見が喰い違っておりまして……」
「喰い違って、いる……?」
「はい。その書状というのが、コレです」
「……ふむ」
その両方を読み、ディステランテは吐息をつく。
フォスター将軍からの書状によれば、ワイゼル将軍が軍規に違反し、パーラースワートロームの王都を不法にも独占的占拠をした。更に、精霊水を独占しようと企てている、と書かれてあった。
そして、ワイゼル将軍からの書状によれば、フォスター将軍が精霊水を独占しようとした為、仕方なく拠点を上流域にて構え、抵抗している。早急なる援軍を求めたい、と書かれてあったのだ。
「………」
フォスター将軍の人柄というものをよく知る多くの評議員が、この両方を読めば、おそらくはフォスター将軍の書状の方を重く見て信じることだろう。
しかしそれは、ディステランテの甥であるワイゼル・スワートを結果として見捨てる、ということになる。
そもそも精霊水に関する情報を早々と得て、『その権益を手に入れよ』とワイゼル将軍に依頼したのはディステランテ候自身であったのだ。
これが明るみに出ては、拙いことになる。
ディステランテは、この書状を持って来た男を鋭い目つきで見た。
「この書状の件は、他に誰が知っている?」
「は、軍令部長官のみです。
このあと、マルカオイヌ・ロマーニ評議員の元へ、お伝えする段取りとなっております」
「いや! それには及ばぬ!!」
「は?」
「彼には……いや、評議員皆には、私の方から誤解が生まれないように伝えておく……。あと、この件については、今後、他言無用に願いたい。よいな?」
「いや、しかし!」
「よいなッ!!」
ディステランテの高圧的な姿勢に圧され、伝信官は仕方な気に頷いていた。
「はぁ……分かりました。その様に致します」
それで、伝信官は立ち去ってゆく。
評議会議員ディステランテは、その様子をため息混じりに見送る。
軍令部長官ならば何とでも出来る。しかし、やがては噂となり、情報は時期に流れるだろう……と、なればだ。ここは一つ、先手を打つとするか。
ディステランテはその様に考え、立ち上がると、直ぐ様に行動に出た。時間を掛け過ぎれば、自分の立場も危うくなる、とそう思ったからだ。




