表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《パラド=スフィア物語(リメイク版)》 -カルロス-  作者: みゃも
第二章【アクト=ファリアナの心友】
41/97

《第二章【アクト=ファリアナの心友】》 -12-

 アクト=ファリアナまでは、街道が整備されているとはいえ、10日間は掛かる距離だった。


 途中、山間部もあるので、街道とはいえ油断は出来ない。


 アヴァインは先遣隊を出し、様子を伺わせ、常に周囲の情報を細かく確認しながら進んでいた。


 いつもは馬車の中で、ただただつまらなそうに外をぼぅと眺めているだけの娘が、今回はいつもと様子が違っている。馬車の右側に張り付くかの様にして居るアヴァインを、いつ、どこからか、誰かが襲って来やしないかと心配気にキョロキョロと見回し、そわそわと見つめていたのだ。



 一体これでは、どちらがどちらを警護しているのやら……と、オルブライトはそんな娘を見て、苦笑してしまう程だった。



 初めは、いつもの気紛(きまぐ)れだろう……とアヴァインの件については思い、気軽にその我が(まま)を許してしまっていたオルブライトであったが。その娘の様子から、今回ばかりはどうもいつものとは違っている様だ、とそれまでの考えを改め始めている。


 これでつまらない男なら、機会をみて、切り捨てるが。先ほどの出発時の演出染みた様子を見る限り、そしてその後の警護対応を総合的に見ていても、それなりに有望であるように思える。



 出発時のあの重装甲衛騎兵団のオルブライトに対する演出により、それを見た者はオルブライトに対して、以後、それなりの敬意を感じ対応して来ることだろう。


 また、こうも周囲の情報を細かく掴みながら進みながらも、その速度が遅れることがまるでない。


 たまに、機動騎兵数名の者と場合により重装甲衛騎兵が数騎離れることがあるが。おそらくは進行方向での問題を、事前に解決しているのだと予想できる。経験的にだ。


 最初は不満気だったあのファーでさえも、今ではその表情は緩やかだ。この(わず)か数日間で信頼を勝ち得た、ということか?



 どうもこのアヴァインという男は、自分の立場・役割というものをよく理解し、わきまえ。その相手をよく立て、従順に盛り立てるような才能さえもあるようだな。



 そういえば彼は、かつてはあのフォスター将軍の副官だった、とも聞く。



 なるほど、あの指揮振りとそれに従うこのパレスハレス直属の重装甲衛騎兵は、それによるものなのだろう。


 実績も実力もない者に、彼ら騎士団が、こうも巧く従ってくれるものではない。


 しかし、人の能力というものはそれだけが全てではない。その才能ゆえに、人格に問題があるなどの欠点も付き(まと)っている可能性だってある。


 特に、神経質なくらいでないと、こうもいかないだろうからな。


 そうなると、単なる部下としてなら十分だが。我が娘の……と考えると、その評価もまた違った視点からに変えねばならない。


 そもそも、このケイリングとの相性は……それだと難しいのではないか?



 まあ……これからゆっくりと、その人柄というものを(おが)ませてもらおうか……。



 オルブライトは、そんな娘の向こう側に見える、アヴァインを方を伺い見つめ、そう深く考えていた。




「見えました! 見えて来ましたよ!!」


 ファーだ。

 アクト=ファリアナの象徴ともいえる湖を指し、ファーがそうオルブライトとケイリングに聞こえる様に言ったのだ。


 遅れて、アヴァインも『へぇー……ここが…』と感想を漏らす。


 アクト=ファリアナは、カンタロスの大水源にも繋がる山々からの水に恵まれた、大変豊かな土地である。


 更に、北部の山々からの水量も豊富で、この土地から湧き出る湧水が各所で見られるほどに水はとても綺麗で、魚やそれを求めてくる獣・鳥なども多く。食べ物には事欠かない自然の恵みに包まれた土地である。


 この地から更に東へ行くと、州都アルデバルがあり。人口200万人が住んでいることから、そこへの食料売買により、財政的にも確かなものだった。


 それに、そのアルデバルから更に北東にある鉱山の所有権も有しており。メルキメデス家はおそらく、このキルバレスでも1位2位を争うほどの名家であろう。



 しかし、このメルキメデス家の者らからすれば、元々この地も領土も全て、彼らのものであった。


 それらの多くを奪っていった共和制キルバレスに対する思いは、心のどこかに、根深く未だにある。



 それでもオルブライトとしては、このまま平穏に暮らしてゆけるのであれば、と思い願い。旧臣達をなだめ(いさ)める年月を、この地にて重ねていたのである。



 オルブライトからすれば、そううかうかと気を緩めてばかりも居られない美しき故郷であった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ