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《第一章【カンタロスの女神】》 -10-

 それから四ヶ月後のこと……グレイン技師が発ってから、もう五ヶ月も近くなっての事だ。先遣隊が沿海都市国家アナハイトの北、千キロほどの地にある砂漠地帯の《オアシス・オルレアミス》に到着した、との知らせが入った。


 先遣隊の主な任務は、本軍が行軍する為の街道の整備であった。これが完成すれば、物資や人の移動がこれまでよりも容易になる。話によれば、既にグレイン技師等パーラースワートロームへの現地調査部隊は先遣本隊を離れ、彼の地へと向かっているとの事である。


 この日、そのグレイン技師からカルロスの元へ一通の手紙が送られて来た。



〝やあ、カルロス。元気にしてるかな? 君がもし、心配しているといけないと思い。今度から暇を見ては、手紙を書くことに決めたよ。

妻にも同様に手紙を書いて送ってあるから、そちらの方は心配しないでくれ。

正直、途中から砂漠地帯に入り、少々苦しい思いをさせられたよ。ここに街道を整備しようと言うのだから、彼らも大変な話しさ。私たちはそんな彼らとは別れ、先へ先へと兎に角進み、ようやくオアシス・オルレアミスに到着出来た。

いやあー。ここまではとにかく、長い道のりだったよ。

だけど、これから我々が向かうとされる方角は今までとは違って、ゆるやかな斜面の平原が長く続き。次第に、山々の多い高冷地になるのだと聞く。その先には、高く聳え立つ標高八千メートル級もある人の立ち入りさえも拒むかのような霊山とその山々が連なりあるのだという話だ。そこがどんな所なのか早く行って、この目で確かめてみたいものだよ。

おそらくはその先に、我々が望む目的地があるのだろう。そう今は期待している。

では、またな。カルロス、また手紙を出す。私が帰るまで、無茶だけはするなよ〟



「……あいつらしい手紙だな」


 カルロスはその手紙を大事そうに机の引き出しの中へと納めた。

 とにかく無事に戻って来てくれたら、それだけで良い……。カルロスは目を静かに閉じ、そう切に願った。




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