表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/97

《第一章【カンタロスの女神】》 -9-

『そこでだ、アヴァイン。君には一つ、頼みたい事がある』 

『頼み……ですか?』


『カルロス技師長を含む。《科学者会》の身辺警護を君にやって貰いたいんだ』


 その時ソファーに座るフォスター将軍の様子は、両手を口の辺りに置き、実に真剣な表情そのものだった。どうやらいつもの冗談の部類ではないらしい。


『それでは、あのぅ~《パーラースワートローム》の方は?』

『ああ、急なことで悪いが。今回の遠征軍からは外れて貰う……って、なんだよ。その露骨に嫌そうな顔は? そんなにも不満なのかぁ?』


 「そりゃあ~不満ですよ!」なんてバカなこと、上官に対して言える訳がなく……。



『あ、いえ! それは……そのぅ…』


 アヴァインは、適当に断る理由を捜していたのだ。が、


『ああ、ハハ♪ そうか、そう言えば確か……パーラースワートロームに大変な興味がある御様子でしたからねぇ? アヴァイン君♪』

『――え?!』


 誰かと思えば、カスタトール将軍だ。その表情は見るからに、実に愉快そうで参る。


『ほぅ……そうなのかぁ? アヴァイン、そりゃあ初耳だぞ! 

直属の将軍がなにも知らず、カスタトールが知っているなんてどういうことだ? 説明をしろ、説明を! 正直いって、心外の極みってヤツだからなぁー』

『あ、そ、それはですね! たまたま……そういう話の流れがあって、であって……他意、あっての事ではありませんから!』


 そう必死に言い訳をするその脇で、カスタトール将軍はフォスター将軍の後ろでクックッと笑いを堪え愉しそうにしている……最悪だ、この人。


『そりゃあお前、他意なんてあってたまるものか! 私は、お前をそれなりに信頼しているのだぞ。

それよりも、どうしてパーラースワートロームになんか興味があるんだよ?』

『ハハ♪ それがですねぇー。実は、フォスター……』


 カスタトール将軍が、愉しげにフォスター将軍に耳打ちをしている。


『──ちょっ、ちょっと! 待ってくださいよ、カスタトール将軍!?』

『妖精とか女神が本当に居るのなら、是非、見てみたいそうですよ♪ 彼』

『よう……せい?? ──ぶはあっ! ハッハッハッハ。お前っ! アヴァイン、お前っ!! そりゃあ~なんの冗談だぁ?』


『……はぁ…どうもすみません』


 予想通り、フォスター将軍がさも愉しげに笑っている。この前は、カスタトール将軍からも同じ様に散々笑われ、からかわれたのだ。だから言って欲しくなかったのに……。


『くく……アヴァイン、お前な。国の大事と妖精と、どっちが重要なのかくらい分かっているよな?』

『……』


 思わず『妖精の方ですよ……』と、ぶう垂れて当て付けに言ってやりたくもなったが「国の……大事です」と答えて置くさ。

 少々、不満ではあったけれど……もちろん、パーラースワートロームへ行けなかったことが、ではなく。両将軍の自分に対するバカにしたような態度に対して、である。


『よし! だったら、これで決まりだな!!』

『まあ、少々残念でしょうが。フォスター将軍からの命令です。諦めて、大人しくお受けなさい。アヴァイン君♪』

『……はぁ…わかりましたよ』


『ハッハッハ。お土産に、妖精の一匹でも捕まえて来てやるから、安心をしろ♪ アヴァイン!』

『――!!』


 ──ち、ちっくしょう~~~!!!



 そんな思いもあり、初めは気の進まなかった今回のカルロス技師長の警護だったが……でも、そうなんだよな。よくよく考えてみると、こんな機会でもなければこれまで近付くことさえも適わなかった御方だ。結果、幸運だったと言える。


 その改めて思い直し、アヴァインは今になって身を引き締め直した。


 カルロス技師長への挨拶も無事に終わり研究室を出ると、二人の兵士が弛んだ様子で立っている様子が目に入る。しかもその内の一人は、実に眠たそうにうとうととしていた。これでは何の為の警備兵なのか、まるで意味が無い。


 その様子をみて、アヴァインはなんだか急に腹が立ってきた。


「……おい!」

「は?」


「ここに居られるのは、あのカルロス技師長なのだぞ!! ちゃんと、しっかりとお守りせよ! わかったな!!」

「あ――え? ハ……ハッ!!」


 それで兵士が気合を入れ直したのを確かめると「よしッ!」と力強く頷き。兵士達なんかに負けないくらい気合を入れ、肩と胸を張りこの評議会議事堂パレスハレスの大回廊をシャキシャキと歩きゆく――。


 しかしそれを見送った兵士の方はその後で、

「入る前は、ため息なんかついて。気合も入ってなかったのは、どっちだよ……全く」と、その新しい自分達の上官を遠目にも半眼で見送り、ため息をついていたらしいと噂で耳にするが、それはずっと後の話である。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ