表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/146

第77回 悩みの種

 前回、第76回に間違って、この第77回を更新していました。

 すみませんでした。

 きっと、話が繋がっておらず、意味不明な感じになったかと思います。

 今後、このような事が無い様に気をつけたいと思います。

 一月ほど徒歩で歩き進み、フォン達は目的地であるレイストビルへと辿り着いていた。

 大きく今まで見てきた町の規模とは比べ物にならない光景に、フォンもリオンも呆然と立ち尽くしていた。


「何だ……この町は……」


 リオンはボソリと呟いた。

 それ程、圧倒的な光景だった。

 そんな二人と打って変わり、目を輝かせるメリーナは忙しなくその目を動かし、


「はわわっ! 見てください! 人が一杯です!」


 興奮気味にそう声をあげる。

 その声にフォンは苦笑し、リオンと顔を見合わせた。

 メリーナの言う通り、人は多かった。今までも大きな町は見てきたが、ここまで人が多いのは初めてだ。

 しかし、その人々は物騒にも武装しており、フォンとリオンは妙な違和感を感じていた。

 茶色の髪を揺らすフォンは、腕を組むと鼻から息を吐き出す。


「どう思うよ?」

「まぁまぁ、物騒だな」


 小声のフォンの声に、リオンも腕を組み小声で答えた。

 二人の視線は次々と武装した者達を追う。明らかに物騒なその空気に、フォンとリオンは表情を引き締める。

 この武装の理由を何となく二人は理解していた。

 それは、現在激しく交戦する二つの国、フォースト王国とアルバー王国の戦争によるものだ。

 両国の力関係は、現在拮抗している。

 まだ出来て間もないアルバー王国と、何故か統率がとれ、圧倒的な兵器を量産するフォースト王国の間には大きな戦力差があった。

 しかし、それでも、力関係は拮抗。その大きな要因となったのは、アルバー王国に参加する三つの種族の一つ、烈鬼族によるものが大きい。

 彼らの卓越された戦闘能力は、天賦族の作り出す兵器をも圧倒する力を見せ付けていた。

 もちろん、それは現段階での話だ。何れ、この拮抗は崩れる。

 幾ら、身体能力、戦闘技術の高い烈鬼族とは言え、限界はある。

 しかし、天賦族の頭脳、開発力に限界など無く、次々と新たな武器、兵器を開発していく。

 恐らく、もうじき、この拮抗が崩れ始めるとフォンとリオンは核心していた。


「さて、どうする?」


 黒髪をなびかせ、リオンがフォンを横目で見据える。

 小さく肩を竦めるフォンは、左右に首を振った。


「どうしようも無いだろ? 今はただ流れに身を任すだけだ」

「だよな……」


 深く息を吐き出すリオンが肩を落とす。

 所詮、アカデミアの生徒だった二人では何も出来ない。この世界では全く戦力にならないのだ。

 その事を二人はよく知っていた。

 だからこそ、今は何も出来ない。ただ力をつけるしかないのだ。

 今は――。


「まぁ、今はさ、メリーナを落ち着かせようか?」


 肩を竦め、フォンはメリーナへと目を向けた。

 相変わらず、メリーナは興奮状態で、ワーワーと、声をあげあっちへフラフラ、コッチへフラフラと歩き回っていた。

 そんなメリーナの姿を見ては、流石のリオンも大きく息を吐き出し肩の力を抜いた。


「そうだな……まずは、あの世間知らずなお嬢様をどうにかしないとな」


 相変わらず、リオンの言葉は刺々しいが、その表情はどこか穏やかだった。



 その後、三人は格安の宿を探し、何とか一部屋借りる事に成功していた。

 部屋にはベッドの二つしかない為、渋々フォンはボロボロのソファーに横になっていた。

 はしゃぎすぎて疲れたのか、メリーナは部屋に着くなりベッドに倒れ込み寝息を立て、リオンは物静かに窓の外を眺めていた。


「ここまで成果はなしか……」

「まぁ、仕方ないさ。歴史上、そうなんだろ?」


 頭の後ろで手を組み、フォンはそう呟いた。

 そう、歴史上最強と呼ばれたその戦士達が集まったのは、この時期ではない。

 最悪の時、全てが闇に包まれる時、ようやく、彼らは気付かされるのだ。

 あの時の話は本当だったのか、と。

 だから、今はただ耐えるしかない。彼らが気付くまで、ただひたすら。

 恐らく、ここでも仲間を集めるのは失敗するだろう。

 その為、案外気軽なモノだった。

 ただ、メリーナは大きなショックを受けるだろう。そう考えると少しだけ複雑だった。


「まぁ、歴史はそうだが、メリーナにはそうは言えんだろ?」


 腕を組むリオンが眉間にシワを寄せそう呟く。

 ここで自分達が異世界から来たなどと言って信じてもらえるわけもない。

 その事を知っている為、リオンの表情を険しかった。

 一方、フォンは別の事で悩んでいた。


「それより、これからどうするんだ?」

「はぁ? 流れに身を任せるんだろ?」


 フォンの発言に、不快そうにリオンはそう答えた。

 その言葉に、フォンは静かに体を起こすと、眉間にシワを寄せ、


「そうじゃなくてだな……金銭的な問題だよ」


 ジト目をリオンへと向けそう言い放った。

 フォン達一行は現在金銭的にピンチだった。

 飛行艇に乗ったと言うのもあるが、先を急ぎすぎてお金の事まで気が回らなかったのだ。

 今後の事を考えると、この大きな町である程度資金を稼いでおかないといけないと、フォンは思ったのだ。

 フォンの言葉にリオンは腕を組むと、唸り声を上げ俯いた。


「確かに……そうだな。今後の事を考えると、ここらで資金を調達しないとな……」


 鼻から息を吐きながらそう言うリオンに、フォンは「だよなー」と呟き肩を落とした。

 なるべく、資金は多いに越した事は無く、今後もこうして宿で泊まる事や移動手段を考える上では、現状かなり厳しい。

 しかし、お金を稼ぐ方法が見つからない。

 この時代の金銭取引を二人が知らないと言う事と、それ以上にメリーナの金銭感覚がおかしいと言う事もあり、素材を売ろうにも安く叩かれるのが目に見えていた。

 こう言う時、目利きの出来る者が味方にいてくれれば、と二人はしみじみ思う。


「やっぱ、素材を集めるしかないよな?」

「狩りか……。この時代、どんな生物が存在するか分からないからな……」

「骨や牙、爪、毛皮だよな? 高く売れるのって?」

「まぁ、どの動物のって言うので評価も変るけどな」


 真剣な顔で話し合うフォンとリオン。

 この辺りの生態系を知らない為、どんな動物が居てどんな素材が採れるのか分からない。

 そして、その動物達を相手にフォンとリオンは太刀打ちできるだろうか、と言う不安も同時に感じていた。

 この時代に来て、二人はまだこの時代の動物を狩った事がなかった。と、言うよりも出会った事がなかった。

 その為、どの位の戦闘力を持っているのか未知数なのだ。


「とりあえず、明日は情報を集めて……」

「明後日から策を講じながら狩りにするか……」

「けど、メリーナはどうする? つれてくわけにも行かないし……」


 フォンが不安げにベッドで寝息をたてるメリーナへと目を向けた。

 すると、リオンも少々困り顔で呟く。


「そうだな……。一人きりにすると、また色々と問題を起こしそうだしな……」


 腕を組むリオンは深くため息を吐いた。

 それに釣られ、フォンも吐息も漏らすと、右手で頭を抱え、


「はぁ……やっぱ、コッチが一番の問題だよなー」

「そうだな……。どうする?」


 首を傾げたリオンがフォンを見据え、肩の力を抜いた。

 暫しの沈黙が続き、二人がほぼ同時にため息を吐いた。

 考えれば考える程、気分は重くなり、二人は顔を見合わせる。


「とりあえず、メリーナには部屋を出るなって言いつけておくか?」

「言う事……聞くと思うか?」

「……聞かないだろうな」


 フォンは苦笑し、肩を落とす。

 ぎこちない空気が漂い、二人は複雑そうな表情を浮かべ、もう一度ため息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ