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届け!ブルーモスクへ  作者: 柴咲遥
6/15

梅雨空の奇跡

7月に入ると雨の日が増えて自転車で駅に行くことも少なくなった。

今朝も少し早起きしていつもの様にお弁当詰めて、石神井公園駅南口行きのバスに揺られている。

隣のおじさんの傘が私の膝に当たって少しうっとおしい。

(晴れていれば自転車で10分なのに…あぁ早く梅雨明けてくれないかな~)

「ふぅ はぁ~」

私は少し深いため息をついて石神井公園駅南口に降り立った。

生暖かい空気と鬱陶しい雨、もう梅雨入りは時間の問題だった。

各駅停車池袋駅を待つ間メールをチェックする「7月21日忘れいでよ!」

奏子からのメール。

「そっか今月は m-flo横浜アリーナか…」

「あぁ~もうぉ」

湿気で髪がうねってくる、だから この季節が一番嫌。

池袋行の各駅停車がホームに入って私は真ん中のポール横の空いてる席に座った、そしていつものように自分のつま先を見つめる。

エアコンが効いているのか車内は快適で私はすぐに眠くなって目を瞑った。

「次は~東長崎~ひがしながさきです~」

その車内アナウンスで目が覚める。

「東長崎…あっあの時のおばあさん!どうしてるんだろう…」

春に東長崎の病院に救急車で運ばれたおばあさんのことを急に思い出して私は思いがけず東長崎で途中下車していた。

「私って…何やってんだろ…」

「確か…練馬総合病院だったよね」

私は春の記憶を辿りながら東長崎駅の南口に出て辺りを見渡す。

「そうそうここ、この先に病院が…」

その時の記憶を辿りながら江古田方面に歩き出す。

傘をさしながら10分くらい歩くと練馬総合病院の看板が見えてきた。

「っていうかあのおばあさんまだ入院しているのかわからないし…よく考えたら名前だって知らないし…」

病院の入口が見えて私は小降りになった雨の中コンビニの前で立ち止まっていた。

「こんなこと…仕事行かなきゃ」

また東長崎駅に戻ろうとした時だった、コンビニの駐車場に見覚えのあるバイクが1台停まっていた。

「ん?このバイクって…まさかね…」

「久美子?」

「へ?えぇ~薫子?」

コンビニから上下真っ赤なレインウエアーに身を包んでホットドックをほお張った薫子が出てきた。

「うっそぉ~」

「久美子こそ~どうしたの?こんなところで」

温めてもらったホットドックを片手に間違いないあの薫子がそこに立っていた。

「ぅうんちょっとね…」

「そぉ、私はそこの病院に、ばあちゃんがね入院してるから着替えとか」

「そっか、この前もそういってたもんね…あっこの前はホントありがとね、もう会いないかと」

「お互いの名前以外なにも交換してなかったしね~」

そう言って薫子はホットドックの最後の一口を口に放り込んだ。

「久美子これからの予定は?仕事?」

「え?これから…うん特には…ね」

「そっじゃあ一緒に来てよ!ばーちゃんの病院、なんか病院って苦手で」

「え?いいの?私が行っても?」

「うん全然、ばあちゃんも検査入院だからあと2、3日で退院できるみたいだし一緒に ね!いいでしょ」

「うんわかった、ちょっと職場に電話するね」

私はコンビニに入って会社に体調不良で休むことを告げてスムージーを買ってストローで一気に飲み干した。

「ふぅ~お待たせ、じゃ行こっか」

コンビニを出たら雨は上がっていて日が差し込んでいた。

「あっ虹~」

薫子が東の空を指さしてそう言った。

東の空にはとても奇麗な大きな虹がかかっていた。

「虹なんて…見るの何年振りだろ?」

ふたりは虹の方に向かって歩き出した。

「ホントこんな偶然ってあるんだね」

私は虹空を見上げてそう言った。

「私は絶対また逢えるって思ってたけどね」

バイクを引きながら空を見上げて薫子はそう言って笑った。






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