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届け!ブルーモスクへ  作者: 柴咲遥
3/15

傷ついていく心

「え?梶野ってそんな風に・・・」

「どうしたんですか?先輩、顔色悪いですよ~」

「そぉ?・・・なんでもない」

そう言い残して私はトイレを出て行った。

鏡越しで梶野美樹と目が合った瞬間・・・また声が聴こえた。

「そうよね・・・ホント・・・ダサいワンピース・・・」

私は窓に映る自分の姿を見てそう呟いた。

そんな時、岡田亜希子からの携帯が鳴る。

「久美子?何やってるの、もう行っちゃうよ~」

「・・・ゴメン今行くから」

「じゃあ、新丸ビル6階の中華料理屋さん、名前なんだっけな~久美子もう時間ないからそこに来て」

「うん・・・わかった」

そう言って電話は切れた。

「あぁ~帰りたい・・・」

そう呟いてバックから伊達メガネを取り出した。

新丸ビルは、開業したばかりで連日丸の内のOLが新しいお店でランチや

デートで利用していた。

「中華ってどこよ?」

エスカレーターで6Fに上がると『四川豆花飯荘』と書かれた看板が見えてくる。

「ここ?しせん・・・読めない・・・」

近づくとお店の前で岡田亜希子が手を振るのが見えた。

「久美子~こっちこっち」

「ゴメン・・・遅れちゃって」

「いいの・・・先方も仕事押しちゃって30分遅刻だって~」

「そぉ・・・」

「こっちは、これで全員揃ったから・・・お店入って」

「うん・・・」

黒を基調にした落ち着いた店内、中華料理には珍しいワインクーラーがあったり、中華っぽい茶器が飾られている廊下を通って奥の個室に通される。

「先輩~遅いですよ~」

梶野美樹が笑いながらそう言った。

(彼女も・・・)

「ゴメンね・・・遅くなっちゃって」

「あれ?先輩メガネしてましたっけ?」

「ぅうん・・・」

「お化粧に時間かかってたんですか?」

梶野美樹はそう言って悪戯っぽく笑った。

私は無言のまま入り口の一番端の席に座った。

「今夜はコース料理を頼んでいるから、飲み物は好きなものを注文して」

「は~い」

「喉渇いちゃったから飲み物先に頼んじゃおっか~」

岡田亜希子がそう言って飲み物のメニューを回した。

「・・・私・・・お茶で」

「先輩・・・お茶ですか?合コンで?」

そう言って梶野美樹と隣に座って携帯を見ていた子が笑った。

「私・・・お酒弱いから・・・ゴメンね」

そう言ってメニューを渡した。

(だからこの人外してって言ったのに・・・ダサい)

梶野美樹と目が合った瞬間・・・またそう聴こえた。

「・・・だから来るのイヤだって」

そう小さく呟いた。

程なくしてビールとワインが運ばれ、私の前にはウーロン茶が置かれた。

「じゃあお先に~かんぱ~い」

岡田亜希子がそう言ってビールが入ったグラスを持ち上げた。

「今夜の会費・・・5千円ね、今のうちに回収しま~す」

(5千円・・・)

「ホントは今夜はご馳走しますって言ってくれたんだけど・・・そうもいかないでしょ~」

私は財布から千円札を5枚出して岡田亜希子に手渡した。

「ゴメンね、久美子・・・誘っておいて」

「うんん・・・いいのよ」

正直5千円は痛かった・・・けど私には新作の化粧品や今流行の洋服も必要なくて・・・そう思って納得する自分がもっと嫌だった。

「お待たせ~ゴメンね遅くなっちゃって」

右側からスーツ姿の5人の男性がそう言って入ってきた。

「ゴメン~こっちも先に飲んでました~」

そう言って岡田亜希子が立ち上がった。

そして、男性5人はそれぞれ私たち5人の前に座った。

「じゃあ、俺たちも飲み物頼んじゃおう」

そう言って岡田亜希子の前に座った、短髪で長身の男性がメニューを開いた。

結局5人とも生ビールを注文してすぐにビールが運ばれてきた。

「じゃあ~あらためて・・・今夜が楽しい会になるように・・・かんぱ~い」

その短髪で長身の男性がグラスを高く持ち上げた。

「こいつのプロジェクトミーティングが長引いちゃって・・・」

「今が一番大事なとこなんだから・・・仕方ないだろ~」

そう言って、梶野美樹の前に座った色黒のがっしりした体型の男性がビールを飲み干した。

「すみませ~んビールおかわりください」

私はそれを横目で見ながら、ウーロン茶を一口飲んだ。

私の前には、長髪で銀縁のメガネをかけた男性がこちらをジッと見つめていた。

「じゃあ~自己紹介しましょうよ」

岡田亜希子は2杯目のビールを一口飲んで皆の顔を見渡しながらそう言った。

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