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「結婚か。残念ながら俺はしてないよ。」
「そうか…」
香川は自分は結婚しているんだ、結婚はいいぞ、まだ遅くないから身を固めた方がいいぞと言い出した。
まわりの連中もそうだぞ、もっと歳いくと探すの本当に大変になるぞ!と口を揃えて言い始める。
香川は、なぜだか俺の社会的な立場まで聞いてきた。別に隠すことでもないので話した。
「そうか、祐也は、契約社員、派遣社員をしていたが、一転して正社員になったのか。
若い女性だのにこだわらず、同世代とかを相手で探せば、別に婚活しても大丈夫なんじゃないか?」
俺らの世代は就職氷河期と呼ばれる世代だ。努力が報われなかった世代でもある。
最初から正社員で雇われたのは同じ学年の中のわずか一握りだ。
自分の学年の歳で婚活をスタートするのは少し遅いように思うかもしれないが、相手が同世代なら、状況をわかってくれる場合だってきっとある。
ましてや正社員になれたんだから、チャンスはあるだろうさ。
香川はそう続けて話し、まわりの連中もうなづいた。
「正社員とはいっても、給与が多いわけではないからなあ。」俺は最初から同じ会社で正社員で働いている連中に比べたら、給与は低いと思うとつけ加えながら答えた。
「それがな、最近は人手不足で、給与を高めに設定しないと人が入らないから、前からいる社員より新しく入った者の方が時給に直すと高い場合があってさ…」
香川の会社では、新人の方が給与高いことに納得がいかないため、前からいる者が辞めてしまうことが相次いだという。
それに対し会社側は、前からいる者の給与を新人と同額に設定し直すことで対応したらしい。
前からいる者からは、新人と同額だと、これまでの働きが、あまり評価されてない感じがすると不満の声があがるらしいが…
「まあ、その件は置いといてさ。
…同世代の女性で共働きオッケーな相手、それなら大丈夫だろ?」
香川は、よせばいいのに、せっかくそれた話題を婚活へと戻した。
いやいや待て待て。今日俺は同窓会に久しぶりに皆の顔を見に来たんだ…
一体なぜ同級生から、両親や親戚からやかましく言われている言葉を投げられる羽目になるんだ?
自分が苦笑いしているのを見て香川は「うるさいことを言ってると思ってるんだろうが、お前のためを思っているから言ってるんだぞ」そう真面目な顔で言い足してきた。
まわりもその発言に賛同する者達ばかりだ。
しまったな。適当に他へ挨拶しに移動しようとしていたのだが、今いくと、耳に痛いこと言われたから逃げたみたいに思われるなあ…
そう思っているうちに場内に甲高い声が響き、俺はぎょっとしてあたりを見回した。
まわり中の話し声のせいで、その声が何を言ったのかまでわからない。
だが、妙にこの場にそぐわない感じがする。
なんだ?今日は貸切りのはずなんだよな?
「ねえねえ」同じ声がまた聞こえた。その方向を見ると、声の主らしき人物の後ろ姿が見えた。
トレーナーにダボついたズボンを履いている。靴はスニーカーだ。頭は角刈りに近い男だ。
歳の頃は幾つだろう。俺らよりはだいぶ若そうだ。
ドア横の本日貸切りですと記入のあるボードを見ず、受付をするっと抜けて入ってきてしまった一般客だろうか。
入口近くのテーブルの幹事の女性の一人が近寄り声をかけた。




