アトラシア第2章 異界の空の下で
それは、ナギが冥府へと導かれる始まりでもあった。
第2章:異界の空の下で
ぼんやりとした光の中、ソウタは目を開けた。
地面に倒れていた。湿った土の匂いが鼻をつく。体を起こすと、周囲の風景が目に飛び込んできた。
灰色の空。うす青く光る草が風に揺れている。裏山にある岩戸に似たものがそびえ、地平線は遠く、どこまでも続く草原のような場所だったが、現実とは違う色合いと重力感覚があった。
隣に目を向けると、少女が草の上にうずくまっていた。
「……ナギ、大丈夫か?」
ソウタが声をかけると、ナギはゆっくりとまぶたを開けた。目が合った瞬間、彼女は微笑んだ。
「……ここ、どこだろうね。知らないのに、懐かしい気がする……」
ソウタは周囲を見渡した。次の瞬間、機械の軋むような音とともに、何かが姿を現した。
仮面をかぶった無表情な存在たち──傀儡人形の軍勢だった。人間のような形をしていながら、動きはあまりに無機質で、まるで演劇の舞台装置のようだった。
その中の一体が、ソウタたちの前に進み出て言った。
「救世主、ナギ様。冥府の女王がお待ちです。我々と同行願います」
「……救世主?」
ソウタは眉をひそめた。
「何のことだ? ナギはただの子どもだ。ぼくたちは帰るんだ。どこかに出口が……」
しかし、傀儡人形たちは動じない。ソウタが言葉を投げかけても、まるで決められた台本に従って動く人形のように反応がない。
一歩踏み出そうとしたソウタに、複数の傀儡が無言で道を塞いだ。
圧倒的な人数、どうすることもできない。
そのとき、ナギがソウタの手をそっと握った。
「お兄ちゃん、大丈夫。心配しないで。……わたし、たぶん、ここに来るべきだったの」
彼女の言葉は穏やかだったが、どこか哀しげでもあった。
救世主、冥府の女王とは一体何のことなのだろう?
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