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〜ガイアの守護者〜

【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 今まで気高く伸ばしていた足を折り、レナはエーレと同じ目線まで顔を下ろした。


そしてエーレの呼吸を落ち着かせながら、まるで物語を読み聞かせるように、ゆっくりと語り始めた。


エーレは知るはずのない母の温もりを、確かにそこに感じた。


「もう分かったはず……。

あなたはただの人間なんかじゃない。

今も、恐ろしい過去の記憶を“視た”のでしょう?」


エーレは力なく、項垂れるように頷いた。


「あなたが持つ力が言い伝えと関係しているのだとすれば、その力とは即ち“予言”。

未来を覗き、そして伝える力。

いかなる神にも許されぬ禁忌の力……」


エーレはまだ朦朧とした意識の中で拒絶しようとした。


拒絶したかったのだ。


だが、これを受け入れる以外に、いま起きた出来事を説明する術はなかった。


レナはさらにゆっくりと語りを継いだ。


「さっきカイルが話した二通りの言い伝えには、それぞれ続きがあるの。

ひとつは、“予言の力を解き放ち、滅びゆく未来を見たガイアの子が、神殿を抜け出し、敵将ゼウスとある契約を結ぶことで故郷を守った”というもの。


そしてもうひとつは……」


エーレはレナの瞳に浮かぶ恐怖を見逃さなかった。


それでもレナは意を決して続けた。


「……“自らを『力なき者』と蔑み続けた故郷、そして産み落とした母を密かに怨んでいたガイアの子が、ゼウスを唆し、その息子アポロンに自らの力を分け与え、母ガイアを地上へ引きずり落とした”と、そう伝えられている……」


言葉が終わると、三つの影は長い沈黙に包まれた。


やがて、ぽつりと呟くようにカロスが口を開いた。


「我らケンタウルスは、地に堕ちたガイアの末裔だと言われている。

そして今もなお、我らはオリンポスの神々から母なるガイアを守り続けているのだ。


もう分かっただろう?

お前が襲われたあの森……そして、この洞窟の上に広がる森……。

森こそが、ガイアそのものなのだよ。」


 余りにも壮大であった。


遥か昔の争いから脈々と受け継がれてきた、母子の愛に満ちた意思。

それを疑うことなく信じぬき、護り続けてきた一族。


神々しいまでの物語は、エーレの心を再び浮世離れさせた。


だが、今度は考えることを放棄せず、必死に自分の運命と重ね合わせようとした。


「それじゃ……私が見た夢は……」


レナは一瞬カロスと目を合わせ、すぐに頷いて答えた。


「ええ……恐らく、近い未来に起こり得る事実かもしれない。

でも、今のあなたはまだ完全に力を解放していない。

その証拠に、過去の記憶も混ざり合っている。


これはあくまで私の予感だけど……きっとあなたの中に眠るすべての記憶が甦ったとき、本当の力が解放されるんじゃないかしら。

だから、オイコスの出来事が未来かどうかはまだ断定できない。

事実、オイコスは過去に二度も危機に瀕した歴史がある。


だから今後も、私たちのことは気にせず、恐れずに話して。

ケイロンや女神レアの言葉の通りよ。

あなたの力が本物であればあるほど、エーレの勇気は私たちの救いになるわ」


辺りはすでに闇に包まれていた。

だが、ケイロンや女神レアの力か、それとも天界の理なのか……月明かりと星々だけで視界は不思議と明るく保たれていた。


いや、むしろ夜になったことで、カロスとレナは一層輝きを増して見えた。


エーレはいま再び気づいた。


目の前にいる存在が、母なるガイアの守護者たるケンタウルスであり、その姿が……余りにも美しいことに。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(神の器?)

・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・マートル(マイクの妻、ルカを産むと共に死去)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)

・タナトス(冥界の死神)

・ヒュプノス(タナトスの双子の弟、冥界の死神)

・モイラ(タナトスとヒュプノスの妹、複数の人格を持つ?)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)

・女(ヴィーナス、ルカの意思に語りかける謎の女)

・エコー(山の精霊。カロスに恋をする木霊)

・ヘーラー(ゼウスの妻、天界の母)

・デュシウス(ラミア西門の門番)

・ゼノン(ラミア最高位の兵士、マイクとヤニスの弟子)

・クリストフ(ゼノンのファミリーネームであり、ゼノンの父であるミトの旧友の呼び名)

・老剣士(?)

・ティーターン(天界を支配した原初の一族より選ばれた12の神達)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・オイコス(ケンタウルス達が集う場所)

・アルゴリス(アテネより南に位置する、ヒドラの住まう場所)

・ラリサ(ギリシャ西部中央に位地する巨大交易都市)

・ラミア(スパルタの兵士達がアテネを攻め入る拠点となる街)

・デルポイ(海に面した山岳地帯)

・コリントス海(ヘーラーの呪いが掛けられた入り江状の海)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

・パピルス紙(古代に於いて使われた植物性の紙)

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