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〜瞳の記憶〜

 遂にエーレとケイロンが対面。

まず最初にケイロンの口から語られるのは、エーレの正体!?


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 エーレは辺り一帯を見渡したが、左右は勿論、黄金色に輝く草原は背後にも広がり、先程までの暗闇が嘘のようであった。


「よく来たね、エーレ」


まだ状況を掴めていない彼女に向けて、今や聴き慣れた声が語りかけてきた。


三体のケンタウルスは、まばゆい光に照らされ、エーレには影として映し出された輪郭しか見て取れなかった。


右に一際大きなシルエット……これはカロスだ。


左にひと回り小さく細いシルエット……これがレナ。


それでは真ん中が……。


エーレは驚いた。


驚いたと云うよりも、自らの脳内で勝手に作り上げていたケイロンの姿と、あまりにも大きく異なっていた。


彼女の想像の中でケイロンは、ケンタウルス達に崇められ、数々の英雄に知識を授けた賢者であり、カイルより大柄で、丸太のような筋肉を纏った髭面の老賢者であった。


しかし、実際はどうだ。


影の形を見る限り、ケイロンで間違いない真ん中のケンタウルスは、カイルはおろか、レナよりふた回りも小柄であった。


エーレがゆっくり近付くにつれ、徐々に顔の形や表情が見て取れた。


やはり間違いはなく、右がカイル、左がレナであり……。


そしてエーレは更に戸惑った。


ケイロンが居るべき真ん中には、ほんのあどけない子供のケンタウルスが居たからだ。


「まさか……あなたが、その……ケイロン?」


困惑するエーレをお構いなしに、幼いケンタウルスは「そうだよ」と軽く答えた。


「お前のような反応には……なんというか、もう慣れていてね」


ケイロンは悠然と話しを進めた。


「私に対して色々と疑問もあるだろうが、今はそんな時ではない。

お前の疑念は後でゆっくりと晴らしてあげよう。


さて、まずは皆の情報をまとめたい。

それぞれの瞳を覗かせてくれるかい?」


ケイロンは、自分より何倍も大きなカイルを見上げて提案した。


カイルは、この提案の意図を知っている様子で「勿論です」と膝を折り、小さなケイロンの顔の前に自らの顔を差し出した。


ケイロンは差し出された瞳の奥を、ただじっと見つめた。


「なるほど……」と声を漏らし、目線をカイルから逸らすと、今度はレナを見上げた。


レナは釈然としなかった。


「おい、レナ!」


カイルは口調を強めたが、ケイロンはそれを宥めた。


「この娘同様、お主もわしに対して多くの疑念があろう……。

しかし今ではない。


後でわしの記憶も見せてやる。

今は疑念を振り払い、ありのままのまなこを覗かせてくれ」


レナはゆっくりと大きく息を吐き出すと、渋々ケイロンの前に顔を差し出した。


またしてもケイロンは、ただじっとレナの目を見つめた。


「うむ。

ヘスティアの皆も元気そうだな」


そう言って小さく微笑むと、ケイロンは続いてエーレに顔を向けた。


「さて、お前の番だ。

私の言わんとする言葉が予知できるかい?」


エーレは何となく答えた。


「……恐れるな、ですか?」


「その通りだ」


ケイロンはゆっくりとエーレに歩み寄り、その瞳を覗き込んだ。


エーレは特段何も感じなかったが、自分の中に溜まっていた重荷が少し外された心地がした。


「よし、分かった」


ケイロンは元の場所へ戻ると、おもむろに膝を折って座った。


それを見習いカイルが、続いてレナが、そしてエーレが、それぞれケイロンの周りに座った。


暫し議題をまとめる沈黙を過ごした後、唐突にケイロンが話し始めた。


「さて、まずこの娘の正体だが……」


カイルとレナは反射的にエーレを見つめ、そしてエーレの呼吸は止まった。


 ケイロンは小さな子供でした。

勿論訳ありでして。

それは後数話内ですぐ語られます。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(神の器?)

・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・マートル(マイクの妻、ルカを産むと共に死去)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)

・タナトス(冥界の死神)

・ヒュプノス(タナトスの双子の弟、冥界の死神)

・モイラ(タナトスとヒュプノスの妹、複数の人格を持つ?)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)

・女(ヴィーナス、ルカの意思に語りかける謎の女)

・エコー(山の精霊。カロスに恋をする木霊)

・ヘーラー(ゼウスの妻、天界の母)

・デュシウス(ラミア西門の門番)

・ゼノン(ラミア最高位の兵士、マイクとヤニスの弟子)

・クリストフ(ゼノンのファミリーネームであり、ゼノンの父であるミトの旧友の呼び名)

・老剣士(?)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)

・アルゴリス(アテネより南に位置する、ヒドラの住まう場所)

・ラリサ(ギリシャ西部中央に位地する巨大交易都市)

・ラミア(スパルタの兵士達がアテネを攻め入る拠点となる街)

・デルポイ(海に面した山岳地帯)

・コリントス海(ヘーラーの呪いが掛けられた入り江状の海)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

・パピルス紙(古代に於いて使われた植物性の紙)

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