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〜息子の想いと父の決断〜

 ラミアから立ち昇る凶報の煙。

すかさず立ち上がる父と、交差する思惑。


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 ルカたちカテリーニの一行が、無事にラミアへと迎え入れられた丁度その頃、後を追うマイクたちはすぐ近くまで来ていた。


そして今まさに、ルカの落とした最後の乾燥無花果を、拾うところであった。


「どうやらこいつが最後のひと粒らしい……。

足跡も消えていないし、気配もしっかりと残っている。

おそらく朝方にここを通り、そして……ラミアへは無事に入れたようだな」


パンはラミアの方角を力強く見つめながら言った。


どうやらパンの視界は、随分と遠くまで届くようだ。


アグノスも同じくなのか、首を高くあげてラミアを見つめていた。


マイク、ミト、ネオの三人には、ラミアの外壁の輪郭が、うっすらと確認出来る程度であった。


「それにしてもパン。

さっきの異様な気配はいったい何だい?」


ネオが唐突に質問を投げかけた。


しかし、マイクとヤニスには、その質問の意味が全く分からなかった。


「おおよそ、ラミアの兵士の誰かだろうな。

実に人間らしい、“鍛錬された気配”だった」


パンは、道の隅に転がる乾燥無花果を眺めながら答えた。


次に、アグノスが口を開いた。


「しかし妙だね……。

門番らしき人間は立ってるけど、敵地への最前線とも言える拠点の警備が、これ程迄に手薄なものなのか?」


これにはマイクが答えた。


「この先にある西門は、確かにラミアの中でも警戒が緩い。

見晴らしが良い上に、これより西は、紛争すらないスパルタの領地だ。

厳護な警備は、東南北に割り当てられている。

だが緩いとはいえ、西門の警備を任されている戦斧兵ペレキスへいディシウスは、そう簡単に破られる奴ではない。

普通の人間なら踏み潰されて終わりだ。

まあ、この見晴らしの中、急に目の前に一万の軍勢でも現れたのであれば別だがな」


何処か自慢気なマイクの台詞に、アグノスは首を傾げた。


「はて……。

あんたは戦斧兵と言ったが、俺が見る限り、門の前に立っているのは、ただの剣士たちが徒党を組んでいるだけだぞ?」


「そんなはずは……。

ディシウスは自らの斧に誇りを持っているが故に、剣士を嫌っている。

それにあいつは自分自身が大き過ぎて真下が見えず、足元の味方まで蹴り上げてしまう奴だ。

よって、ディシウスの率いる軍は、ディシウス自身の隊長単騎と、後方から支援をする弓兵の布陣だ。

奴が剣士に徒党を組ませるなど、到底あり得ん……」


相変わらず無花果をただ見つめ続けるパンは、狼狽えるマイクに事の成り行きを教えてやった。


「そのデカブツなら、お前の自慢の息子が蹴散らしてしまったよ。

その後、何やらお前の息子、それにこの間森にいた老いぼれの知り合いらしき兵士が出て来て、そのままラミアへ入って行ったようだ。

そのデカブツも共にな……」


パンは淡々と語ったが、西門での出来事には微塵も興味がないようで、マイクに説明している間も、無花果から目線を逸らさなかった。


マイクとヤニスは、何故そんなことが分かるのか聞きたかった。


しかし、パンがそれを遮った。


「おいネオ……。

お前が、この無花果を拾え」


ネオは躊躇なく断った。


「嫌だよ。

さっきから何故か、その無花果を触ると、凄く痛い気がするんだ」


無花果を囲んで、ゴニョゴニョと二人だけの会話をするパンとネオ。


先程の疑問と共に、訝しげに見つめるマイクとヤニス。


 それは、アグノスが喋り出そうとした時だった……。


ズーンと重たい爆音が響くと、皆が踏みしめる大地が微かに……だが確実に揺れた。


遅れて砂混じりの風が吹き、そしてラミアの街の中に、一筋の煙が立ち昇った。


息子が居るとされる街からの轟音と煙。


マイクは一瞬も迷う事なく、自らの馬に合図を出し、馬は荒々しく前脚を持ち上げた。



 少し先でパンやアグノスの能力説明があるよ。

それまでは何となく分かるって事にしておいて下さい。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(神の器?)

・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・マートル(マイクの妻、ルカを産むと共に死去)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)

・タナトス(冥界の死神)

・ヒュプノス(タナトスの双子の弟、冥界の死神)

・モイラ(タナトスとヒュプノスの妹、複数の人格を持つ?)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)

・女(ヴィーナス、ルカの意思に語りかける謎の女)

・エコー(山の精霊。カロスに恋をする木霊)

・ヘーラー(ゼウスの妻、天界の母)

・デュシウス(ラミア西門の門番)

・ゼノン(ラミア最高位の兵士、マイクとヤニスの弟子)

・クリストフ(ゼノンのファミリーネームであり、ゼノンの父であるミトの旧友の呼び名)

・老剣士(?)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)

・アルゴリス(アテネより南に位置する、ヒドラの住まう場所)

・ラリサ(ギリシャ西部中央に位地する巨大交易都市)

・ラミア(スパルタの兵士達がアテネを攻め入る拠点となる街)

・デルポイ(海に面した山岳地帯)

・コリントス海(ヘーラーの呪いが掛けられた入り江状の海)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

・パピルス紙(古代に於いて使われた植物性の紙)

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