〜目覚め始めた才能〜
目覚め始めるネオの能力。
基礎にして最強格のその能力とは。
【固定】
始めまして、三軒長屋 与太郎です。
ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。
後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。
仮眠を終えた一行は、スパルタ軍の拠点である『ラミア』へと向かうため、ケイロンの待つ『ピエリア』とは真逆の、南へ歩き始めた。
肉体的にも精神的にも疲れていたが、マイクは息子とカテリーニの皆のため、ヤニスは遠い北の地で旅するエーレを想いながら、歩を進めるほかなかった。
ネオは相変わらず、パンの後ろを歩いていた。
ネオは考えていた。
いったい……いつからであろうか。
道端で無花果を見つけるたびに目を凝らし、ルカの意思を読み取ってきたのだが、そもそも何故、自分にそのようなことが出来るのかも分からなかったし、回を重ねるごとに意思の読み取りはより鮮明になっていった。
ネオは今や、目を凝らせば、パンやアグノス、そしてマイクとヤニスの意思さえ読み取れる気がしたし、事実ネオの目には、自分以外のそれぞれの身体に纏う“オーラ”のようなものが、はっきりと確認出来た。
無論、先ほどラリサの街を覆っていた結界も見て取れたし、聞き取れこそしなかったが、一瞬ルカの声も聞こえた気がした。
不意に、ネオはパンに話し掛けられた。
そんなことは、今までで初めてだった。
「おいネオ。
今、どれくらいまで見えるようになった?」
他の者たちからすれば訳の分からぬ質問であったが、今のネオにはその問いが、自分でも驚くほど理解出来た。
「最初は無花果から出ている気配だけだったけど、今は道筋のような光も見えるし、皆の回りに流れているオーラも見えるよ」
「やはりか……」とつぶやき、パンは何やら考える素振りを見せた。
「おい……いったい何の話をしているんだ?」
パンはアグノスの問い掛けには答えず、逆にマイクとヤニスに疑問を投げ掛けた。
「この小僧の出生は、お前たちの街で間違いないのか?」
パンの問いに対し、マイクとヤニスは見つめ合い、仕方なしといった様子で答えた。
「いや、違う。
ネオもまたエーレと同じく、森で拾われた子だ」
マイクの発言に、ネオは特段驚く素振りを見せなかった。
街同士の争いで両親を亡くし、戦争孤児として叔母の住むカテリーニへと預けられた――ネオは周りの皆からそう伝えられていたし、つい昨日までは、その話の真実も含め、特に気にしていなかった。
しかし、今は違った。
周りの皆の気配を目で見て取れるように、ネオは自分自身の両手から漏れ出る“気”も見て取れた。
そして、その気の揺らぎは、マイクやヤニス、もちろんアグノスに流れる気の特徴とも違い、何故か、目の前を歩き続けるパンの気の流れに酷似していたからだ。
「なあパン。
あんたまさか……」
ネオが零しかけた言葉を、パンは乱雑に押し返した。
「あまり考えないことだな。
事実どんなに考えたところで、俺が思い出すわけもない。
俺様もつい半刻前に気付いたし、お前と初めて会った時は間違いなく、今みたいな強い気配はなかった」
「だから……いったい何の話をしているんだ?」
ヤニスは痺れを切らして問い掛け、それにマイクとアグノスも賛同した。
パンは、ネオが本当に知りたい肝心な部分には触れず、皆に説明した。
「無花果のせいなのか、今向かっている方角のせいなのか……とにかく、今は何も分からないが、ネオの力がどんどん増大している。
それは、小僧自身が一番感じているであろう」
ネオは静かに頷いた。
「アグノスももう分かっていると思うが、ネオの力は『見知』だ。
誘導のマギアの初歩にして、何とも頼りない能力だ。
目で見て知るのであれば、別に誰でも出来るからな。
しかしどうやら、この小僧にはとても優秀な血が流れているようだ。
俺様が直々に、力の使い方を叩き込んでやるさ」
そう言い終えると、パンはどこかご機嫌に歩き始め、一行は何ともむず痒い気持ちで、その背中を追った。
ネオは真に、自分の運命を呪う時が近付いていることを悟った。
お久しぶりになってしまいました。
現代が忙しかったです。
また古代に戻って頑張ります。
【固定】
お読み頂きありがとうございました。
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是非続きもお楽しみ下さい。
登場する名称一覧
【キャラクター】
・カロス(ケンタウルス)
・エーレ(神の器?)
・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)
・マイク(伝説の英雄)
・レナ(ケンタウルスの女戦士)
・ターレス(ケンタウルスの族長)
・ソフィア(ケンタウルスの少女)
・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)
・ルカ(マイクの息子)
・マートル(マイクの妻、ルカを産むと共に死去)
・ネオ(若い狩人)
・ミト(老いた狩人)
・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)
・レア(大地の女神、レナの師)
・アキレウス(昔の英雄)
・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)
・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)
・ネッソス(レナの父)
・アイネ(レナの母)
・ヘルメス(天界の死神)
・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)
・タナトス(冥界の死神)
・ヒュプノス(タナトスの双子の弟、冥界の死神)
・モイラ(タナトスとヒュプノスの妹、複数の人格を持つ?)
・狭間の獣(タナトスの下僕)
・ニンフ(精霊の総称)
・サテュロス(笛を吹く半人半獣)
・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)
・女(ヴィーナス、ルカの意思に語りかける謎の女)
・エコー(山の精霊。カロスに恋をする木霊)
・ヘーラー(ゼウスの妻、天界の母)
【場所・他】
・ミリア(エーレが住む山奥の町)
・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)
・パライオ(山の入口の町)
・レアの泉(女神の泉)
・ピエリア(ミリアから山を超えた先)
・モスコホリ(ミリアの隣町)
・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)
・アルゴリス(アテネより南に位置する、ヒドラの住まう場所)
・ラリサ(ギリシャ西部中央に位地する巨大交易都市)
・ラミア(スパルタの兵士達がアテネを攻め入る拠点となる街)
・デルポイ(海に面した山岳地帯)
・コリントス海(ヘーラーの呪いが掛けられた入り江状の海)
・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)
・アテネ(スパルタの敵対勢力)
・天界(天空の世界)
・冥界(地底の世界)
・禁則の地(天界と繋がる場所)
・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)
・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)
・パピルス紙(古代に於いて使われた植物性の紙)