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〜木霊する想い〜

 場面はエーレ達の元へと戻る。

レアの泉を離れ、一路山の精霊の元へと向かう。


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 その頃、エーレ達は一路ケイロンの元へと向かっていた。


ちょうど道のりの途中に、カロスの瘴気を取り除く事が出来る〝精霊が宿りし大樹〟があるらしく、二頭のケンタウルスに引き連れられて、その場所へと向かっていた。


「もうすぐだな」


カロスもレナも、どことなく緊張している様に見えた。


「大樹に宿る精霊ってどんなものなの?

さっきはネーレーイスとかオレイアスとか、聞いた事のない言葉が並んでいて分からなかったわ」


エーレの素朴な問い掛けに、レナは丁寧に説明をしてやった。


「カロスに瘴気を取り憑かせた狭間の獣だが、その元の姿が恐らくネーレーイスだと思われる。

ネーレーイスとは海の精霊であり、精霊の中でも呪いの力が強い。

そんな海の精霊の呪いに対して強いとされているのが、山の精霊・オレイアス。

今私たちが向かっている大樹に宿っているのが、まさにその山の精霊よ」


なるほどとエーレは思ったのだが、やはり根本的な疑問が残った。


「その……。

言ってみればその瘴気ってニンフのOKサインな訳でしょ?

それは取らなくてはいけない物なの?」


この質問にレナは呆れた様子であった。


「カロス貴方……、エーレになんて説明したの?

変なところが面倒くさがりよね。

だからいつも貴方の言葉は、色々な誤解を生むのよ?」


カロスは黙って答えることなく、ただ走り続けた。


「いい?エーレ。

確かにニンフの瘴気は、お気に入りのサインよ。

でもそれが狭間の獣となれば別の話。

狭間の獣が瘴気を取り憑かせるのは、“目印”として使うため。

今のカロスは、獣を操っている者に自分の居場所を常に知らせているようなものなの。

だから一刻も早く取り除かなければいけない。

それがヘルメスなのかヘラクレスなのか……、実際のところはまだ分からないけれど、それでも、まさか元海の精霊であった狭間の獣の強力な呪いが、そう簡単に解かれるとは思っていないでしょうから、今の隙にね」


言い終えるとレナはカロスの後頭部を強く睨み、カロスは徐ろにうなじをぽりぽりと掻いた。


これにはエーレも納得したが、益々、山の精霊を薄気味悪く感じた。


「それじゃ今から会う山の精霊って……何ていうかとても強いのね?」


どうやらエーレの解釈はどこか間違っているようであり、レナは小さく首を振った。


「精霊自体の力は至って平凡だと聞かされているわ。

ただ途轍もない嫉妬の塊と言えば良いかしら。

兎に角その性格故に、天界の母の怒りを買い、その姿と言葉を失った罪深き精霊だと。

山間の町に住む貴女なら、その名前は良く知っているはずよ」


エーレは山の精霊と呼ばれるものを一生懸命に考えてみたが、その片鱗すら浮かばなかった。


しかし、レナが次に告げた名前は、エーレにとって聞き馴染みの深いものであった。


「今から私達が会う精霊『エコー』は、貴女達で言うところの『木霊こだま』。

罪深き恋路の果てに、その身体は八つ裂きにされ、自らの言葉も奪われ、誰かの言葉を返す事しか出来ない罰を背負わされた、憐れなニンフの成れの果て。

そんなになっても、エコーはやはり恋をした。

今エコーが恋に堕ちている相手こそがカロス。

元より嫉妬深い精霊の前に恋する男が現れ、その男の身体に他の女の目印が付いてるのよ。

どうなるかは貴女にも想像出来るでしょ?」


レナはここで初めて、エーレに笑顔を見せた。


エーレも笑顔を返し、カロスはやはりうなじをぽりぽりと掻いた。


 エコーを八つ裂きにした犯人はパン、声を奪ったのはゼウスの妻ヘーラーだよ。

史実的には、八つ裂きにされたのはパンを振った腹いせ、言葉を失ったのは他の山の精霊を守ろうとした結果だから、とても可哀想な精霊なのです。

因みに山から返ってくる木霊は、エコーの嘆き基ナルキッソス(ナルシズムの語源)の嘆きだから、余り良いものではありません。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(神の器?)

・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・マートル(マイクの妻、ルカを産むと共に死去)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)

・タナトス(冥界の死神)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い)

・女(ヴィーナス、ルカの意思に語りかける謎の女)

・エコー(山の精霊。カロスに恋をする木霊」


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)

・アルゴリス(アテネより南に位置する、ヒドラの住まう場所)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

・パピルス紙(古代に於いて使われた植物性の紙)

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