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〜心が掴めないもの〜

 女から語られる衝撃の真実。

心を失ったものに待ち受ける運命とは?

心が掴めないものの正体とは?


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。

後書きに名称一覧がありますので、ご活用下さい。


 流石に堪えきれず、ルカは声を上げた。


「ちょっと待ってください。

とても頭が追いつきません。

僕が何をするですって?」


取り乱すルカをよそに、女は嬉しそうな態度を崩さなかった。


「そうね。

あまりにも情報が多かったかしら。

ではルカ、これだけを信じて。

あなたがヘラクレスに心を支配されるなんてことは、まずありえないわ。

あなたはただ、自ら心を小さくまとめているだけ。

いい子だから。

父やヤニス、それに町の人たちに気を遣って、無意識に自分の意思を抑えているの。

ヘラクレスはそこを見誤り、そしてその隙間に入り込んで、操っている“つもり”になっているだけよ」


なおも不安がるルカに、女はすっと膝を折り、上半身だけを起こしたルカに目線を合わせて、より一層優しく声を響かせた。


「あなたの意思が自らの身体に戻っても、あなたへ気を回していない上に、町の人たちと同時に操っているヘラクレスが、気づくことはないでしょう。

あなたは心に流れてくるヘラクレスの意思通りに動き、“操られているふり”を続けるの」


「なぜ気づかれてはならないのですか?」


「あなたが“心の強き者”だと悟ったら、ヘラクレスは無理やりにでも、あなたを支配しようとしてくるはずよ。

そのとき、ヘラクレスの支配の意思は、少なからず町の人たちへも漏れるでしょう。

そうなれば、ただでさえ強く支配されている者たち、特にミトの身体はとても耐えられないわ」


「……耐えられないと?」


ミトの顔を思い浮かべながら、ルカは不安げに尋ねた。


さすがの女も気配を変え、優しく、しかし今度は哀しげに答えを教えた。


「“心の死”というのは、寿命なんかによる“身体の死”や“生命の終わり”とは、まったくの別物なの。

たとえ不死身の神であったとしても、心の死からは逃れられない。

心が死んだ者の身体は、石化する。

そして……」


女のまばゆい輝きが弱まり、ルカはついに女の顔をはっきりと見ることができた。


ルカの瞳に映った女の顔は、誰もが想像しうる“ヴィーナス”そのものであった。


心配げにルカを見つめるその姿に、ルカは知るはずのない母の面影を感じた。


「そして、居場所をなくした“死した魂”は、狭間の獣として、実体も意思も持たぬ影となり、地上界をただ……彷徨うことになるわ。

あてもなく、永遠にね……」


ルカは申し訳なくなった。

と同時に、目の前の女に悲しい思いをさせている自分に、なぜだか無性に腹が立った。


「……わかったよ!

町のみんなのためにも、ミト爺さんのためにも、絶対にそうはさせない!

うまくやってみせるよ!

でも……親父たちにはどうやって知らせればいいの?」


「本当にいい子ね……」


女は少しだけ嬉しげな気配を戻した。


「なんでもいいの。

その辺りにある物で、道標を残しなさい。

私の思い通りであれば、マイクたちは森から“とても感の鋭い生き物”を連れてくるはずよ。

世界中の誰よりも……そして何よりも……

自らの自由を愛する欲の権化であり、神ですら思い通りにはできない“心が掴めないもの”、

——すなわち『不死の心を持つもの』を。


あなたたちが“山羊”や“サテュロス”と呼んでいる者。

その名を……パン。


そう、ネオの父親をね」


あまりにも衝撃的な事実に、ルカは言葉を失った。


「あっ……でもこれは刺激が強すぎるかもしれないから、ネオには時が来るまで内緒にしてあげてね」


女は無邪気にそう言ったが、ルカにとっても十分すぎるほどに刺激的であり、

正直、ここまでの話の中で最も動揺した。



 ネオの正体は、パンとニンフの間に産まれた子供でしたー!!!

勿論ですが、パンは認知しておりません。

そんな事とはつゆ知らず、共に旅をする事となるパンとネオ親子にも、今後注目してあげて下さい。


【固定】

お読み頂きありがとうございました。 

評価やブックマークして頂けますと励みになります。

是非続きもお楽しみ下さい。


登場する名称一覧

 【キャラクター】

・カロス(ケンタウルス)

・エーレ(神の器?)

・ヤニス(エーレの父に返り咲いた男)

・マイク(伝説の英雄)

・レナ(ケンタウルスの女戦士)

・ターレス(ケンタウルスの族長)

・ソフィア(ケンタウルスの少女)

・アグノス(ケンタウルスの若い戦士)

・ルカ(マイクの息子)

・マートル(マイクの妻、ルカを産むと共に死去)

・ネオ(若い狩人)

・ミト(老いた狩人)

・ケイロン(ケンタウルスの英雄?)

・レア(大地の女神、レナの師)

・アキレウス(昔の英雄)

・アルカイオス(昔の英雄、後のヘラクレス)

・ヘラクレス(英雄の神、元アルカイオス)

・ネッソス(レナの父)

・アイネ(レナの母)

・ヘルメス(天界の死神)

・ヘルメスの使者(元ニンフの魂)

・タナトス(冥界の死神)

・狭間の獣(タナトスの下僕)

・ニンフ(精霊の総称)

・サテュロス(笛を吹く半人半獣)

・パン(ニンフ殺し、ヘルメスの使い、ネオの父)


【場所・他】

・ミリア(エーレが住む山奥の町)

・カテリーニ(マイクが住む海の近くの町)

・パライオ(山の入口の町)

・レアの泉(女神の泉)

・ピエリア(ミリアから山を超えた先)

・モスコホリ(ミリアの隣町)

・ヘスティア(ケンタウルス達が集う場所)

・アルゴリス(アテネより南に位置する、ヒドラの住まう場所)

・スパルタ(ヤニスやマイクが属した勢力)

・アテネ(スパルタの敵対勢力)

・天界(天空の世界)

・冥界(地底の世界)

・禁則の地(天界と繋がる場所)

・イボヴォリ(ケンタウルスの園にそびえる大樹)

・ヒドラ(九つの首を持つ毒蛇)

・パピルス紙(古代に於いて使われた植物性の紙)

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